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22話 飯テロ動画のできあがり!
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「今日は皆さんにモンスターのお魚さんを使った料理をご紹介します♡ 釣っている所は宅麻淳美さんのチャンネルで上がりますんで是非見に行ってください♡」
事務的にスマホを構えているレナの方向を向き、アキナはいつものように痛々しいポーズをとった。
それが終わると、テーブルの上に用意した食材を1つ1つ紹介していく。
「まずはこちらフィンウォーカーです。ちょっと前に大変な事件がありましたんで知ってるかも知れませんけど、この魚、全身にすっごい猛毒を持っているんです。でも……」
深緑色で葉脈が金色に輝くハーブを手に取り、カメラに向かる。
「このデクトシアってハーブの煮汁にしばらく浸けるだけで簡単に毒抜きができちゃうんです」
先ほどの清流から汲んできた水でいっぱいになっているキャンプ用の鍋の中にデクトシアを沢山入れて、事前に作っておいた石のかまどの上に置き、焚き木に火を着けて沸騰するまで放置する。
「この間にフィンウォーカーを食べやすい大きさに切っていきます」
ナイフで内臓を全部取り出し、火が通りやすい大きさに切り分けていく。
全部切り分けたところで、ちょうど鍋が沸騰してきた。
かまどの上からテーブルに煮汁の入った鍋を移し、切り分けた分の魚肉を煮汁につける。
「デトクシアの煮汁は、猛毒を無効化するためだけじゃなくて、肉を柔らかくしてくれるんです。あと香りもつきます。つける時間は大きさにもよるんですけど、これ位ならだいたい30分くらいです。この時間暇になりますんでご飯の準備をします」
米をとぎ飯盒に移し、かまどの上に置く。
「30分経ちました! それでは次の準備を進めていきます!」
キャンプ用フライパンをかまどの上に置き、持参したオリーブオイルと薄くスライスしたニンニクを投入した。シャッという音とともに、ニンニクの芳ばしい香りがあたりに広がる。
「フライパンがほど良く温まってきましたね。ここでフィンウォーカーを入れて炒めます。」
緑色の皮と白い魚肉の切り身がフライパンに触れ、ジューという音が辺りに響く。
皮は焦げ目がつき、魚肉は焼けて少しだけピンク色に変化しプルっとしてきた。
レナはスマホを回しながら、生唾を飲みこんでいる。
だが、料理の本番はここからだ。
塩と黒胡椒を振りかけて……
「ここで、デトクシアの煮汁を加えます」
お玉で煮汁を沢山すくい、フィンウォーカーがつかるまで振りかけた。
フルーティーなデトクシアの香りが辺りに広がると同時に、フライパンの蓋をしめた。
「後はご飯が出来るのと同じくらいに取り出せば完成です!」
「OKっす! 次は盛り付けてテーブルの上に置いた時からまわすっす!」
レナと淳美の顔を見た。
すごく物欲しそうな顔をしている。
久しぶりに作った甲斐があったと、アキナは満足な気持ちになった。
◇
「お待たせしました! こちらがフィンウォーカーのデトクシア煮込みです!」
「まだ回してないっす。これからっすよ」
「ご、ごめん……」
使い捨ての皿と茶碗に盛りつけられた白米とフィンウォーカーのデトクシア煮込みを、レナが映しはじめた。
撮りながら立ち込める湯気とデトクシアのフルーティーな香りに、喉を何回も鳴らしている。
隣に座ってる淳美も同じようだ。
このまま箸をつけても問題ないのだが、もう少しだけ味を引き締めたい。
「食べる前をすこ~しだけ垂らすと、もっと美味しくなるんです」
カットしたレモンをゆっくりと絞る。 レモン汁が料理に滴り落ち、薄ピンク色に焼けた肉はつやつやと明るく輝き始めた。
「では、今から食べていきます。いただきます」
アキナがそう言うと、すぐさま淳美が箸を握った。
ぷりぷりの魚肉を口に入れた途端、ぱああと淳美の顔が輝く。
「淳美さん美味しい?」
「は、はい、おいぴーでしゅ」
恍惚の表情を浮かべながら、淳美はそう答えた。
その間も、淳美の箸を動かす手は止まらない。
「頑張った甲斐がありました! では次はご飯と一緒に食べてみてください」
フィンウォーカーがなくなってしまう前にご飯を手渡すと、淳美はご飯の上にフィンウォーカーの乗せて口に運んだ。。
咀嚼した瞬間、さらに淳美の表情が蕩ける。
「こ、これ最高! 炊きたてのご飯の甘味はィンウォーカーの濃厚な味わいを優しく包み込み込んで……う、うまい……これはほんとにうまいわ」
その言葉と共に淳美は再び箸を伸ばし、
今度は少し大きめにご飯と魚を一緒に口に入れた。
「プリっとした魚肉を噛むと、トロッとした魚の旨味が口の中に広がって……それにレモンの酸味も加わって……ああ、もうなんとも言えない! うますぎて食レポとか無理! もうただ食べる!」
(やっぱりこれはご飯と相性が良かったのね!)
地域にもよるが、異世界の主食は主にパンである。なので、米とフィンウォーカーを一緒に食べることはなかった。
異世界にいた頃、日本人であるアキナは、フィンウォーカーのデトクシア煮込みを含めて、大半の料理をずっと米と一緒に食べたいと思っていた。
今から、その夢が叶うかと思うと食欲の膨張が収まらなかった。
そういえば、パーティーリーダーだった当時の彼氏は数少ない米を主食にする地域の出身で、これも仲良くなるきっかけのひと――
「アキさん……カメラ止めていいっすか? ウチ、もう我慢できないっす」
涎を垂らしたレナが、物欲しそうな目で訪ねて来た。
「そうね。頂きましょうか」
昔を思い出し、思わず笑みを浮かべながらアキナもフィンウォーカーに箸をつけた。
事務的にスマホを構えているレナの方向を向き、アキナはいつものように痛々しいポーズをとった。
それが終わると、テーブルの上に用意した食材を1つ1つ紹介していく。
「まずはこちらフィンウォーカーです。ちょっと前に大変な事件がありましたんで知ってるかも知れませんけど、この魚、全身にすっごい猛毒を持っているんです。でも……」
深緑色で葉脈が金色に輝くハーブを手に取り、カメラに向かる。
「このデクトシアってハーブの煮汁にしばらく浸けるだけで簡単に毒抜きができちゃうんです」
先ほどの清流から汲んできた水でいっぱいになっているキャンプ用の鍋の中にデクトシアを沢山入れて、事前に作っておいた石のかまどの上に置き、焚き木に火を着けて沸騰するまで放置する。
「この間にフィンウォーカーを食べやすい大きさに切っていきます」
ナイフで内臓を全部取り出し、火が通りやすい大きさに切り分けていく。
全部切り分けたところで、ちょうど鍋が沸騰してきた。
かまどの上からテーブルに煮汁の入った鍋を移し、切り分けた分の魚肉を煮汁につける。
「デトクシアの煮汁は、猛毒を無効化するためだけじゃなくて、肉を柔らかくしてくれるんです。あと香りもつきます。つける時間は大きさにもよるんですけど、これ位ならだいたい30分くらいです。この時間暇になりますんでご飯の準備をします」
米をとぎ飯盒に移し、かまどの上に置く。
「30分経ちました! それでは次の準備を進めていきます!」
キャンプ用フライパンをかまどの上に置き、持参したオリーブオイルと薄くスライスしたニンニクを投入した。シャッという音とともに、ニンニクの芳ばしい香りがあたりに広がる。
「フライパンがほど良く温まってきましたね。ここでフィンウォーカーを入れて炒めます。」
緑色の皮と白い魚肉の切り身がフライパンに触れ、ジューという音が辺りに響く。
皮は焦げ目がつき、魚肉は焼けて少しだけピンク色に変化しプルっとしてきた。
レナはスマホを回しながら、生唾を飲みこんでいる。
だが、料理の本番はここからだ。
塩と黒胡椒を振りかけて……
「ここで、デトクシアの煮汁を加えます」
お玉で煮汁を沢山すくい、フィンウォーカーがつかるまで振りかけた。
フルーティーなデトクシアの香りが辺りに広がると同時に、フライパンの蓋をしめた。
「後はご飯が出来るのと同じくらいに取り出せば完成です!」
「OKっす! 次は盛り付けてテーブルの上に置いた時からまわすっす!」
レナと淳美の顔を見た。
すごく物欲しそうな顔をしている。
久しぶりに作った甲斐があったと、アキナは満足な気持ちになった。
◇
「お待たせしました! こちらがフィンウォーカーのデトクシア煮込みです!」
「まだ回してないっす。これからっすよ」
「ご、ごめん……」
使い捨ての皿と茶碗に盛りつけられた白米とフィンウォーカーのデトクシア煮込みを、レナが映しはじめた。
撮りながら立ち込める湯気とデトクシアのフルーティーな香りに、喉を何回も鳴らしている。
隣に座ってる淳美も同じようだ。
このまま箸をつけても問題ないのだが、もう少しだけ味を引き締めたい。
「食べる前をすこ~しだけ垂らすと、もっと美味しくなるんです」
カットしたレモンをゆっくりと絞る。 レモン汁が料理に滴り落ち、薄ピンク色に焼けた肉はつやつやと明るく輝き始めた。
「では、今から食べていきます。いただきます」
アキナがそう言うと、すぐさま淳美が箸を握った。
ぷりぷりの魚肉を口に入れた途端、ぱああと淳美の顔が輝く。
「淳美さん美味しい?」
「は、はい、おいぴーでしゅ」
恍惚の表情を浮かべながら、淳美はそう答えた。
その間も、淳美の箸を動かす手は止まらない。
「頑張った甲斐がありました! では次はご飯と一緒に食べてみてください」
フィンウォーカーがなくなってしまう前にご飯を手渡すと、淳美はご飯の上にフィンウォーカーの乗せて口に運んだ。。
咀嚼した瞬間、さらに淳美の表情が蕩ける。
「こ、これ最高! 炊きたてのご飯の甘味はィンウォーカーの濃厚な味わいを優しく包み込み込んで……う、うまい……これはほんとにうまいわ」
その言葉と共に淳美は再び箸を伸ばし、
今度は少し大きめにご飯と魚を一緒に口に入れた。
「プリっとした魚肉を噛むと、トロッとした魚の旨味が口の中に広がって……それにレモンの酸味も加わって……ああ、もうなんとも言えない! うますぎて食レポとか無理! もうただ食べる!」
(やっぱりこれはご飯と相性が良かったのね!)
地域にもよるが、異世界の主食は主にパンである。なので、米とフィンウォーカーを一緒に食べることはなかった。
異世界にいた頃、日本人であるアキナは、フィンウォーカーのデトクシア煮込みを含めて、大半の料理をずっと米と一緒に食べたいと思っていた。
今から、その夢が叶うかと思うと食欲の膨張が収まらなかった。
そういえば、パーティーリーダーだった当時の彼氏は数少ない米を主食にする地域の出身で、これも仲良くなるきっかけのひと――
「アキさん……カメラ止めていいっすか? ウチ、もう我慢できないっす」
涎を垂らしたレナが、物欲しそうな目で訪ねて来た。
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