一方通行な僕ら

風早 雪

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第一話 元カノからのメッセージ

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 あと少し、十日後には共通テストがある。このテストでどれだけ良い点数を取れるかどうかで、自分の第一志望、風早市立大学への入学可否が決まるのだ。

 正確に言えば個別試験があるので共通テストだけで入学できるか決定する訳ではないのだが、共通テストの配点が高い大学なので、得る緊張感は他の大学と桁違いだ。

正直なところ、僕の頭は今、数百時間後のテストへの焦りでいっぱいだった。鳩尾のあたりはずっとムカムカしていて、絶望的な状況にならないように、ラストスパートのため知識を詰め込む。

 僕はこのテストに命を賭けていた。両親も、教科担当の先生方も、友人も、みんなが応援してくれている。こうして多くの人に支えられて自分の全力を出せる場面というのは、人生の中でも限られていると思う。

 僕にとって恐らく最後の受験生活で、ここで全力を出して成功すれば、誇れる自分になれる。僕はそう信じていた。

 今日もまた、机に向かい左手で頭を抱え、問題を解いている。今日のファッションは上下ジャージで靴下も履いていない。分からない問題にぶつかるとイライラして、荒れた唇をつねったり、椅子の上に胡座をかいたり、時には机を殴ることもあった。

 そんな限界状態の時、スマートフォンから通知音が鳴った。受験期ということもあり、ほとんどの相手のメッセージを通知オフにしていたので、誰からメッセージが届いたのかすぐに予想がついた。多分元カノの梨々香からだ。

 先日、急に彼女からメッセージが届いた。
「うちらもうやめよ!」
「急にどうしたの?何をやめるの?」
「正味付き合うのだるいかも笑恋人らしいこと全然してくれないし、まじ無理かも笑」

 こうして僕は、梨々香から一方的に振られた形となった。

 僕らはよく一緒に下校した。あとは数回買い物に出かけるくらいで、確かに恋人らしい「デート」はしたことがなかったかもしれない。僕にとっては下校や買い物が「デート」で、恋人らしいことだったのだけれど、彼女にとっては違ったのだろう。

 僕は、彼女ともう一度話してみるつもりでいた。メッセージアプリって怖い。自分の思っていることが湾曲して理解され、そのまま現実世界に適用されてしまう。

 しかし、僕からどれだけ話し合いの提案を送っても、彼女からの返信はなかった。それどころか、彼女は学校にも来なくなってしまっていた。

 僕の心の片隅で彼女の存在が、共通テスト直前だというのにちらついていて、ふとした時に思い出すので早く解決したい問題だった。
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