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第3章 ギャハハ、お前らも俺と同じ所まで堕ちてきやがれ!

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 買い物から帰る途中、スカーレットは、S級冒険者チーム煌剣団の本部の前で足を止めた。
 世界5か所に支部を持ち、構成員はS級からB級の上位冒険者、約100名。
 剣や槍など前衛での戦闘を得意とし、モンスター退治では世界で右に出るものがいないと言われている。

 将来、剣士の冒険者になりたいスカーレットにとって、憧れのチームだった。
 立て看板が立てられていたので、それも気になり読んでみる。

 (ジュニアチーム、訓練生試験、参加者募集……)

 煌剣団のジュニアチームは、同チームで将来活躍する冒険者を育成するための組織だ。
 スカーレットと同年代の子たちが在籍し、同チームで活躍する冒険者になるために、現役の上級冒険者の指導のもと様々な特訓を行っている。昔、ジュニアチームに所属していた煌剣団の有名冒険者も多い。

 試験内容も確認する。
 トーナメント方式で剣術の試合をしていき、1位になった子供だけが訓練生になれるようだ。

「どうしたの?」

 ヴィオレに声をかけられ、ハッとした。

「なんでもない。行こ」

 煌剣団に憧れる子供は沢山いる。
 試験には、その中でも特に強い子たちが、押し寄せてくるだろう。
 運よく優勝し、入団できたとしても、月謝、備品代など多くの出費がかかる。
 これ以上、コウスケに金銭的な負担をかけたくなかった。
 それにコウスケは、煌剣団に強いコンプレックスを持っているはずなので、試験を受けたいと言ったらどんなトラブルがおこるか分からない。



「もしかして受けたいの?」
「ハハ、そんな訳ないじゃん」

 スカーレットはそう言ったものの、ヴィオレには彼女が我慢していることが簡単に分かった。
 魔法学園に進学したかったが、家庭の事情で諦めていた自分に、今のスカーレットの姿が被る。

「受けましょ! 私も協力する!」
「でも、合格できても……おカネが」
「私の学費の貯金、少しだけ降ろすからさ。良かったら使って」

 ヴィオレの母親からコウスケが騙し取った小切手は、魔法学園に合格した時の、学費に使われることになり、銀行に預けられていた。

「え!? でも」
「6年分の学費だから、ちょっと使ってもなんとかなるわ。明日から一緒に特訓しましょ!」
「……本当にありがとう」
「今から申し込みにいきましょう」

 受付に行こうとした時、突然スカーレットが、大声をあげた。

「嘘!? すごいよ! 試験当日には剣聖ジャッロが来るんだって!」
「嘘? 絶対に見にいかなくちゃ!」

 

 ジャッロ・ホアンソオ

 異名は「剣聖」。
 連合王国にある、のどかな村に生まれた彼は、勇者パーティー(アナタの父親のパーティーですよ)に最初期から参加。
 剣1本だけで、押し寄せる大軍を難なく薙ぎ払うその姿は、多くの魔族を戦慄させたという。
 戦後は世界をまわる冒険者として活躍。
 たった1人で、天災のようなモンスターの討伐に何十回と成功し、救われた国や地域は星の数ほどある。
 その功績から彼は世界的にも希少なS級冒険者の中でも、頭1つ飛びぬけた存在だった。
 現在もモンスター災害を苦しむ人々を救うために世界各地を飛び回っており、災害級のモンスターが、ほぼ討伐されている連合王国に帰ってくることはまずない。

 煌剣団は、ジャッロを慕う冒険者たちが自然発生的に集まり作った冒険者チームで、団長は彼が勤めている。

 ジャッロに会えるかも知れない。
 そう思うと、冒険者事情に疎く、剣術に興味がないヴィオレも興奮が治まらなかった。

「分かってると思うけど、このことはパパには絶対……」
「言わないよ。すごく汚い手を使って邪魔してきそうだもん」
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