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第十二章 ナヴィとグローリア案内所

218.好機

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 俺らはアギル、ダリアという少女に出会ってから彼女らが呼び出したダンジョン内のモンスターと戦っていた。

「キェェェェ!」

「「きゃ!!」」

「ネリウル、サナ大丈夫か!?」

「え、えぇ」
「サナも大丈夫ですわ」

「おいおいクオード、俺らも心配しろ、よ!」

「ほんとだよ! シャギーさんも僕ももうボロボロなのに……」

「何言ってんだアヴィロ、シャギー! 男のお前らはまだぴんぴんしてんじゃねーか」

 ダンジョン内から出てきたモンスターは聞いていたレベルよりも大幅に強くなっていた。ただのゴブリンには角が生え武器を持ち、スライムは粘度と強度が上がりちょっとやそっとじゃ倒せない。そんなモンスターが数十、数百出てきていたんだ。

「それにしてもクオード、なかなかやばいですわ……サナの魔法も効き目が良くない気がします」

「あぁ、明らかにサナが掛けた防御ダウンの補助魔法の幅が狭い……」

「くっそ、こんなの普段なら一撃で倒せていたのに……」

「あのシャギーの大剣でも一撃で倒せないなんて……」

 くそ、これじゃジリ貧だ。

「大丈夫ですよクオードさん!」

「アヴィロ……」

「この中で一番弱い僕でもちゃんとこのモンスターを倒せてますから。なんだかんだでみんなも余裕を持って戦えています、それに……」

「ん?」

「みんな分かってます。このモンスターらを倒すのに全力を出しちゃいけないって」

「……」

「見てください、さっきは不意を突かれて攻撃を受けたサナさん、ネリウルさんもすぐに体勢を立て直して攻勢に転じています。それにサナさんも下級魔法しか使っていないですよね」

「あ、あぁ確かにそうだな」

「それにシャギーさんもさっきから振りが小ぶりでなるべくスタミナを使わないようにモンスターと戦っています」

「シャギーも?」

 俺だけじゃなかった、あいつらも分かっていたんだ。強化されたモンスターでも俺たちレベルならそこまでの力を出さなくてもなんとか戦っていけるってことを。俺も力を温存しながらあいつらの様子を見てみた。

 だがそうじゃなかった。

「いや、違うぞアヴィロ」

「へ?」

「あいつらの目はモンスターを見ていない……」

「え?」

「あいつらはモンスターと戦いながらあの女の子たちを見ている」

「確かにそうですね……」

 あいつらが感じていたことはそれだけじゃなかった。ここで力を無理にでも、多少怪我をしても温存しなければならない。

 そう思わせるほどあの二人の存在が俺たちの警戒心をぐっと強めていたんだ。


 ここで力を使うとやばい。

 あの二人との戦闘までは耐えなきゃ。

 力を最大限まで溜める。


 そんな顔をしながらあいつらは戦っていた。

「アヴィロ、お前の力も残しておけ。<バーサーク>の準備だ」

「……それは分かってますけど、あんまり使いたくないんだよなぁ。コントロールできないし」

「いや、しなくていい」

「え……?」

「あの女の子二人と戦う時はお前中心で戦うことになるだろう」

「……分かりました。ではそれまではなるべく僕を守って下さいね。力溜めるの大変なんですから」

「分かってる」

「二人とも喋ってないで早く助けてよー!」
「そっちに行きましたわ! 気を付けてくださいませ!」

「!? クオードさん見てください!」

「どうした」

「ダンジョンの入り口です!」

「モンスターが出てきてない……? ということは……」

「えぇ、終わりが見えてきていますよ! さっさと倒しちゃいましょ!」

「あぁ!」

 とはいえあいつらは俺らを倒したいんじゃないのか?

 モンスターと戦っている途中の俺らを狙うのが賢いとは思うのだが、それをしないのを見ると意外と律儀なところがあるやつらなのか。 

 っていや、そんなこと考えている場合じゃない。とにかくあと数体一気に倒す!

「はぁぁ!」

「ねぇどーしよーアギル! せっかくうちらが手塩に掛けて育てたモンスターが全部やられちゃうよぉ」
「そうですね……また一からやり直しをしなければ。ディノール様に何と申し上げればいいか……」

「ちっ、余裕かましやがって! お前ら! 一気に行くぞ!!」

「「「「おぉ!」」」」

 こうして数時間戦い続けていた大量のモンスターとの戦いも終わりが見えてきたの気づいた俺らは、一気に残りのモンスターを片付けた。

「よし、サナので最後だ!」

「はい、これでおしまいですわ! 食らいなさい!」
<ファイアーボー……>

 俺らが最後のモンスターを倒そうと魔法を放つサナを見て安堵した、その瞬間だった。

「……え」

「ふふ、最後まで唱えないんだね! ざーんねん」

 サナは自分の腹部をゆっくりと見た。

「う……そ」

 サナの腹部にはダリアという片方の少女の龍の手が背後から貫通していた。

「皆さん。すみ、ま、せん……」

「「「サナァァァ!!」」」

「そう、誰も戦闘中に手を出さないなんて言っていませんよ」

「「「!?」」」

 そしてもう片方の少女アギルの龍の手は……。

「が、かはっ。まさか、この、ときを、ね、らって」

「おい、ネリウル……お前も……嘘だろ」

 奴らは狙っていたんだ。途中まで何も手を出さずモンスターの戦いに集中していい雰囲気を作り出し、その戦いが終わり一息つけるその瞬間を。

「うーんやっぱり女の人の感触はいいよねぇアギル!」
「私にそんな悪趣味はありません。全てはディノール様のために」

「ネリウル……」
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