調子に乗ってざまあされたゲス勇者、娘たちに逆襲されるの巻

松本生花店

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第3章 ギャハハ、お前らも俺と同じ所まで堕ちてきやがれ!

3-7

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 トーナメントの組み合わせ発表が発表された。
 これに優勝すれば憧れている煌剣団のジュニアチームに入団することができる。
 少年は強い期待と緊張にかられながら、試合会場に向かって力強く歩き出した。

「いた!」

 足の裏に激痛が走った。
 下を見ると、沢山のマキビシがばらまかれていた。
 卑劣な行為に怒る間もなく、身体にある変化が起こり始めた。

(え?……頭がふらふらする)

 意識を失い地面に倒れ込んだ。



「やったねパパ!」

 1回戦の対戦相手が倒れた事を確認し、ラットは、はしゃぐ。

「ガハハッ眠り薬を塗った特製のマキビシだからな」
「次の相手はコイツだね。でも、勘が良さそうな奴だからこういう手は通じそうにないね。どうしよう?」
「心配ない。チンピラ共に小遣いを渡して、はしたガネを持っていかせているところだ」
「流石パパ!」
「断れば、意識を失うような怪我をしてもらえばいい。なにしろジャッロ公認だからな。なんの問題にもならん」

 魔力が付与された木剣の使用が許されず、渡したカネを返された時は、本当に腹が立った。
 だが、ジャッロが王室御用達の商人である自分の息子を、是が非でもジュニアチームに入団させたい思っていることは間違いない。
しかし、立場というものがある。
 だから、こういった些細なことを黙認するのが、関の山なのだろう。

(S級冒険者の癖に腰抜けだとは思うが、ここは金持ちらしく、寛大に許してやろうではないか)
 
 輝かしい息子の未来を思い浮かべながら、ダスティンはニヤリと笑った。



「で、で、で、出番は次の試合だよね……」
「スカーレット、落ち着いて」

 スカーレットはガチガチに緊張していた。

「あー! パパ! アイツらだよ! いきなりこの前、俺を汚い方法でいじめてカネをとった奴ら」

 アホなボンボンとその父親が、こっちに気づいて向かって来た。

「貴様らか! ワシの可愛い息子にふざけた真似をしたクズ共は!」
「うっざいモンペね。あっち行ってくれない?」
「なんだと! 貴様らの親はどこだ!?」
「たかが、子どもの喧嘩に熱くなって、馬鹿じゃないの」

 脂ぎったハゲ親父をスカーレットは適当に流した。
 ここでヴィオレも口を開く。

「あなたの息子は女に負けたのよ。お・ん・な、に♪ 汚い手を使われたとしても、男として、その時点でゴミよ」
「きいいいい!」

 父親が発狂した直後、ボンボンはスカーレットを見て笑い始めた。

「ぷッなんだ、その変な木剣、そんなの使って恥ずかしくねえのか」
「ガハハハッただの棒きれかと思ったぞ! ラット、もっと言ってやれ」
「……」
「しかもお前の対戦相手、ショットじゃねえか! アイツは俺を除けば、参加者の中で一番強いぞ! ギャハハハ……」
「しかもよく見たら、お前ら魔族とエルフか。こんな所に来て恥ずかしくないのか? ガハハハ」
「……」

 うざったい親子だ。だが、バカに付き合ったおかげで、不本意だが緊張がとれた。

「182番、スカーレット・ヒセキさん」
「はい! 今行きます!」

 バカ親子の笑い声は耳に入り続けていた。
 他にも木剣を見て見ぬふりをしながら、冷笑する参加者や、保護者もちらほらいる。
 だが、一切気にはならなかった。
 試合場に入る前に対戦相手を確認する。

(確かに、強そう)

 だが、不思議と負ける気はしなかった。



「団長、あれがショット君です」

 剣術の盛んなサンベリア地方の少年剣術大会で、圧倒的な強さを誇り優勝を総なめ。
 大人が混じった剣術大会でも無敗。
 今回の試験でも優勝候補の大本命。

 見て少年ながらオーラの様なものを感じた。

(あー、あれは強いなあ)

 だが、ジャッロが気になっていたのは、ショット君ではなく対戦相手のハーフ鬼の女の子だった。

「あの子……」

 雰囲気や佇まいが、一緒に旅をしていた頃の同じ姓の友人に、そっくりなのだ。

「ああ、珍しいですね。この辺りで木刀を使うなんて」

 この西側地域で、サムライソードの使い手は皆無だった。
 それを木で模した木刀を見ることもまずない。
 ジャッロもサムライソードを使う人間は、国外に出るまで、1人しか見たことがなかった。

「はじめ!」

 試合が始まった。
 女の子は、背をかがませながら、凄い速さで、ショット君の右懐にまわり込む。
 ショット君はなんとか目で動きを追えてはいるようだ。
 しかし、身体は反応できてない。
 女の子はショット君の右わき腹を薙ぎ払う。
 大きな音が響き、ショット君は地面に膝をついた。
 たったの一撃で勝敗は決した。
 皆、女の子が勝つなどと思っていなかったのだろう。
 会場は静まりかえっている。


(技は無茶苦茶だな。でも、それをものともしないほどフィジカルと反応がいい。それになんというか戦い方が……)

 早く終わって欲しかったジュニアチーム入団試験が、思わぬ形で楽しくなった。
 自然と口もとに、微笑が浮かんだ。

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