パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

文字の大きさ
上 下
39 / 328
第二章 ダンジョン編

第36話 鍛冶屋にて

しおりを挟む
 馬車は人里を通り過ぎて離れたところにある家の前で止まる。工房が一緒になっているからか他の家に比べて一回り大きい。

「さあ行くよ」
「はい」

 意を決しておもむろに座席から腰を浮かす。馬車から降りて御者さんにお礼を言い、扉を叩く師匠に続く。

「ごめんくださーい」

 中から聞こえるカンカンという音に負けないように声を張って師匠が言う。そんな大声を出したら気付かれてしまう──いや気付かれないと困るのだが、出来たら気付いてほしくないというかなんというか。

 背反する気持ちに頭を悩ませていると、軽い足音がして木の扉が開き、首にタオルをかけた青年が顔を出す。

「こちらダグの鍛冶屋です。手紙をいただいたロンド様ですか?」
「はい、ロンドです。ダグさんは──」
「お師匠様は中で作業しています。中に入ってお待ちください」



 中に入ると想像と違ってごく普通の家のようだった。普通の家といっても比較対象がエミルとマリーの家しかないから本当に普通の家かは分からないが。

 鍛冶屋なので暑いのではないかと心配していたが、心なし外より気温が高い気がする程度だった。

「よう来たのう、ロンド。そっちがコルネか。昔のロンドに似て──はないのう」

 奥のドアを閉めながら老人が入ってくる。見た目は好々爺といった印象を受けるが、本当にこの人がダグさんなんだろうか。

「お久しぶりです、ダグさん。今日はお手紙にも書いた通り、魔法剣用の武器の依頼に来ました」
「そろそろくる頃かとは思っとったんじゃ。前にロンドの剣を打ったのは十年くらい前になるかの。剣が長持ちするのは腕がいい証じゃ」

 ダグさんが微笑む。微笑みに神々しさを感じてしまうほどの好々爺ぶりだ。

「そのお言葉は嬉しいのですが、前に打っていただいたのは五年前です」
「そうじゃったかの。まあそんなことはどうでもええわ、持ってきたんじゃろ、魔力結晶」

 ほれほれと言いながら、出せという仕草をするダグさん。師匠が持ってきた袋の口を開けながら、ちらりとこちらを見た気がした。少し気になったが、直後そんなことはどうでもよくなった。

「うっひょーーーーーーーーー! 魔力結晶がこんなに! この大きさがこんなにあるなんて夢のようじゃ! ひゃーーーーーーーーーーーー! ああ……興奮し過ぎて手が震えるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 あまりの豹変ぶりにびっくりしてしまった。さっきまでの好々爺は一体どこへ……? 説明を求めるように師匠とダグさんの弟子を見ると、二人はやはり見慣れているのか反応が薄い。

「……はぁ……はぁ。年甲斐もなく興奮してもうたわい」
「この中からよさげな魔力結晶を選んで、剣を打ってもらいたいのですが」
「ちなみに報酬は……」

 伺うようにダグさんが師匠を見ると、師匠がにっこりと笑う。

「現金です」
「んわああああああああああああああああ! 魔力結晶ほしいよう……」

 頭を抱えて落ち込むダグさん。なんだろう、師匠の新たな一面を見た気がする……
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...