9 / 51
9話 不測の事態が発生
しおりを挟む
1階層受付奥にあるモニター室。ここでは、ミニマム・ドレイクが持っている魔法投影機の映像をゴブリン達が監視して、ダンジョン内で配信者達の命に危険が及んでないかなどを常に確認している。最も知能が低いゴブリン達はエンドレス・ワイバーンの鱗とエサが貰えるという見返りでいう事を聞いているだけで、しなければいけない理由自体は理解していない。
異世界の監視カメラではなくこちらの世界の魔道具を使う理由はゴンザレス曰く、電気が必要な監視カメラより魔力があれば無尽蔵に使える魔道具の方がコスパが良いからとのことだ。
なお監視をする理由は、配信者の誰かが死んだりしたら、危険だと怖がって客足が減ってしまい収入も減少するので、絶対に死なない様したいからだと言っていた。
(バカじゃねーの。ダンジョンは危険で人が死ぬとこだろが)
モニター室で仕事をサボってスマホをいじりながら、アストラル・ジンは心の中で悪態を吐いた。
5か月ほど前、魔力の過剰蓄積により【生態系の迷宮】で異世界に通じる次元の穴が開いたという話をどこからか聞きつけてやってきたゴンザレスは、アストラル・ジンに勝負を挑んできた。
10数年振りに見るゴンザレスは鍛錬を怠っており、戦闘能力は大幅に低下していた。これならワンチャンで昔のリベンジができると思い戦いに応じた。しかし倒したと思い油断したところを死んだふりをしたゴンザレスに後頭部を鈍器で殴られ敗北した。
さらにゴンザレスは、それだけでは飽き足らず、倒れている中、倒れているアストラル・ジンの腰巻をとり、下半身が露出した姿を魔法投影機で撮影した。そしてばら撒かれたくなければ俺のいう事を聞けと脅してきたのである。ダンジョンのモンスターにすら己の存在すらも隠しているのに、こんなものをばら撒かれてはかなわない。
アストラル・ジンはゴンザレスのいう事を聞く以外の選択肢をとることができなかった。
(ああ、くそ)
ゴンザレスへの不満は日々募っていた。
卑劣な幻影紙をとられた事。
ダンジョンの支配者という立場から、大きく逸脱した行動を強いられている事。
それらも理由の一つであるが、それ以上に――
(クソ、ゴブリンやミニマム・ドレイクはちゃんとした見返りもらえてんのによ)
アストラル・ジンは元々土着の神であったが、人の信心が離れていったことでモンスター化し、現在は魔神という立場に治まっている。
元神なので食事も睡眠も必要としない。そのためゴンザレスから、あらゆる雑用と、責任を24時間、日給1000円で押し付けられていた。
魔神なので疲れは感じないはずなのに、何故か最近は胃の辺りが痛くなっている。
だが、ゴンザレスに逆らうことはできない。
魔神の裏日記 [@Jin_Underboss]
何であいつは商人の基本すらわかってないんだろう。重増し、水増し、そして呪いの石。真面目に商売しろって思う。#おばさん推し
なので、この様に×(旧:Twittew)の裏垢でうっぷんを晴らす事しかできなかった。
『おい、てめえ仕事サボって、なにいじってやがる』
『す、すいません』
ゴンザレスにこっちの言葉ですごまれ、慌てて腰巻にスマホをしまう。
『さっきからゴブリンがお前を呼んでるのが気づかねえのか?』
『ギイ! ギイ!』
『悪りい。1階層、12番のモニターね。分かった……これって』
ゴブリンの指差したモニターを見たアストラル・ジンは驚愕した。
『なんでこんな事が起こってんだ! 今すぐ止めてきます!』
『いや、現場には行かなくて良い。それよりも原因を調べて来い』
『なに言ってんだ! 人間に死なれたらアンタも困るんだろうが!』
人間の命など、どうでも良かった。
しかし1000年かけて作ったダンジョンの生態系が乱される事態は阻止したい。
その気持ちが、ゴンザレスへの恐怖を凌駕して声を荒げさせる。
『安心しろ。1階層には、さっき俺をいじめた、姉ちゃんがいるじゃねえか』
『はあ!?』
『なんだおめえ、俺と歳が同じぐれえだから、おばちゃんだって言いてえのか?』
『こんな時に何言ってんだ! ただの異世界のおばさんに何ができんだ!』
『お前、魔力の感知をしてねえのか?』
『次元の穴が開いているせいで乱れて上手くできねえよ! これ以上アンタの下らねえギャグには付き合いきれねえ! 俺は今から現場に行く!』
そう吐き捨てて、アストラル・ジンは壁の中に消えていった。
ダンジョンの真の支配者である彼は、ダンジョン内の壁や床の中を通り抜けて、短い時間で移動できる。
(でも、アキの方が現場には早くつくだろうな)
ゴンザレスは頭の中でそう呟き、覚えたばかりのパソコンで契約書を作り始めた。
異世界の監視カメラではなくこちらの世界の魔道具を使う理由はゴンザレス曰く、電気が必要な監視カメラより魔力があれば無尽蔵に使える魔道具の方がコスパが良いからとのことだ。
なお監視をする理由は、配信者の誰かが死んだりしたら、危険だと怖がって客足が減ってしまい収入も減少するので、絶対に死なない様したいからだと言っていた。
(バカじゃねーの。ダンジョンは危険で人が死ぬとこだろが)
モニター室で仕事をサボってスマホをいじりながら、アストラル・ジンは心の中で悪態を吐いた。
5か月ほど前、魔力の過剰蓄積により【生態系の迷宮】で異世界に通じる次元の穴が開いたという話をどこからか聞きつけてやってきたゴンザレスは、アストラル・ジンに勝負を挑んできた。
10数年振りに見るゴンザレスは鍛錬を怠っており、戦闘能力は大幅に低下していた。これならワンチャンで昔のリベンジができると思い戦いに応じた。しかし倒したと思い油断したところを死んだふりをしたゴンザレスに後頭部を鈍器で殴られ敗北した。
さらにゴンザレスは、それだけでは飽き足らず、倒れている中、倒れているアストラル・ジンの腰巻をとり、下半身が露出した姿を魔法投影機で撮影した。そしてばら撒かれたくなければ俺のいう事を聞けと脅してきたのである。ダンジョンのモンスターにすら己の存在すらも隠しているのに、こんなものをばら撒かれてはかなわない。
アストラル・ジンはゴンザレスのいう事を聞く以外の選択肢をとることができなかった。
(ああ、くそ)
ゴンザレスへの不満は日々募っていた。
卑劣な幻影紙をとられた事。
ダンジョンの支配者という立場から、大きく逸脱した行動を強いられている事。
それらも理由の一つであるが、それ以上に――
(クソ、ゴブリンやミニマム・ドレイクはちゃんとした見返りもらえてんのによ)
アストラル・ジンは元々土着の神であったが、人の信心が離れていったことでモンスター化し、現在は魔神という立場に治まっている。
元神なので食事も睡眠も必要としない。そのためゴンザレスから、あらゆる雑用と、責任を24時間、日給1000円で押し付けられていた。
魔神なので疲れは感じないはずなのに、何故か最近は胃の辺りが痛くなっている。
だが、ゴンザレスに逆らうことはできない。
魔神の裏日記 [@Jin_Underboss]
何であいつは商人の基本すらわかってないんだろう。重増し、水増し、そして呪いの石。真面目に商売しろって思う。#おばさん推し
なので、この様に×(旧:Twittew)の裏垢でうっぷんを晴らす事しかできなかった。
『おい、てめえ仕事サボって、なにいじってやがる』
『す、すいません』
ゴンザレスにこっちの言葉ですごまれ、慌てて腰巻にスマホをしまう。
『さっきからゴブリンがお前を呼んでるのが気づかねえのか?』
『ギイ! ギイ!』
『悪りい。1階層、12番のモニターね。分かった……これって』
ゴブリンの指差したモニターを見たアストラル・ジンは驚愕した。
『なんでこんな事が起こってんだ! 今すぐ止めてきます!』
『いや、現場には行かなくて良い。それよりも原因を調べて来い』
『なに言ってんだ! 人間に死なれたらアンタも困るんだろうが!』
人間の命など、どうでも良かった。
しかし1000年かけて作ったダンジョンの生態系が乱される事態は阻止したい。
その気持ちが、ゴンザレスへの恐怖を凌駕して声を荒げさせる。
『安心しろ。1階層には、さっき俺をいじめた、姉ちゃんがいるじゃねえか』
『はあ!?』
『なんだおめえ、俺と歳が同じぐれえだから、おばちゃんだって言いてえのか?』
『こんな時に何言ってんだ! ただの異世界のおばさんに何ができんだ!』
『お前、魔力の感知をしてねえのか?』
『次元の穴が開いているせいで乱れて上手くできねえよ! これ以上アンタの下らねえギャグには付き合いきれねえ! 俺は今から現場に行く!』
そう吐き捨てて、アストラル・ジンは壁の中に消えていった。
ダンジョンの真の支配者である彼は、ダンジョン内の壁や床の中を通り抜けて、短い時間で移動できる。
(でも、アキの方が現場には早くつくだろうな)
ゴンザレスは頭の中でそう呟き、覚えたばかりのパソコンで契約書を作り始めた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

配信の片隅で無双していた謎の大剣豪、最終奥義レベルを連発する美少女だと話題に
菊池 快晴
ファンタジー
配信の片隅で無双していた謎の大剣豪が美少女で、うっかり最凶剣術を披露しすぎたところ、どうやらヤバすぎると話題に
謎の大剣豪こと宮本椿姫は、叔父の死をきっかけに岡山の集落から都内に引っ越しをしてきた。
宮本流を世間に広める為、己の研鑽の為にダンジョンで籠っていると、いつのまにか掲示板で話題となる。
「配信の片隅で無双している大剣豪がいるんだが」
宮本椿姫は相棒と共に配信を始め、徐々に知名度があがり、その剣技を世に知らしめていく。
これは、謎の大剣豪こと宮本椿姫が、ダンジョンを通じて世界に衝撃を与えていく――ちょっと百合の雰囲気もあるお話です。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
推しと行く魔法士学園入学旅行~日本で手に入れた辞典は、異世界の最強アイテムでした~
ことのはおり
ファンタジー
渡会 霧(わたらい きり)。36歳。オタク。親ガチャハズレの悲惨な生い立ち。
幸薄き彼女が手にした、一冊の辞典。
それは異世界への、特別招待状。
それは推しと一緒にいられる、ミラクルな魔法アイテム。
それは世界を救済する力を秘めた、最強の武器。
本棚を抜けた先は、物語の中の世界――そこからすべてが、始まる。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる