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第一章
第5話 初めての修行
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「もう限界。私パーティ抜ける!」
ギルドに置かれた古びた木のテーブルが揺れる。
「マリー、抜け──ヒッ」
マリーの顔を見上げると恐ろしい形相だった。恐怖のあまり固まっていると右側からも声がした。
「ごめん、僕も抜けるよ」
エミルまで……なんで俺からみんな離れていくんだよ。なんで……。上手く声が出せない。何か言わなくちゃ。このままじゃまた一人ぼっちに──
「じゃあね、ごめんね」
ギルドのドアが閉まる。どうしてみんな俺をおいていくんだ。どうして……。
* * *
門下生になった俺は道場で暮らすことになった。
食堂に並んだ大量の椅子と大きなテーブル、広い寝室に置かれたたくさんのベッド。昨日、道場を案内してもらいながら悲しくなってしまった。
きっとたくさん子どもたちが来ると思ってうきうきしながら準備したんだろうな。でも結局来てくれた子どもをみんな帰して──子どものためにならないから。
昨日、感動のあまり泣いていたのも分からんでもない。そりゃああんなことがあった後の弟子第一号だからな。
「おはようございます、師匠」
せっかくこの道場に入ったので、ロンドさんのことを師匠と呼んでみる。
大きな食堂の扉を開けると長いテーブルの端にロンドさんとへルガさんが座っていた。そしてテーブルに並んだ三人分の料理。
本当にこの道場で暮らしていくんだな。憧れのロンドさんの下で。数日前からは考えられなかったことだ。
改めて感慨に耽っているとすすり泣く声が聞こえた。
「今、コルネくんが師匠って……師匠って言った…うぅ……夢じゃないよね?」
「ロンド様、早く涙をお拭きください。コルネくんドン引きですよ」
もしかしてロンドさんはすごく涙もろいんじゃないだろうか。
朝食を終えて初めての修行だ。
模擬戦が出来るほどの広さがある裏庭でロンドさんを待つ──と思いきや既にロンドさんが待っていた。
「初めての修行……うぅ……いかにも師匠と弟子って感じがする……」
「ちゃんと教えられるんですか? ほらコルネくん来ちゃいましたよ」
またロンドさんが感極まって泣いている。少し不安になる光景だが、Sランク冒険者の実力は確かなものに違いない。
「とりあえず実力を見たいからかかってきて」
涙を拭かれながらロンドさんが言う。
へルガさんも巻き込みそうだけど大丈夫かな──いや、へルガさんを守りながらでも余裕ってことか。俺はいつものように炎を剣に纏わせる。
「ほぉ……」
何かロンドさんが呟いたようだが、気にしない。一気に距離を詰めて切りかかる。
「はぁっ!」
するとロンドさんは少し俯いたまま、大剣に水を纏わせて俺の剣を受けた。ものすごい力だ。押そうとしてもびくともしない。
魔法の力なのかそれとも単純な膂力なのか。そもそもこんな大剣どこから取り出したのか──いや、違う。剣の長さ自体は俺のものと同じくらいで、途中からは水だけで出来ている。
魔法の纏わせることで剣の長さを変える。こんな芸当が可能なのか。
今は水だから当たっても濡れる程度だが、もしこれが水ではなく炎だったら相手は避けざるを得ない。つまり相手との間合いを自由に変えることが出来る。
そもそも俺は炎以外を剣に纏わせることが出来ない。やってみたことはあるが出来なかった。
俺が使えない魔法を纏わせた上に想像もしなかった使い方。しかもただ俺の一撃を止めるだけで。
俺は今、本当の魔法剣を知ったような気がした。
ギルドに置かれた古びた木のテーブルが揺れる。
「マリー、抜け──ヒッ」
マリーの顔を見上げると恐ろしい形相だった。恐怖のあまり固まっていると右側からも声がした。
「ごめん、僕も抜けるよ」
エミルまで……なんで俺からみんな離れていくんだよ。なんで……。上手く声が出せない。何か言わなくちゃ。このままじゃまた一人ぼっちに──
「じゃあね、ごめんね」
ギルドのドアが閉まる。どうしてみんな俺をおいていくんだ。どうして……。
* * *
門下生になった俺は道場で暮らすことになった。
食堂に並んだ大量の椅子と大きなテーブル、広い寝室に置かれたたくさんのベッド。昨日、道場を案内してもらいながら悲しくなってしまった。
きっとたくさん子どもたちが来ると思ってうきうきしながら準備したんだろうな。でも結局来てくれた子どもをみんな帰して──子どものためにならないから。
昨日、感動のあまり泣いていたのも分からんでもない。そりゃああんなことがあった後の弟子第一号だからな。
「おはようございます、師匠」
せっかくこの道場に入ったので、ロンドさんのことを師匠と呼んでみる。
大きな食堂の扉を開けると長いテーブルの端にロンドさんとへルガさんが座っていた。そしてテーブルに並んだ三人分の料理。
本当にこの道場で暮らしていくんだな。憧れのロンドさんの下で。数日前からは考えられなかったことだ。
改めて感慨に耽っているとすすり泣く声が聞こえた。
「今、コルネくんが師匠って……師匠って言った…うぅ……夢じゃないよね?」
「ロンド様、早く涙をお拭きください。コルネくんドン引きですよ」
もしかしてロンドさんはすごく涙もろいんじゃないだろうか。
朝食を終えて初めての修行だ。
模擬戦が出来るほどの広さがある裏庭でロンドさんを待つ──と思いきや既にロンドさんが待っていた。
「初めての修行……うぅ……いかにも師匠と弟子って感じがする……」
「ちゃんと教えられるんですか? ほらコルネくん来ちゃいましたよ」
またロンドさんが感極まって泣いている。少し不安になる光景だが、Sランク冒険者の実力は確かなものに違いない。
「とりあえず実力を見たいからかかってきて」
涙を拭かれながらロンドさんが言う。
へルガさんも巻き込みそうだけど大丈夫かな──いや、へルガさんを守りながらでも余裕ってことか。俺はいつものように炎を剣に纏わせる。
「ほぉ……」
何かロンドさんが呟いたようだが、気にしない。一気に距離を詰めて切りかかる。
「はぁっ!」
するとロンドさんは少し俯いたまま、大剣に水を纏わせて俺の剣を受けた。ものすごい力だ。押そうとしてもびくともしない。
魔法の力なのかそれとも単純な膂力なのか。そもそもこんな大剣どこから取り出したのか──いや、違う。剣の長さ自体は俺のものと同じくらいで、途中からは水だけで出来ている。
魔法の纏わせることで剣の長さを変える。こんな芸当が可能なのか。
今は水だから当たっても濡れる程度だが、もしこれが水ではなく炎だったら相手は避けざるを得ない。つまり相手との間合いを自由に変えることが出来る。
そもそも俺は炎以外を剣に纏わせることが出来ない。やってみたことはあるが出来なかった。
俺が使えない魔法を纏わせた上に想像もしなかった使い方。しかもただ俺の一撃を止めるだけで。
俺は今、本当の魔法剣を知ったような気がした。
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