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第二章 ダンジョン編
第22話 ダンジョン探索 其の一
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翌日、いつもより早く起きた俺と師匠は、ヘルガさんのお弁当を手にダンジョンに向かっていた。
「ダンジョン、ダンジョン~」
隣を歩く師匠──正確にはスキップをしている師匠はだいぶ浮かれているようだ。ダンジョン初体験の俺にはよく分からないが、そんなにダンジョンとはいいものなんだろうか。
「そんなに楽しみなんですか」
「そりゃあ、ね。だってやっとあれが手に入るんだよ。しばらくトレトの方には行けてないし久々だからね~」
トレトのダンジョンはAランクパーティ相当のモンスターがうじゃうじゃいるって聞いていたけど、やはり師匠は行ったことがあるのか。この感じだとさくっと狩ってたみたいだな。
「あれがダンジョンの入り口だよ」
指差す方向を見ると、不自然に地面にぽっかりと穴があいている。近づくと階段が下に延びているのが分かる。
師匠が鼻歌を歌いながら階段を下りていったので、その後に続いた。
ダンジョンの中は洞窟のようにひんやりとしていた。陽が当たらないために気温が上がらないのだろう。
壁や地面は想像と違って石のように硬く、崩れることはなさそうだ。魔力によって土の質が変わっているのだろうか。
師匠が前を歩きながらどんどん小さな炎を出していく。
地下にあるために、真っ暗なダンジョンでは最初に入ったパーティが炎系統の魔法を使い、灯りをともすのが通例となっている。
地上では制御を失った魔法はかたちを保てずに消えてしまうが、ここでは話が別だ。空気中に魔力が充満しているので魔力が散ることがなく、制御をしなくても出した炎はかたちを保ちつづける。
これを利用して、小さめの炎を出して壁際に一定の間隔で配置していく。こうすることでダンジョン内での視界を確保できる、というわけだ。
慣れた手つきで炎を出していく師匠の歩く速度は全く落ちていない。むしろ気分が上がっているせいか、いつもより少し速いくらいだ。
かなりダンジョン慣れしているな、などと考えているとモンスターが現れた。ゴブリンだ。
師匠がサッと脇に避けると、俺は剣に魔法を纏わせ斬りかかる。これは俺の修行を兼ねているから、出てくるモンスターは全部俺が倒すということになっている。
斬りかかると、断末魔もなくモンスターは一度灰のように霧散してから凝縮していき、カランという音が足元から聞こえた。
「これだよ、これ。魔力結晶のこの輝き、いつ見てもたまらないね。記念すべき一個目はコルネくんがとっときなよ」
魔力結晶──これが冒険者が目の色を変えてダンジョンに飛びつく理由だ。ダンジョンの最奥には大きな魔力結晶があり、そこからモンスターが生まれる。
実際にはモンスターではなく魔力で出来たモンスターの影のようなものなのだが、これを倒すと先程のように魔力結晶になる。元の魔力の塊に戻るといった感じだ。
この魔力結晶は基本的にはダンジョンからしか採れず、とても貴重なものである。その上、魔力で出来ているために魔法との相性がよく、魔法の補助具──杖などに加工される。
つまり魔力結晶は魔法使いにとっては喉から手が出るほど欲しいものであり、高値で売れるためあらゆる冒険者が求めるものでもあるというわけだ。
師匠とは事前に八二で魔力結晶を分けると決めてある。俺が八で師匠が二だ。モンスターは俺が全部倒し、師匠が灯りや荷物持ちをしてくれるということだ。
正直こんなにもらっていいのかとも思ったが、戦って素材を得るのも冒険者の醍醐味だと返された。
「早く先に進もう」
俺は指先くらいの魔力結晶をポケットに入れ、進みたくてうずうずしている師匠の後を歩き始めた。
「ダンジョン、ダンジョン~」
隣を歩く師匠──正確にはスキップをしている師匠はだいぶ浮かれているようだ。ダンジョン初体験の俺にはよく分からないが、そんなにダンジョンとはいいものなんだろうか。
「そんなに楽しみなんですか」
「そりゃあ、ね。だってやっとあれが手に入るんだよ。しばらくトレトの方には行けてないし久々だからね~」
トレトのダンジョンはAランクパーティ相当のモンスターがうじゃうじゃいるって聞いていたけど、やはり師匠は行ったことがあるのか。この感じだとさくっと狩ってたみたいだな。
「あれがダンジョンの入り口だよ」
指差す方向を見ると、不自然に地面にぽっかりと穴があいている。近づくと階段が下に延びているのが分かる。
師匠が鼻歌を歌いながら階段を下りていったので、その後に続いた。
ダンジョンの中は洞窟のようにひんやりとしていた。陽が当たらないために気温が上がらないのだろう。
壁や地面は想像と違って石のように硬く、崩れることはなさそうだ。魔力によって土の質が変わっているのだろうか。
師匠が前を歩きながらどんどん小さな炎を出していく。
地下にあるために、真っ暗なダンジョンでは最初に入ったパーティが炎系統の魔法を使い、灯りをともすのが通例となっている。
地上では制御を失った魔法はかたちを保てずに消えてしまうが、ここでは話が別だ。空気中に魔力が充満しているので魔力が散ることがなく、制御をしなくても出した炎はかたちを保ちつづける。
これを利用して、小さめの炎を出して壁際に一定の間隔で配置していく。こうすることでダンジョン内での視界を確保できる、というわけだ。
慣れた手つきで炎を出していく師匠の歩く速度は全く落ちていない。むしろ気分が上がっているせいか、いつもより少し速いくらいだ。
かなりダンジョン慣れしているな、などと考えているとモンスターが現れた。ゴブリンだ。
師匠がサッと脇に避けると、俺は剣に魔法を纏わせ斬りかかる。これは俺の修行を兼ねているから、出てくるモンスターは全部俺が倒すということになっている。
斬りかかると、断末魔もなくモンスターは一度灰のように霧散してから凝縮していき、カランという音が足元から聞こえた。
「これだよ、これ。魔力結晶のこの輝き、いつ見てもたまらないね。記念すべき一個目はコルネくんがとっときなよ」
魔力結晶──これが冒険者が目の色を変えてダンジョンに飛びつく理由だ。ダンジョンの最奥には大きな魔力結晶があり、そこからモンスターが生まれる。
実際にはモンスターではなく魔力で出来たモンスターの影のようなものなのだが、これを倒すと先程のように魔力結晶になる。元の魔力の塊に戻るといった感じだ。
この魔力結晶は基本的にはダンジョンからしか採れず、とても貴重なものである。その上、魔力で出来ているために魔法との相性がよく、魔法の補助具──杖などに加工される。
つまり魔力結晶は魔法使いにとっては喉から手が出るほど欲しいものであり、高値で売れるためあらゆる冒険者が求めるものでもあるというわけだ。
師匠とは事前に八二で魔力結晶を分けると決めてある。俺が八で師匠が二だ。モンスターは俺が全部倒し、師匠が灯りや荷物持ちをしてくれるということだ。
正直こんなにもらっていいのかとも思ったが、戦って素材を得るのも冒険者の醍醐味だと返された。
「早く先に進もう」
俺は指先くらいの魔力結晶をポケットに入れ、進みたくてうずうずしている師匠の後を歩き始めた。
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