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第3章 ギャハハ、お前らも俺と同じ所まで堕ちてきやがれ!

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 スカーレットは順調に勝ち進み、決勝に駒を進めた。
 最後の相手は、あのボンボン。
 不戦勝で、運よくここまで勝ってきたようだ。
 決勝戦前の食事休憩。
 お腹が減ったスカーレットは、露店で沢山の食べ物を買いパクついていた。

「このフルーツサンド美味しいよ。ヴィオレも食べる?」
「ワタシはそんなに、食べれないかな」

「やあ! 」
「え!?」
「ン……ゴホゴホ!」

 突然、ジャッロが声をかけてきた。
 有名人の思わぬ登場に2人はガチガチになる。

「ごめん、自己紹介と挨拶が遅れたね。僕はジャッロ・ホアンソオ。一応、試験の責任者だ」
「は、はい! スカーレットです」
「ヴィ、ヴィオレと申します」
「そんなにかしこまらないでくれ。ご飯も食べながらで大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます」
「君は木刀を使うんだね」
「ぼくとう、ってもしかして、この木剣のことですか?」
「そうだよ。知らないのかい? 剣って一言で括っても形状や長さで色々な種類があってね。その中の1つ、サムライソードを木で模しているもの木刀っていうのさ」
「そうなんですね」
「サムライソードはこっちの方じゃ、ほとんど使われないけど、東側のある地域では盛んに使われていて……」

 話しの内容は、緊張で、ほとんど耳に入らなかった。

「はは、ゴメン、しゃべりすぎちゃったよ」
「と、とんでもないです」
「これはどこで手に入れたんだい?」
「父が……」
「ちょっとスカーレット!」

 お尻を叩かれて、スカーレットはハッとした。
 勇者パーティーの汚点だった、コウスケとなど、ジャッロはもう関わりたくないに違いない。
 もし娘だと分かれば、失格になる事は明白だった。
 
「父が、露店で変なおじさんから買ったみたいで」
「……そっか」

 ジャッロは、しばらく考えこんだ後、嬉しそうな表情で口を開いた。

「君の戦い方は、すごく痛快だよ!」
「本当ですか! ありがとうございます!」
「君と同じ姓の友人がいてね。有名な奴だから、もしかして知ってるかな?」
「ゆ、有名な人ですからね」
「は、はは……」
「戦い方がそいつに、すっごくソイツにそっくりでなんだよ! ずっと見てたけど、本当に面白い!」
「は、はは……」
「おっと、もうすぐ時間だからこれで失礼するよ。決勝戦、頑張ってね!」

 ジャッロは手を振りながら、笑顔で去っていった。

「バ、バレてる……」

 激しく動揺したヴィオレは、思わず声を漏らす。
 エントリーには、住民管理表の提出が必要なので、姓を誤魔化せないことが悔やまれた。
 スカーレットは、とても落ち込んでいるようだ。
 だが、バレたとはいえ失格になると決まった訳ではない。
 1割くらい情けをかけてもらえる可能性がある。
 気をしっかり持ってスカーレットを励まそうとした。

「ねえ、ヴィオレ。アタシってそんなに、ゲスで卑怯な戦い方してるのかなあ……」

 そんな風には見えなかった。
 だが、ジャッロがそう言っているので、返す言葉が見つからなかった。



(分からなかったかあ)

 団長室に戻りながら、ジャッロはため息をついた。
 やはり、あの木刀は相棒が使っていた物だ。
 柄の部分をチラッと見たが『緋赤紅輔』という模様が彫られていたので間違いない。
 あの女の子の勇猛果敢で、怖いもの知らずな戦い方も、若いころの相棒にそっくりだ。
 親戚かと思って声をかけたが、どうやら違ったようだ。

(はあ……、ここ数年連絡しても返事ないから元気なら良いんだけど。でも、さっきから気配は感じるんだよなあ。どうして出てこないんだろう)



(これ、美味いな)

 本部の敷地内に設営された大きなテントに、コウスケはいた。
 このテントは煌剣団が大会の為に設置したものだと思い、カネめのものを物色しようと入ったが、どうやら参加者が、勝手に設営したもののようだ。
 非常識な輩はなので、こらしめるために、ランチボックスの中に入っている高級料理の数々を胃袋の中に頂くことにした。

(このままじゃ、ガキ共が俺の計画を邪魔しやがる。どうすりゃいい)

 ジュニアチームの費用を知って、目的は変化した。
 目的達成の為には、できるだけ派手に暴れる必要があるので、決勝戦まで息を潜めている。
 しかし、途中で負けて会場を後にすると思ったスカーレットが、決勝に進出したのは予想外だった。
 勇者として女、子供には手をあげられない。(どの口が言うか貴様)

(あんな基本ができてねえ奴に負けやがって。最近のガキは鍛錬が足りねえぞ)

 だが、何故か心の中には、嬉しい気持ちが広がっていた。
 
(畜生もう戻ってきやがったか)

 テントに向かってくる気配を感じ、机の下に身を隠す。


「ギャハハハ。パパ見た? あの鬼(オーガ)、美味しそうにムシャムシャ食ってたよ」
「エンシェント・ベリー入りのフルーツサンドだと知らずにのんきな奴だ! ガハハ」

 スカーレットと決勝で対戦するガキとその親のようだ。
 エンシェント・ベリーは、薬の調合に使われる木の実だ。口当たりのいい甘酸っぱい味でありながら、食べて1時間以内に、強力な発熱と下剤効果がある。

「アイツらだけは、普通に潰すだけじゃ物足りないからね!」
「いいぞ! 沢山の人間が見ている前で思いっきり恥をかかせて、徹底的にいたぶってやれ」

(マジかよ。これ上手くいったら俺はスカーレットに助けた恩が売れるじゃねえか! それで有耶無耶にして……よくやったぞ! バ金持ち親子!)

 コウスケは心の底から感謝した。

「さあ、シェフ共に運ばせた飯を食うとするか……なに!?」
「全部、食われてる!」

(ランチボックスの中を見てるから、今なら顔は見られねえな)
「おら、おらあ!」

 だが、それ以上にムカついたので、ぶん殴って気を失わせる。
 ついでに金目の物を全部奪って、顔に落書きもして、テントを後にした。
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