33 / 328
第二章 ダンジョン編
第30話 ダンジョン探索 其の九
しおりを挟む
「二つ目の通路を右!」
「つきあたりまで直進!」
「つきあたりを左!」
手元の地図を見て走りながら、次々とどの道へ進むべきなのかを叫ぶ。せめてもの救いはダンジョンの床が平らなことだ。地図に目線を落としっぱなしでも躓くことはない。
「ウォォン!」
「はっ」
たまに出てくるモンスターは風の魔法剣で通路の脇に飛ばす。弱ければ倒してもいいかと思ったのだが、一撃で仕留める自信がないのでこうしてモンスターが動けない間に通り抜けている。
仕留めたら仕留めたで魔力結晶になるため、師匠が躓く可能性があるかと後から思い至り結果的に正解だと思った。どうせこの魔力結晶は拾えないしな。
五階層への階段が見えてきた。
「階段!」
師匠の前に魔力結晶があるため、見えていない可能性も考慮して毎回階段前には伝えるようにしている。
俺は疲れている脚を無理やり動かし、一段とばしで階段を駆け上がる。振り返ると師匠が少し遅れて上ってくる。
あれだけの重さの物を操作しつつ走り続ける。ものすごい体力だ。
そして師匠の後ろを追いかけるモンスターの群れがちらりと見える。
こいつらがいるせいで、師匠も俺も止まれないのだ。下手に止まると倒さないといけなくなる。俺も体力はもうそんなに残っていない。師匠は地上まで魔力結晶を運びきれるかすらも怪しい。
だからこの数を一気に、と考えるともう地上まで一気に出てしまう他ないだろうということになった。地上に出てしまえばモンスターは消えてしまうかダンジョン内にとどまり続ける。
この時点で師匠はかなり辛そうな顔をしている。大丈夫だろうかと心配しつつも、俺は出来ることをするしかない。ひたすら正確に道を叫び続けながら走る。
師匠は地上までもつだろうか。もし途中でこけでもしたら……考えないようにしよう。師匠が途中でこけてしまったら俺が死ぬ気で全部倒すしかない。
だからお願いします、神様。どうか師匠が地上に出るまで走り続けられますように。
なんとか一階層まで戻ることができた。師匠の顔はいつ振り返っても苦痛に歪みっぱなしだ。
走り出してからどれだけ時間が経っただろうか。ダンジョンに来たときはとても長く感じたのに、走って上ってきたのは一瞬のように感じられた。
ここを曲がれば地上への階段があるはず──そう思ったときだった。
バタッ。後ろで師匠がこける音がした。振り返るとやはり師匠はこけていたが、魔力結晶は浮かんだままだった。意地でも魔力結晶に傷を付けたくないらしい。
「ごめん、コルネくん……限界みたいだ」
「そう……ですか。そこの角を曲がったら階段があるはずなんですけど。もう少し、もう少しだけ頑張れませんか」
「そうしたいんだけど──こけてから脚に上手く力が入らなくて立ち上がれないや」
師匠が眉をハの字に曲げて弱々しく笑う。
そんな顔しないでくださいよ。むしろここまでよく頑張りましたよ。
さて、このまま師匠が起き上がれないのであれば追ってくるモンスターの群れに襲われてしまうだろう。
ここは俺がどうにかしなければいけない。絶対に生きて帰らないと。
「つきあたりまで直進!」
「つきあたりを左!」
手元の地図を見て走りながら、次々とどの道へ進むべきなのかを叫ぶ。せめてもの救いはダンジョンの床が平らなことだ。地図に目線を落としっぱなしでも躓くことはない。
「ウォォン!」
「はっ」
たまに出てくるモンスターは風の魔法剣で通路の脇に飛ばす。弱ければ倒してもいいかと思ったのだが、一撃で仕留める自信がないのでこうしてモンスターが動けない間に通り抜けている。
仕留めたら仕留めたで魔力結晶になるため、師匠が躓く可能性があるかと後から思い至り結果的に正解だと思った。どうせこの魔力結晶は拾えないしな。
五階層への階段が見えてきた。
「階段!」
師匠の前に魔力結晶があるため、見えていない可能性も考慮して毎回階段前には伝えるようにしている。
俺は疲れている脚を無理やり動かし、一段とばしで階段を駆け上がる。振り返ると師匠が少し遅れて上ってくる。
あれだけの重さの物を操作しつつ走り続ける。ものすごい体力だ。
そして師匠の後ろを追いかけるモンスターの群れがちらりと見える。
こいつらがいるせいで、師匠も俺も止まれないのだ。下手に止まると倒さないといけなくなる。俺も体力はもうそんなに残っていない。師匠は地上まで魔力結晶を運びきれるかすらも怪しい。
だからこの数を一気に、と考えるともう地上まで一気に出てしまう他ないだろうということになった。地上に出てしまえばモンスターは消えてしまうかダンジョン内にとどまり続ける。
この時点で師匠はかなり辛そうな顔をしている。大丈夫だろうかと心配しつつも、俺は出来ることをするしかない。ひたすら正確に道を叫び続けながら走る。
師匠は地上までもつだろうか。もし途中でこけでもしたら……考えないようにしよう。師匠が途中でこけてしまったら俺が死ぬ気で全部倒すしかない。
だからお願いします、神様。どうか師匠が地上に出るまで走り続けられますように。
なんとか一階層まで戻ることができた。師匠の顔はいつ振り返っても苦痛に歪みっぱなしだ。
走り出してからどれだけ時間が経っただろうか。ダンジョンに来たときはとても長く感じたのに、走って上ってきたのは一瞬のように感じられた。
ここを曲がれば地上への階段があるはず──そう思ったときだった。
バタッ。後ろで師匠がこける音がした。振り返るとやはり師匠はこけていたが、魔力結晶は浮かんだままだった。意地でも魔力結晶に傷を付けたくないらしい。
「ごめん、コルネくん……限界みたいだ」
「そう……ですか。そこの角を曲がったら階段があるはずなんですけど。もう少し、もう少しだけ頑張れませんか」
「そうしたいんだけど──こけてから脚に上手く力が入らなくて立ち上がれないや」
師匠が眉をハの字に曲げて弱々しく笑う。
そんな顔しないでくださいよ。むしろここまでよく頑張りましたよ。
さて、このまま師匠が起き上がれないのであれば追ってくるモンスターの群れに襲われてしまうだろう。
ここは俺がどうにかしなければいけない。絶対に生きて帰らないと。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる