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第1章 すっごく嫌だけど我慢して一緒に住んであげる
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なに言っているか分からず混乱するコウスケを尻目に、少女は毅然とした態度で力強く言葉を投げかけた。
「ママの無念を晴らしにきた。覚悟しろ!」
言い終わると同時に木剣を持ちコウスケに飛び掛かった。
「くらえ!」
「いてえええ!」
少女は木剣を横に薙ぎ払い頬に打ち込む。
衝撃でコウスケは口から血を流し、そのまま地面に倒れ込んだ。
加齢と不摂生と運動不足によりコウスケの戦闘能力は若い頃に比べて大幅に衰えていた。
それでも、そこそこの魔族やモンスターくらいは簡単に素手でのせているのでまだいける。
そう思っていたのだ……。
(俺は女のガキに一撃入れられるほど弱くなっちまったのか!)
「いきなりなに……」
「だまれ極悪人!」
地面に倒れ込んだコウスケに少女は何発も木剣を振り下ろした。
「いて! いて! いて!」
「待て! 逃げるな卑怯者!」
「ひいい! 誰か助けてくれえ!」
少女は歳の割には化け物じみて強かった。
さらに、信念として女子供年寄に手をあげることはできない。
こんな場合は逃げるか助けを求めるかのどちらかをすることにしていた。
(くそ、どこに逃げりゃいい……お! あそこ良くねえか)
近くの木のてっぺんまでよじ登る。
「どうだクソガキ! 木剣もってここまで来れねえだろ!」
少女を見下ろしながら、得意気に声をあげた。
「バーカ! バーカ!」
バーカ! と言うときにわざと変な顔をつくる。
きっと死ぬほど悔しいに違いない。
◇
(いい歳したオヤジがよくあんな恥ずかしいことできるわね)
コウスケを馬鹿にした目で見ながら少女は心の中でつぶやいた。
(こんなことであきらめるくらいなら、こんなとこまで来ていないっつーの)
少女はコウスケに背を向けて、歩き始めた。
周りには先ほどよりも野次馬が集まっているが、少女が歩くとみんな道を開けていった。
「バーカ! 逃げるな負け犬! バーカ!」
背を向けて離れていく少女にコウスケは低次元な言葉を浴びせ続けた。
あまりのレベルの低さにずっと抱いていた怒りも消えそうになる。
少女はそれをぐっとこらえた。
(距離はもう十分かな)
ある程度、距離をとったところで反転し、木に向かって走り始めた。
「もしかして木を蹴って俺を落とすつもりかあ?」
耳にコウスケの雑音が入ってくる。
「ギャハハ! おめえの体重じゃそれは無理だぞ」
(そんなことはしない)
「それとも飛び跳ねて俺を剣で攻撃するつもりか?」
(正解)
「いくら助走つけても俺がいるとこまではジャンプできねえぞ。ギャハハ」
(そんなことは分かっているっつーの)
少女が目指したのはコウスケが登っている木の隣の木。
そこに向かって勢いよく飛び上がった。
「な!?」
飛んでいる途中に体勢を変えて足から木に突っ込む。
そして、木の幹を勢いよく上に蹴り上げて、隣の木にいるコウスケの頭上を目指した。
「な、なにいいい!」
頭上まで飛んできた少女にコウスケは驚愕した。
「ぎゃああああ!」
渾身の力で木剣を振り落とされ、木から手を離したコウスケは、そのまま顔面から地面に転落した。
「ママの無念を晴らしにきた。覚悟しろ!」
言い終わると同時に木剣を持ちコウスケに飛び掛かった。
「くらえ!」
「いてえええ!」
少女は木剣を横に薙ぎ払い頬に打ち込む。
衝撃でコウスケは口から血を流し、そのまま地面に倒れ込んだ。
加齢と不摂生と運動不足によりコウスケの戦闘能力は若い頃に比べて大幅に衰えていた。
それでも、そこそこの魔族やモンスターくらいは簡単に素手でのせているのでまだいける。
そう思っていたのだ……。
(俺は女のガキに一撃入れられるほど弱くなっちまったのか!)
「いきなりなに……」
「だまれ極悪人!」
地面に倒れ込んだコウスケに少女は何発も木剣を振り下ろした。
「いて! いて! いて!」
「待て! 逃げるな卑怯者!」
「ひいい! 誰か助けてくれえ!」
少女は歳の割には化け物じみて強かった。
さらに、信念として女子供年寄に手をあげることはできない。
こんな場合は逃げるか助けを求めるかのどちらかをすることにしていた。
(くそ、どこに逃げりゃいい……お! あそこ良くねえか)
近くの木のてっぺんまでよじ登る。
「どうだクソガキ! 木剣もってここまで来れねえだろ!」
少女を見下ろしながら、得意気に声をあげた。
「バーカ! バーカ!」
バーカ! と言うときにわざと変な顔をつくる。
きっと死ぬほど悔しいに違いない。
◇
(いい歳したオヤジがよくあんな恥ずかしいことできるわね)
コウスケを馬鹿にした目で見ながら少女は心の中でつぶやいた。
(こんなことであきらめるくらいなら、こんなとこまで来ていないっつーの)
少女はコウスケに背を向けて、歩き始めた。
周りには先ほどよりも野次馬が集まっているが、少女が歩くとみんな道を開けていった。
「バーカ! 逃げるな負け犬! バーカ!」
背を向けて離れていく少女にコウスケは低次元な言葉を浴びせ続けた。
あまりのレベルの低さにずっと抱いていた怒りも消えそうになる。
少女はそれをぐっとこらえた。
(距離はもう十分かな)
ある程度、距離をとったところで反転し、木に向かって走り始めた。
「もしかして木を蹴って俺を落とすつもりかあ?」
耳にコウスケの雑音が入ってくる。
「ギャハハ! おめえの体重じゃそれは無理だぞ」
(そんなことはしない)
「それとも飛び跳ねて俺を剣で攻撃するつもりか?」
(正解)
「いくら助走つけても俺がいるとこまではジャンプできねえぞ。ギャハハ」
(そんなことは分かっているっつーの)
少女が目指したのはコウスケが登っている木の隣の木。
そこに向かって勢いよく飛び上がった。
「な!?」
飛んでいる途中に体勢を変えて足から木に突っ込む。
そして、木の幹を勢いよく上に蹴り上げて、隣の木にいるコウスケの頭上を目指した。
「な、なにいいい!」
頭上まで飛んできた少女にコウスケは驚愕した。
「ぎゃああああ!」
渾身の力で木剣を振り落とされ、木から手を離したコウスケは、そのまま顔面から地面に転落した。
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