パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第一章

第0.5話 パーティ追放 其の二

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 ウルフの討伐は特に問題なく終わった。俺たちにとっては。

「ひっぐ、うぅ……」

 討伐が終わってからジャンはその場に座り込んで泣いていた。

 今までジャンがほとんど一方的に倒せていたモンスターと違い、今回のウルフはジャンの剣が通用しないほどには強かった。今までのEランクで討伐したものと比べても強い部類に入るだろう。

 ダメージを与えられない剣を振っては、襲われエミルの盾に守られる。パニックに陥っていたのだろう、戦闘中はずっとこの流れを繰り返していた。

 守ってもらって攻撃を受けてはいないとは言え、自分よりも圧倒的に力の強いモンスターに襲われ続けるのは恐ろしかったろう。よく見ればズボンの股が濡れて色が濃くなっている。

 それでも普段なら、少し耐えればアドレアの大魔法でモンスターはすぐに倒せていただろう。

 しかし、彼女はここにいない。彼女の魔法の腕はよく、威力の高い魔法もそれほど時間を要さない。Bランクパーティの魔法使いも太鼓判を押すほどだ。

 それに対して代打の俺は威力の低い魔法しか使えない。連発は出来るが、それでもやはり大幅に効率で劣る。

 それなら剣で攻撃に加わった方がいいかとも思ったが、不規則に走り回るジャンを庇っているエミルに余裕はなさそうだった。

「……たんだ」

 泣き続けるジャンをどうしていいのか分からず、三人ともただ憐憫の眼差しを向けていると、ジャンが呟くように何か言った。そしてもう一度、俺を睨みつけながら言った。

 そして先程のセリフが飛び出したというわけだ。

 パーティを抜けろと言われて俺は少し考えた。確かに俺の魔法が強ければもっと早く決着はついたはずだ。ジャンはこんなに怖い思いをしなくて済んだかもしれない。

 でも俺が魔法を使う羽目になったのも、元はといえばジャンのせいだ。アドレアが抜けたのはどう考えてもジャンが原因だろう。

 それにパーティメンバーが減ったのにEランクの討伐に行こうと言ったのはジャンだ。俺たちもそれを承諾しているから同じと言えば同じだが。

 どちらにも落ち度はあった。その上でパーティを抜けるかどうか思案する。

 この後もきっと自慢話と同じように延々と俺のせいで怖い思いをしたと言い続けるのだろう。正直面倒だ。

 二人には悪いがここはアドレアと同じように抜けるか。さすがのジャンも、二人もメンバーが抜ければ「俺が悪かったのかな……」などと宿屋のベッドの中で考えるだろう。

「……分かった。確かに俺の落ち度でもある。パーティを抜けるよ」

「ちょっと、コルネ!」

「コルネまで……」

 二人の恨みがましい視線を背中に感じながら、俺はパーティを去った。



 討伐の直後にパーティを抜けてしばらく歩いたあたりで冷静になり、せめてギルドに討伐の報告をしてからにすればよかったと後悔した。討伐部位の牙を取ってギルドまで泣きじゃくるジャンを連れて帰るのまで二人に押し付けてしまって申し訳ない。

 パーティに復帰したら何か埋め合わせをしないとな。

 とりあえずギルドにパーティ脱退の書類を出して、いつもパーティで使っている宿屋に泊まろう。これからのことはそこで考えよう。
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