調子に乗ってざまあされたゲス勇者、娘たちに逆襲されるの巻

松本生花店

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第1章 すっごく嫌だけど我慢して一緒に住んであげる

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「ヒャハハハ、これであと8匹くれえか」
「ふざけたことばかりやりがって……」

 頭目の男はコウスケを見ながら血管がちぎれそうなほど激怒していた。

「お前らなにちんたらやってる! 全員で一気にたたんじまえ!」

 頭目の男の号令で5人の魔族が一斉にコウスケに襲い掛かった。

「ひいい、怖いよお」

「俺が悪かったよう、許してよう」

 コウスケはわざとらしい声をあげながら5人の魔族の攻撃をかわした。

「舐めんじゃね……足が動かねえ!」
「俺もだ」
「ゲス勇者てめえなにやりやがった!?」

 5人の魔族の足は地面と一緒に凍り付き動かなくなった。

「へへへ」

 先ほどポケットを漁って見つけたものをこれ見よがしに見せつける。

「フロストジェルじゃねえか!」
「てめえこれで俺たちを……」

 フロストジェルはガラス瓶に入っている粘り気のある透明な液体で、表面に垂らすと凍り付き非常に強力な接着力を持つ。
 時間の経過で溶けていくため効果は一時的だが、逆にそれが使い勝手が良いためによく使用される日用品のような魔法薬だ。
 コウスケは逃げ回りながら魔族の足元にそれを垂らしていた。

 動けない魔族たちを尻目に先ほど顔を壁にめり込ませた魔族のところにいき剣の鞘を失敬する。

 そして…‥

「おらあ!」

「おらあ!」

 首筋を鞘で叩き、1人1人気絶させていく。

「またせこいことしやがって……」

 頭目は苦々しい目でコウスケを見る。

「近づくとあぶねえ! ここから弓と魔法でゲス勇者をなぶり殺しにしろ!」

 弓を持っている魔族が狙いを定める。
 魔法が使える魔族も杖を構える。

 1人、1人ゆっくりと気絶させていくコウスケに矢と魔法の火の玉が放たれた。

「残念♪」
 
 コウスケは矢を横によける。矢はまだ気絶していない魔族の左肩にあたる。

「があああ!」

 よけた先には火の玉が向かっていた。それを先ほどとは別の魔族の襟を引っ張り盾にしてかわす。

「ぎゃあああ!」
「ヒャハハ」

「てめえ、よくも仲間を」
「ああッそれはこっちの台詞だ!」
「はあ!?」
「死んじまったら報奨金が3割も減るじゃねえか。気ぃ使いながら戦ってんのに台無しにしやっがて!」

 コウスケは矢と火の玉があたり苦しむ魔族に、わざとらしいねぎらいの笑みを向けた。

「待ってろ。お前らの非情な親玉は俺がパクってやるからな」

 馬鹿にするようにそう告げて、状況を確認する。
 頭目を挟むように弓を持った魔族と魔法を放った魔族は立っている。
 そのすぐ後ろにはスカーレットがコウスケをとても心配そうな顔で見つめている。
 少し離れた位置には寝転がってうなだれている女のオーガがいる。

(あの女は多分戦えないだろうからだろうからあと3匹か)

 弓を持った魔族と頭目はなにかをヒソヒソと話している。
 このグループは、強い上下関係はなく比較的仲間想いのようだ。もう遠隔からなにか打ってくることはないだろう。
 ただ、スカーレットを助ける為にはどうしても近づくしかない。恐らくその時に近距離から弓と魔法を放射して仕留めようする算段でもたてているのだろう。
 もしくはスカーレットを盾にして脅すことを考えているのかも知れない。
 そうなったら面倒くさいことこの上ないのでコウスケは打開できる方法を、周囲を確認し模索した。

(疲れるからできるだけ楽な方法はねえかなあ)

 そんなことを考えながら周囲を見渡す。弓を持った魔族と、魔法を放った魔族の頭上にはそれなりの大きさのシャンデリアがあった。
 人間ならばあれがあたれば大けがだろう。
 だが魔族には傷すらつくかどうか微妙だ。

(頭の奴がクソガキを盾にしてゴチャゴチャ言ってくる前にこれでいくか)

 先ほど倒した魔族の剣を2本拾い、それに魔力を込める。
 コウスケはしょうもない魔法しか使えない。
 だが魔力はこの世界の誰もが持っていて物に容易に送ることができる。それを動力に稼働する日用的な魔道具も多い。
 あのシャンデリアは魔力を送ることにより火か雷の力で発光するタイプのようだ。
 発光した状態で落ちたならばダメージは与えられる。
 それにこの建物は古い。ここにある日用品魔道具は最近のものとは違い、送り込む魔力量を制限するコーティングが施されてない可能性が高い。
 つまり多量に魔力を送りこんだものを落とせば一撃で倒せる可能性が高い。
 そして勇者であるコウスケの魔力量は常人を遥かに凌駕する。

(まあ、こんなもんか)

 必要な魔力量が剣に貯まったので、剣2本をシャンデリアに向かって投げた。

「ギャハハッどこ投げてんだてめえ!?」

 同時に少し軽めに走る。

「おいおい走ってこっちに来るぜ」
「良い的だな。おい早く打っちまえ」

 距離がだいぶつまったところで2人の魔族が弓と杖から矢と魔法を放とうとしたとき、それぞれの頭上に剣で吊り下げ部分が切られたシャンデリアが落ちてきた。

「「ぎゃあああ!」」

「は!? おい! なにが!?」

頭目はなにがおこったか分からず混乱しているようだ。

「邪魔だどけこらあ!」
「ごふ!」

 走りながら頭目の首にラリアット打ち込む。
 どうやら失神したようだ。
 そのままの勢いで体勢を崩しスライディングをして地面を滑る。
 滑りながらスカーレットを抱きかかえて保護した。

「ふっと」

 そして壁に足をあてて滑りを止め、スカーレットを抱きかかえたまま壁に背をもたれさせて座り込んだ。

「ったく、てめえにボコボコにされたうえに、しんどい運動を久々にやらされて最悪だわ」
「ふん、私を助けに来たのはお金が欲しいからでしょ。感謝なんてしてないわよ……でも一応お礼だけ言っとくわ……ありがとう」

 スカーレットは顔を真っ赤してぷいっと横を向く。

「ったく素直に礼も言えねえのかよ」

 スカーレットは嬉しそうにぎゅっと抱きついた。
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