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第4章 強盗殺人の現行犯でお前を拘束する
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屁の臭いを出す魔法で、フェルズトードは傷つけることなく上手く追っ払ったコウスケは、ヴィオレとスカーレットにどうしてここに来たのかを聞いていた。
(えーと、こいつらが殺ったモンスターは、さっきの3人組が殺した事にして……)
話を聞きながら、報告書に書くことも一緒に考えた。
(後は他の団員に気づかれないように、こいつらをダンジョンの外に安全に逃がせば、俺はなんの責任も取らなくて大丈夫だな)
これで、なんとかなる。
だが2人がコウスケをずっと怒って、にらみ続けていることが気になった。
「で、お前ら、どうしてアクアリーフを盗ろうなんて思ったんだ? 最近、俺に隠れて働いているようだけど、それとなんか関係あるのか?」
「白々しくなに言ってんのよ!」
「パパがワタシの学費を賭け事やエッチなお店に使わなけりゃ、こんな事しなかったわよ!」
「なに言ってんだ?」
「え?」
懐から銀行の証書を取り出して、ヴィオレに渡した。
「不用心に棚の中に入れてたから、俺が保管してたんだ」
「……ごめんなさい」
「気にすんな。疑われることばっかりしてる俺が悪い」
「……怒らないの?」
「ああ。とり合えず帰るぞ」
「おい帰るぞ」
「え? でも勤務中」
「遅刻、早退、無断欠勤はいつも事だ。問題ねえ。それに、なにより大切なお前らに犯罪をさせようとした奴を、ぶっちめなきゃ勤務どころじゃねえよ」
本当に安全に抜けださせる道に連れていこうとしたら、ヴィオレは顔を真っ赤して、ジェスチャーでだっこをおねだりしてきた。
「へっしょうがねえな」
微笑しながらヴィオレをお姫様だっこする。
幸せそうにギュッとだきついて、腕に頬を押し当ててきた。
抱えて歩いて、しばらくたった時、いきなり背中に蹴りを入れられた。
「いて!」
蹴ったのはスカーレットだった。
モジモジしながら羨ましそうな表情で、こちらを見ている。
「お前も抱っこして欲しいのか?」
「い、いい歳なのにそんな訳ないじゃない!」
「背中は空いているから、おんぶなら出来るぞ」
笑いながら膝を曲げて、腰を低くする。
「あ、足が疲れてるから、我慢してあげるわよ!」
恥ずかしそうに言いながら、器用に足をコウスケの腰にまわして、背中に飛び乗ってきた。
「ほっぺが当たってるじゃない! 離れなさいよ!」
そう言っているが、自分から頬をコウスケに擦りつけている。
「はは、悪い、悪い」
コウスケは笑顔で返答しながら、
(バレてねえよな……)
内心では冷や汗をかいていた。
◇
ダンジョンを抜け出し、だいぶ家に近い距離になった。周囲はまだ暗い。
「じゃあ、俺はヴィオレをそそのかした奴をとっちめてくる。お前らは、家に帰って寝てろ」
2人を降ろしたコウスケは、優しく頭を撫でて歩いていく。
ヴィオレは、この一連の出来事に強い違和感を抱き始めていた。
「ねえ、何か変だと思わない?」
「……そうね」
スカーレットも同様の疑問を抱いたようだ。
コウスケが優しすぎるのだ。
自分の非を認めて、謝罪する事など絶対にない。
スカーレットに蹴られたら「何しやがるクソガキ」などと言って怒るはずだ。
大切なお前らなんて言葉、出会って一度も言われたことがない。
やってもらっている時は、幸せで気づかなかったが、よくよく振り返ると、おかしなことばかりしている。
何より銀行の証書を棚に入れているのが、どうして不用心なのだろうか。
懐にずっと入れて、持ち歩いている事の方がはるかに不用心である。
もう一度、銀行預金証書をよく、確認する。
証書に書かれた日付が、昨日の日にちになっていた。
預けたのはもっと前である。
銀行の担当者が書いたサインの筆跡なども、怪しく思えてきた。
次にコウスケを確認する。
凄まじい速さで逃げていた。
使い込みは間違いない。
この証書も精巧な偽物だろう。
やはり、優しかったのは、やましい事があったからだったようだ。
姑息なコウスケへの怒りが瞬く間に頂点に達して、
「パパ、許さないわよ」
爆発した。
◇
冒険者崩れの男は約束の場所で、ハーフエルフの女の子を待っていた。
だが、もう約束の時間は過ぎている。
ダンジョンで死んでいるか、自警団に捕まったかのどちらかで違いないだろう。
無報酬になった事を確認して、けち臭いダスティンとはもう関わるまいと思ったその時、
「ギャーー! 助けてくれええ!」
大きな叫び声と爆発音が耳に入ってきた。
凄まじい早さで、中年の男がこちらに走ってきている。
さらに凄まじい威力の火炎球が何発も飛んできていた。
「死んじゃえ! パパなんか死んじゃえ!」
待っていたハーフエルフの女の子が、中年男を追いかけながら、ステッキを振り上げている。
火炎球を放っているのは、この子のようだ。
その後ろからはハーフ鬼の女の子が走ってきている。
状況は分からないが、このまま巻き込まれてはたまらないので、自分も逃げることにした。
◇
「ちょっとヴィオレ落ち着いて」
スカーレットは必死にヴィオレを止めようとしている。
だが、その言葉は耳に入っていないようだ。
「ワタシの学費は何に使ったのよ!」
「ちゃんとカジノで勝って、全額取り返したから良いじゃねえか!」
「嘘つかないで!」
「本当だ!」
本当の事だった。
だが、ヴィオレはその言葉を一切信じておらず、火炎球を投げ続けている。
仮に信じたとしても子供の学費を使い込むということ自体に問題があるので、火炎球は引き続き投げ続けるだろう。
「クソ、なんで俺がこんな目に」
そして徐々に逆切れをし始めたコウスケは、
「全部てめえのせいだ! こらあ!」
冒険者崩れを八つ当たりで殴り倒した。
殴り倒された冒険者崩れは気を失ったようだ。
ヤバいものを捌けそうなルートを色々知っていそうなので、せっかくだから利用する為に、この気絶した男を持って逃げることにした。
(えーと、こいつらが殺ったモンスターは、さっきの3人組が殺した事にして……)
話を聞きながら、報告書に書くことも一緒に考えた。
(後は他の団員に気づかれないように、こいつらをダンジョンの外に安全に逃がせば、俺はなんの責任も取らなくて大丈夫だな)
これで、なんとかなる。
だが2人がコウスケをずっと怒って、にらみ続けていることが気になった。
「で、お前ら、どうしてアクアリーフを盗ろうなんて思ったんだ? 最近、俺に隠れて働いているようだけど、それとなんか関係あるのか?」
「白々しくなに言ってんのよ!」
「パパがワタシの学費を賭け事やエッチなお店に使わなけりゃ、こんな事しなかったわよ!」
「なに言ってんだ?」
「え?」
懐から銀行の証書を取り出して、ヴィオレに渡した。
「不用心に棚の中に入れてたから、俺が保管してたんだ」
「……ごめんなさい」
「気にすんな。疑われることばっかりしてる俺が悪い」
「……怒らないの?」
「ああ。とり合えず帰るぞ」
「おい帰るぞ」
「え? でも勤務中」
「遅刻、早退、無断欠勤はいつも事だ。問題ねえ。それに、なにより大切なお前らに犯罪をさせようとした奴を、ぶっちめなきゃ勤務どころじゃねえよ」
本当に安全に抜けださせる道に連れていこうとしたら、ヴィオレは顔を真っ赤して、ジェスチャーでだっこをおねだりしてきた。
「へっしょうがねえな」
微笑しながらヴィオレをお姫様だっこする。
幸せそうにギュッとだきついて、腕に頬を押し当ててきた。
抱えて歩いて、しばらくたった時、いきなり背中に蹴りを入れられた。
「いて!」
蹴ったのはスカーレットだった。
モジモジしながら羨ましそうな表情で、こちらを見ている。
「お前も抱っこして欲しいのか?」
「い、いい歳なのにそんな訳ないじゃない!」
「背中は空いているから、おんぶなら出来るぞ」
笑いながら膝を曲げて、腰を低くする。
「あ、足が疲れてるから、我慢してあげるわよ!」
恥ずかしそうに言いながら、器用に足をコウスケの腰にまわして、背中に飛び乗ってきた。
「ほっぺが当たってるじゃない! 離れなさいよ!」
そう言っているが、自分から頬をコウスケに擦りつけている。
「はは、悪い、悪い」
コウスケは笑顔で返答しながら、
(バレてねえよな……)
内心では冷や汗をかいていた。
◇
ダンジョンを抜け出し、だいぶ家に近い距離になった。周囲はまだ暗い。
「じゃあ、俺はヴィオレをそそのかした奴をとっちめてくる。お前らは、家に帰って寝てろ」
2人を降ろしたコウスケは、優しく頭を撫でて歩いていく。
ヴィオレは、この一連の出来事に強い違和感を抱き始めていた。
「ねえ、何か変だと思わない?」
「……そうね」
スカーレットも同様の疑問を抱いたようだ。
コウスケが優しすぎるのだ。
自分の非を認めて、謝罪する事など絶対にない。
スカーレットに蹴られたら「何しやがるクソガキ」などと言って怒るはずだ。
大切なお前らなんて言葉、出会って一度も言われたことがない。
やってもらっている時は、幸せで気づかなかったが、よくよく振り返ると、おかしなことばかりしている。
何より銀行の証書を棚に入れているのが、どうして不用心なのだろうか。
懐にずっと入れて、持ち歩いている事の方がはるかに不用心である。
もう一度、銀行預金証書をよく、確認する。
証書に書かれた日付が、昨日の日にちになっていた。
預けたのはもっと前である。
銀行の担当者が書いたサインの筆跡なども、怪しく思えてきた。
次にコウスケを確認する。
凄まじい速さで逃げていた。
使い込みは間違いない。
この証書も精巧な偽物だろう。
やはり、優しかったのは、やましい事があったからだったようだ。
姑息なコウスケへの怒りが瞬く間に頂点に達して、
「パパ、許さないわよ」
爆発した。
◇
冒険者崩れの男は約束の場所で、ハーフエルフの女の子を待っていた。
だが、もう約束の時間は過ぎている。
ダンジョンで死んでいるか、自警団に捕まったかのどちらかで違いないだろう。
無報酬になった事を確認して、けち臭いダスティンとはもう関わるまいと思ったその時、
「ギャーー! 助けてくれええ!」
大きな叫び声と爆発音が耳に入ってきた。
凄まじい早さで、中年の男がこちらに走ってきている。
さらに凄まじい威力の火炎球が何発も飛んできていた。
「死んじゃえ! パパなんか死んじゃえ!」
待っていたハーフエルフの女の子が、中年男を追いかけながら、ステッキを振り上げている。
火炎球を放っているのは、この子のようだ。
その後ろからはハーフ鬼の女の子が走ってきている。
状況は分からないが、このまま巻き込まれてはたまらないので、自分も逃げることにした。
◇
「ちょっとヴィオレ落ち着いて」
スカーレットは必死にヴィオレを止めようとしている。
だが、その言葉は耳に入っていないようだ。
「ワタシの学費は何に使ったのよ!」
「ちゃんとカジノで勝って、全額取り返したから良いじゃねえか!」
「嘘つかないで!」
「本当だ!」
本当の事だった。
だが、ヴィオレはその言葉を一切信じておらず、火炎球を投げ続けている。
仮に信じたとしても子供の学費を使い込むということ自体に問題があるので、火炎球は引き続き投げ続けるだろう。
「クソ、なんで俺がこんな目に」
そして徐々に逆切れをし始めたコウスケは、
「全部てめえのせいだ! こらあ!」
冒険者崩れを八つ当たりで殴り倒した。
殴り倒された冒険者崩れは気を失ったようだ。
ヤバいものを捌けそうなルートを色々知っていそうなので、せっかくだから利用する為に、この気絶した男を持って逃げることにした。
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