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第3章 ギャハハ、お前らも俺と同じ所まで堕ちてきやがれ!

3-9

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「大丈夫?」
「はあ、はあ……うん。大丈夫だよ」

 昼食のあと、スカーレットの体調は急に悪くなった。
 激しい高熱が出て、歩くのもやっとな状態だ。
 だが、ここまで来て棄権したくなかったので、無理を押して試合に出る。

「ハハハッ苦しそうだな! どうしたんだ?」

 顔に変な落書きをしているボンボンが、イヤミったらしい笑顔を浮かべている。
 だが、それに反応する余裕はなかった。

「はじめ!」

 試合が始まった。
 隙だらけのボンボンに面を打ち込むが、あっけなく避けられた。

「なんだそれ。次はこっちからいくぞ」

 苦しい身体を押して、攻撃をかわしていると、強烈な便意が押し寄せてきた。
 片手で腹部を押させて便意を必死に耐える。

「……ッ」

 少しでも動けば大惨事になりそうなので、その場に足を止めた。
 

「ほれ! ほれ! ほれ! これがお前の実力だ! 雑魚! ハハハハ」
「ガッハハ! 良いぞラット! もっといたぶれ!」

 ボンボンは、木剣で腹部を集中的に、いたぶってきた。

 



(おかしい)

 一連の出来事に、ヴィオレは恣意的なものを感じた。
 何故か突然顔に変な落書きをした、あの父子が何か仕組んだのだろう。
 だが、証拠がない。
 試合から目を離しジャッロの表情を伺う。
 険しい表情でスカーレットを見ていた。
 大勝すれば、コウスケの娘でもなんとかなるかと思ったが、もう無理かも知れない。
 スカーレットの頑張りと熱意を知っているだけに、我が事のように悔しかった。



(どうして、こんな時にッ)

ボンボンから受けた、攻撃のダメージは、全くきかなかった。
 
「ヒャハハハ! 良いぞ、まだ倒れるな! お前には、いっぱい、いっぱい恥をかかせてやるからな」

 だが、便意には、もう耐えることができない。
 発熱も相変わらず続いている。
 苦しいがどうすることもできず、ボンボンの攻撃をその身に浴び続けた。

「みっともねえなあ」

 隣で聞き覚えがある声が聞こえ、思わず振り向いた。
 そこには、コウスケが立っていた。

「ボコボコにされろとは言ったが、糞を漏らせとは、言ってねえぞ」



 スカーレットの腹部に手の平をあてて、うんこを3時間我慢できる魔法を使う。

「これでしばらくは大丈夫だ」

「な、なんだお前! 俺はこれからコイツをボコボ……ッ」

 ボンボンが、迫ってきた。
 至近距離に来たところで、人差し指を立てて、5秒でうんこを漏らす魔法を放つ。

「き、貴様、ラットに、なにをした!」

 ボンボンの親父が、やってきた。
 鬱陶しいので同じ魔法をくれてやる。

「んんん……ぐうううッ」
「なんもしてねえよ。しかし、さっきから臭せえな。誰か糞でも漏らしたんじゃねえか? こんな所で脱糞とか、俺なら恥ずかしくて自殺するなあ♪」

 おちょくるために、変顔で笑いかけた。
 ボンボンと親父は、激しく顔を歪ませて、会場から立ち去っていく。

「お、おい、アレって」
「ああ、ゲス勇者だ。間違いねえ」

 誰が優勝するか気になって残っていた多数の参加者と、その関係者たちが一斉に騒ぎ始める。

「貴様、我ら煌剣団に何の用だ!」

 団員たちがコウスケを取り囲み始めた。
 どいつもこいつも上位ランク冒険者だけあって、強いことが肌で分かる。

「久しぶりだな。ジャッロ!」
「5年ぶりかな相棒。気配は感じてたから、いつ出てくるのか気になってたよ」

(マジか。完璧に消してたハズだぞ)


「ところで、そのお嬢さんとは、どんな関係なんだい?」
「自称、俺の娘だ。行く所がねえみてえだから、仕方なく養っている」
「そうなんだ、相棒はモテたからねえ……」
「んな事はどうでも良いんだ! ジャッロ! てめえ、こんなあくどい詐欺やりやがって!」

「我らの入団試験を詐欺だと! なにを根拠に言っている!」
「今すぐ撤回しなければ命はないぞ!」

 団員たちは今にも飛び掛かってきそうなほど激怒した。
 逆にジャッロは、楽しそうな表情を浮かべている。

「ジュニアチームの年間費用見たぞ! 1年間で300万Gとか舐めてるだろ!? 剣術なんて棒切れ一本ありゃ教えれんぞ。高くても1年間30万Gも普通いかねえだろ!」

 コウスケは自分の衰えと今の立場を自覚している。
だから苦楽を共にした、ジャッロにも強い劣等感を持ち会う事を避けていた。
 
「てめえと冒険者チームのブランド名を利用して、無知なガキとアホな親からカネをたんまりボッタクリやがって! うらやましいじゃねえか!」

 しかし、楽して儲けているという嫉妬と、

「俺にも一口かませろ! 週1回2時間、月給100万Gでガキ共に剣術を教えてやる!」

 自分も、おこぼれをにありつきたいという、金銭欲がそれを打ち消した。

「なあ良いだろ。俺たちダチじゃねえか!」

 なお、「俺たち友達だろ」なんて言ってくる奴には、この様にろくな人間はいない。

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