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第4話 病院
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病院に到着した。いつもは二人のうちのどちらかの付き添いがあったため、一人で病院に来るのは初めてだ。
「落ち着く薬、飲んでくればよかった…。」
海はずっとドキドキしていて、何度か深呼吸をした。
病院に入って受付をした。
「精神科です。」
保険証とお薬手帳を渡して椅子に座っているとすぐに呼ばれた。
「いつもは三十分くらい待つのに…。今日は早いんですね。平日だからですか?」
「そうですね、それもありますけど、海さん、今日はどうかされました?付き添いがいないみたいで少し心配だったんです。それに予約は今週末だったような…。」
「そうなんですけど、少し心配なことがあって。」
「というと?」
海は昨日夕食時にあった出来事、二人の反応を全て話した。医師は女性らしいふっくらとした見た目で、心配そうに眉を上げながらいつも通り優しく話を聞いてくれる。
「そうですか…。体重が少しずつ戻ってきている、というのであれば良いことなのですが……。海さん、もしかして、」
その時、診察室のドアがノックされ、看護師が入ってきた。
「少しお待ちくださいね。」
医師と看護師は海に聞こえないほどの小さな声で話した後、二人で会釈しあった。
看護師はなぜか診察室から出て行かず、医師は再びこちらを向いて話し出した。
「海さん、今日一人でここまで来られたじゃない?それって付き添いが嫌だな、と思って1人で来たのかな?それとも付き添える人が家にいなかったから一人で来たのかな?」
海は一人で相談したかったからだと答えた。医師は「じゃあ」と言って看護師と頷き合って、看護師はそのまま出て行った。
何だったのか分からず、そのまま医師は話を再開した。
「海さん、もしかして妊活ってしてたりするかな?一応なんだけど聞いておきたくてね。」
海は今、子どもを産む気なんてさらさらなかった。腹を痛めて産んだ子の死んだ姿なんて、もう見たくなかった。
「そうよね、変なこと聞いてしまってごめんなさいね。でもね、たまにあるのよ、お母さんが知らない間に妊娠してるってこと。どういうことか分からないと思うんだけど、一応検査してみない?検査代は保険適用内だし、何かあってからでは遅いと思うのよ。何もないなら何もないでいいし…。ね?」
海は全く気が乗らなかったが、本当に辛い時を一緒に乗り越えてくれた医師に強く勧められて、結局検査をすることになった。てっきり家に持ち帰って検査をすると思っていたのだが、医師は院内での検査を勧めた。
「ほら、ここで判ればどう転がっても安心じゃない。大丈夫、何とかするから。というか居ない確率の方が高いわよ。私がちょっと心配なだけ。安心して帰りましょ?」
検査結果は陽性だった。海の頭ははてなでいっぱいだった。陽性だと判った瞬間から、検査用の個室で数分悩んだ。前の赤ちゃんが残っている…。そんなわけがない。そんな夢物語みたいなことあるはずがない。でも……。
海は個室から出て受付に行き、またすぐに診察室へ通された。海はひとかけらの希望を持って医師に尋ねた。
「馬鹿なこと聞いてるっていうのは分かってるんですけど、前の赤ちゃんが残っていることってあるんですかね。」
医師は眉を顰めて否定した。
「落ち着く薬、飲んでくればよかった…。」
海はずっとドキドキしていて、何度か深呼吸をした。
病院に入って受付をした。
「精神科です。」
保険証とお薬手帳を渡して椅子に座っているとすぐに呼ばれた。
「いつもは三十分くらい待つのに…。今日は早いんですね。平日だからですか?」
「そうですね、それもありますけど、海さん、今日はどうかされました?付き添いがいないみたいで少し心配だったんです。それに予約は今週末だったような…。」
「そうなんですけど、少し心配なことがあって。」
「というと?」
海は昨日夕食時にあった出来事、二人の反応を全て話した。医師は女性らしいふっくらとした見た目で、心配そうに眉を上げながらいつも通り優しく話を聞いてくれる。
「そうですか…。体重が少しずつ戻ってきている、というのであれば良いことなのですが……。海さん、もしかして、」
その時、診察室のドアがノックされ、看護師が入ってきた。
「少しお待ちくださいね。」
医師と看護師は海に聞こえないほどの小さな声で話した後、二人で会釈しあった。
看護師はなぜか診察室から出て行かず、医師は再びこちらを向いて話し出した。
「海さん、今日一人でここまで来られたじゃない?それって付き添いが嫌だな、と思って1人で来たのかな?それとも付き添える人が家にいなかったから一人で来たのかな?」
海は一人で相談したかったからだと答えた。医師は「じゃあ」と言って看護師と頷き合って、看護師はそのまま出て行った。
何だったのか分からず、そのまま医師は話を再開した。
「海さん、もしかして妊活ってしてたりするかな?一応なんだけど聞いておきたくてね。」
海は今、子どもを産む気なんてさらさらなかった。腹を痛めて産んだ子の死んだ姿なんて、もう見たくなかった。
「そうよね、変なこと聞いてしまってごめんなさいね。でもね、たまにあるのよ、お母さんが知らない間に妊娠してるってこと。どういうことか分からないと思うんだけど、一応検査してみない?検査代は保険適用内だし、何かあってからでは遅いと思うのよ。何もないなら何もないでいいし…。ね?」
海は全く気が乗らなかったが、本当に辛い時を一緒に乗り越えてくれた医師に強く勧められて、結局検査をすることになった。てっきり家に持ち帰って検査をすると思っていたのだが、医師は院内での検査を勧めた。
「ほら、ここで判ればどう転がっても安心じゃない。大丈夫、何とかするから。というか居ない確率の方が高いわよ。私がちょっと心配なだけ。安心して帰りましょ?」
検査結果は陽性だった。海の頭ははてなでいっぱいだった。陽性だと判った瞬間から、検査用の個室で数分悩んだ。前の赤ちゃんが残っている…。そんなわけがない。そんな夢物語みたいなことあるはずがない。でも……。
海は個室から出て受付に行き、またすぐに診察室へ通された。海はひとかけらの希望を持って医師に尋ねた。
「馬鹿なこと聞いてるっていうのは分かってるんですけど、前の赤ちゃんが残っていることってあるんですかね。」
医師は眉を顰めて否定した。
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