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46話 悪徳商人ざまぁ回
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「なつめさん、その……お願いが……」
「なにかしら?」
オフ会の会場に戻る途中、こはくはもじもじしながら話しかけてきた。
「い、引退しないで欲しいんです! 家庭の事情とか色々あると思うんですけど……その、私は見ていると元気が貰えると言うか……すいません、事情も考えず身勝手な事言って」
「止めないわよ」
「え?」
アキナの言葉を聞いた、こはくは呆気にとられた表情を浮かべている。こはくの気持ちを知った今、もう止める理由はない。いや、むしろこはくが自分の配信を楽しみにしているのだから、これからも続けなければならない。
(高校、大学ってこはくが進学していくことを考えたら、もっと、おカネが必要になるし。今まで以上に忙しくなるわね)
明るい娘の未来を思い浮かべて、アキナは上機嫌になっていた。
そのとき……
(え? なにこれ!?)
異常な魔力の乱れを感知した。この階層には、いないはずの何かがこちらに沢山向かって来ている。
「こはくちゃん! 私の後ろに隠れて!」
「え?」
「良いから早く!」
なにが起こっているか分からないといった表情を浮かべたまま、こはくはアキナの言うとおりに動く。
(嘘……この前のイエティなんか比べ物にならない)
沢山向かって来ているものに驚きながら、自分の背後にこはくが隠れた事を確認し、アキナは聖女の結界を張った。
◇
「わあ、配信中によく出てくる小さいドラゴンだあ」
「可愛い、なにか売ってくれるのかな?」
オフ会会場に突如ミニマムドレイクの大群が現れた。なつめさんがいない中、動画では、お馴染みになっているモンスターが沢山現れたことで、周囲の関心はそちらに移った。
餌を与えようとするもの、写真を撮ろうとスマホを構えるもの、会場の様子をLIVE配信していたので一緒に映りこもうとする者、参加者たちは思い思いの考えで、あっという間に接近してきたミニマムドレイク達に自ら近づいていく。
「元はダンジョンのモンスターだから、これとか食べさせて大丈夫だよな?」
参加者の一人が、バーベキューを手に持ち、それをミニマムドレイクに与えようとする。
ミニマムドレイクはそれに気づき……バーベキューを無視して、参加者の顔面に大きく口を開き向かってきた。
「え!?」
ミニマムドレイクは自分を餌として見ている。その様子を見た参加者は瞬時にそれを理解した。しかし既に時は遅く、鋭い牙が自分の首元にあと少しで到達してしまう状況だ。どうする事もできず、恐怖で身体が固まってしまった、その時……
「おらあ!」
何者かに拳を叩きつけられたミニマムドレイクは、失神し地面に落下した。
◇
(ヤベエぞ、ヤベえぞ)
とりあえず、1匹片付けたコウスケは周囲を確認して激しく焦っていた。
こいつらは、飼いならす事に成功した3階層と6階層のミニマムドレイクではなく、未だに生意気でいう事をきかない9階層のミニマムドレイクである。
(こいつらにしてみりゃオフ会の参加者は勿論、この階層にいる全てのモンスターが、楽に手に入る美味い飯だぞ……)
参加者を襲っているミニマムドレイク達を片っ端から殴って失神させながら、周囲の状況を確認する。
沢山のミニマムドレイク達は、会場を破壊し、参加者の衣類や備品を傷つけている。だが、幸い怪我人や死人は、まだ出ていない様だ。
(ひいいいい! もうチケット代を返金するしかねえ! いや、参加者の持ちもんもいっぱい壊れてるから、それ弁償するとなると……待て、下手したら精神的苦痛を受けたとかいって慰謝料も……)
コウスケは、心の中で絶叫しながら、目についたミニマムドレイクを地面に叩き落としていく。
(参加者を早く家に返して、事態を有耶無耶にしなきゃいけねえのに。畜生、数が多すぎる!)
本当に泣きそうになったその時、多数のミニマムドレイクに光線が放たれた。光線は参加者達を器用にすり抜けてミニマムドレイクの羽だけを打ち抜いていく。
何事かと思い光線が飛んできた方向に目をやる。
『これ以上、生態系は荒らさせねえ!』
『ジン!』
『ホントは殺したくはねえッスけど、2階層のモンスターの味覚えちまってるかも知んねえから殺処分もやむ無しッス』
そう言いながらジンはふたたび両手を広げ、手の指全てから魔法の光線を放つ。
(おし、これなら早く掃討できそうだ。参加者に返すカネもだいぶ安くなるな)
自分はこういう便利な魔法は使えないので、頼もしいジンに安堵した。
この隙に参加者を早く1階層受付まで避難させなければならない。
「ギャル! 参加者を1階層に避難誘導するでござる!」
「はあ!? なんでおめえにそんな事言われなきゃいけねえだんよ!」
と、口では言ってるがアキのカメラマンを担当しているギャルは、積極的に避難誘導を行ってくれている。
ゴブリンなど周辺にいた従業員と化しているモンスター達も同様だ。
しかし、数が足りず、大多数がパニックになっている参加者を上手く誘導できていない。
(よし! ミニマムドレイク退治はジンに任せて俺も避難誘導に加わるか。その方が楽そうだしな)
責任者でありながら、楽なものを請け負おうとしたその時だった。
『コウスケさん! ここは俺に任せてください!』
『ここで、その名前を出すんじゃねえ!』
反射的にジンを殴ってしまった。
殴られたジンは地面に横たわる。
「ジン、おい、ジン……」
白目を向いている。どうやら気絶してしまったようだ。
「畜生……てめえらぜってえ許さねえぞ!」
ジンをこんな目に合わせたミニマムドレイク達にコウスケは怒りを爆発させた!
「おらあ! ジンの仇だ!」
先ほどとは打って変わり強い憤怒の感情を抱いたコウスケは、亡きジンの無念を晴らす為に、我が身を顧みずミニマムドレイクの掃討を開始した。
「おらあ! おらああ!」
完全に無茶苦茶な言い分であるが、残念ながらそれを突っ込むものはこの場にはいない。
「あぐ!」
なおこの男は、裸踊りをしていた時のまま、素っ裸の状態で、お盆でアレを隠しながら一連の行動を行っていた。
そして今、1匹のミニマムドレイクがお盆の下からまわりこみ、コウスケのナニに嚙みついた。
「ぎやあああああ!」
痛みに耐えきれず、地面に崩れてのたうちまわるコウスケの身体に大量のミニマムドレイクが一気に群がってきた。
「なにかしら?」
オフ会の会場に戻る途中、こはくはもじもじしながら話しかけてきた。
「い、引退しないで欲しいんです! 家庭の事情とか色々あると思うんですけど……その、私は見ていると元気が貰えると言うか……すいません、事情も考えず身勝手な事言って」
「止めないわよ」
「え?」
アキナの言葉を聞いた、こはくは呆気にとられた表情を浮かべている。こはくの気持ちを知った今、もう止める理由はない。いや、むしろこはくが自分の配信を楽しみにしているのだから、これからも続けなければならない。
(高校、大学ってこはくが進学していくことを考えたら、もっと、おカネが必要になるし。今まで以上に忙しくなるわね)
明るい娘の未来を思い浮かべて、アキナは上機嫌になっていた。
そのとき……
(え? なにこれ!?)
異常な魔力の乱れを感知した。この階層には、いないはずの何かがこちらに沢山向かって来ている。
「こはくちゃん! 私の後ろに隠れて!」
「え?」
「良いから早く!」
なにが起こっているか分からないといった表情を浮かべたまま、こはくはアキナの言うとおりに動く。
(嘘……この前のイエティなんか比べ物にならない)
沢山向かって来ているものに驚きながら、自分の背後にこはくが隠れた事を確認し、アキナは聖女の結界を張った。
◇
「わあ、配信中によく出てくる小さいドラゴンだあ」
「可愛い、なにか売ってくれるのかな?」
オフ会会場に突如ミニマムドレイクの大群が現れた。なつめさんがいない中、動画では、お馴染みになっているモンスターが沢山現れたことで、周囲の関心はそちらに移った。
餌を与えようとするもの、写真を撮ろうとスマホを構えるもの、会場の様子をLIVE配信していたので一緒に映りこもうとする者、参加者たちは思い思いの考えで、あっという間に接近してきたミニマムドレイク達に自ら近づいていく。
「元はダンジョンのモンスターだから、これとか食べさせて大丈夫だよな?」
参加者の一人が、バーベキューを手に持ち、それをミニマムドレイクに与えようとする。
ミニマムドレイクはそれに気づき……バーベキューを無視して、参加者の顔面に大きく口を開き向かってきた。
「え!?」
ミニマムドレイクは自分を餌として見ている。その様子を見た参加者は瞬時にそれを理解した。しかし既に時は遅く、鋭い牙が自分の首元にあと少しで到達してしまう状況だ。どうする事もできず、恐怖で身体が固まってしまった、その時……
「おらあ!」
何者かに拳を叩きつけられたミニマムドレイクは、失神し地面に落下した。
◇
(ヤベエぞ、ヤベえぞ)
とりあえず、1匹片付けたコウスケは周囲を確認して激しく焦っていた。
こいつらは、飼いならす事に成功した3階層と6階層のミニマムドレイクではなく、未だに生意気でいう事をきかない9階層のミニマムドレイクである。
(こいつらにしてみりゃオフ会の参加者は勿論、この階層にいる全てのモンスターが、楽に手に入る美味い飯だぞ……)
参加者を襲っているミニマムドレイク達を片っ端から殴って失神させながら、周囲の状況を確認する。
沢山のミニマムドレイク達は、会場を破壊し、参加者の衣類や備品を傷つけている。だが、幸い怪我人や死人は、まだ出ていない様だ。
(ひいいいい! もうチケット代を返金するしかねえ! いや、参加者の持ちもんもいっぱい壊れてるから、それ弁償するとなると……待て、下手したら精神的苦痛を受けたとかいって慰謝料も……)
コウスケは、心の中で絶叫しながら、目についたミニマムドレイクを地面に叩き落としていく。
(参加者を早く家に返して、事態を有耶無耶にしなきゃいけねえのに。畜生、数が多すぎる!)
本当に泣きそうになったその時、多数のミニマムドレイクに光線が放たれた。光線は参加者達を器用にすり抜けてミニマムドレイクの羽だけを打ち抜いていく。
何事かと思い光線が飛んできた方向に目をやる。
『これ以上、生態系は荒らさせねえ!』
『ジン!』
『ホントは殺したくはねえッスけど、2階層のモンスターの味覚えちまってるかも知んねえから殺処分もやむ無しッス』
そう言いながらジンはふたたび両手を広げ、手の指全てから魔法の光線を放つ。
(おし、これなら早く掃討できそうだ。参加者に返すカネもだいぶ安くなるな)
自分はこういう便利な魔法は使えないので、頼もしいジンに安堵した。
この隙に参加者を早く1階層受付まで避難させなければならない。
「ギャル! 参加者を1階層に避難誘導するでござる!」
「はあ!? なんでおめえにそんな事言われなきゃいけねえだんよ!」
と、口では言ってるがアキのカメラマンを担当しているギャルは、積極的に避難誘導を行ってくれている。
ゴブリンなど周辺にいた従業員と化しているモンスター達も同様だ。
しかし、数が足りず、大多数がパニックになっている参加者を上手く誘導できていない。
(よし! ミニマムドレイク退治はジンに任せて俺も避難誘導に加わるか。その方が楽そうだしな)
責任者でありながら、楽なものを請け負おうとしたその時だった。
『コウスケさん! ここは俺に任せてください!』
『ここで、その名前を出すんじゃねえ!』
反射的にジンを殴ってしまった。
殴られたジンは地面に横たわる。
「ジン、おい、ジン……」
白目を向いている。どうやら気絶してしまったようだ。
「畜生……てめえらぜってえ許さねえぞ!」
ジンをこんな目に合わせたミニマムドレイク達にコウスケは怒りを爆発させた!
「おらあ! ジンの仇だ!」
先ほどとは打って変わり強い憤怒の感情を抱いたコウスケは、亡きジンの無念を晴らす為に、我が身を顧みずミニマムドレイクの掃討を開始した。
「おらあ! おらああ!」
完全に無茶苦茶な言い分であるが、残念ながらそれを突っ込むものはこの場にはいない。
「あぐ!」
なおこの男は、裸踊りをしていた時のまま、素っ裸の状態で、お盆でアレを隠しながら一連の行動を行っていた。
そして今、1匹のミニマムドレイクがお盆の下からまわりこみ、コウスケのナニに嚙みついた。
「ぎやあああああ!」
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