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第一章

第2話 ラムハの街

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 チラシを見つけた翌日、俺はロンドさんの道場があるラムハに向かった。ラムハは王国の中でも大きい街で、ミャクー村にやってくる商人のほとんどはラムハからやってくる。

 ミャクー村からラムハの街までは歩いて半日ほどだ。一応冒険者で体力がないわけではないし、荷物も少ないから予定通りに着くだろう。

 思えば、魔法剣士として今までやってきたけど何も分からないままだったな。周りには魔法剣士は当然おらず、あの日ロンドさんが見せてくれた剣が全てだった。

 暗がりを照らす煌煌と赤く燃える剣。それは今でも俺の人生で最も美しかったもののままだ。

 だから見よう見まねで魔法を剣に纏わせ、使い始めた。でもあの夜見た輝きと何かが違う。

 何が違うかは分からないし、相談できる人もいない。そうして五年の間、俺は何が違うのかも、魔法剣士について本当はどうやって戦うのかも知らずに手探りで魔法剣を使ってきた。

 そう考えるとだんだん不安になってきた。俺みたいなのが魔法剣士だけが集まる道場に入っていいのだろうか。失礼に当たるんじゃないか。



 不安な気持ちの中で悶々と考えながら歩き、ラムハの街に着いた。

 初めて来たが、話に聞いたように賑わっているな。大きな道は石が敷き詰められていて露店が処狭しと並んでいる。

 俺は今まで隣の村まではクエストで行ったことがあるが、それより先に行ったのは初めてだ。人の多さに面食らってしまって、目の前の光景を夢であるかのようにただ眺めることしか出来ない。

 突っ立っていても仕方ないので、宿屋でもらってきたチラシを手に道場へ向かう。

 露店で何か買いたいとも思ったが、ロンドさんに会えるという嬉しさとこんな俺が道場に行って大丈夫なのかという不安で素直に楽しめそうにない。

 露店を見るのは後回しにしよう。道場に入ればこれから露店に行き放題、入れなければミャクー村への帰りに行けばいい。

 街並みが整然としているため、迷うことはなさそうだが、人が多くて歩きづらかった。何度も人とぶつかりそうになり辟易としていたところ、一人の人物が目に留まった。

 そいつは目元だけを出して顔に黒い布を巻いていた。恰好だけでも怪しいのに、行き交う人々の中の子どもだけを凝視している。

 人攫いだ。俺がいたミャクー村でも人攫いはときどきあったらしいが、こんなあからさまな奴は見なかった。都会だとこんなに堂々と子どもの品定めをしているのか。

 ここで下手にこいつに何か言うとミャクー村に戻れなくなるかもしれない。きっとこいつの他にも仲間がいるはずだ。おそらく子どもの誘拐は組織的なものだから。

 余計なリスクを負いたくないし、見なかったことにしよう。そう決めて、なるべくその男から距離を取りつつすれ違う。

 いや、すれ違おうとした。すれ違う前に男が俺の肩を叩いた。あ、これ俺がさっき見ていたことがバレていて今から消されるやつだ。都会……怖すぎる。
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