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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
206.魔法の仕組み
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「さて、今日鍛えんのは魔法だ」
「魔法? 上位の魔法を使えるようにするとか、ですか?」
ナヴィは首を傾げながらヴィオネットに質問した。
「それはずっと後の話だ。それにレミアと俺の獣人族のドラゴンと、ヒューマンのお前とでは使用できる魔法の系統があまりにも違いすぎる。まぁヒューマンの中でもお前は相当特殊な部類だけどな」
「ま、まぁ、確かに……」
「ナヴィさん、攻撃魔法の方は……」
「やめてレミア! その憐れむような目であたしを見ないでちょうだい!」
「あはは。すみません」
「間違っちゃいねーわな。攻撃魔法に関していえばお前は足手まといの雑魚だ」
「ヴィオネさんまで……」
肩を落としため息を吐くナヴィ。
「ということは姉さま。今日は魔法の仕組みそのものについて……ですね?」
「あぁ。レミアはずっと昔にやった内容になってしまうんだが大丈夫か?」
「もちろんです。復習のつもりで一から学んでいきます」
「魔法の仕組み? それならあたしがこの世界に来てから……あ、本でたくさん読みましたけど」
「その本の内容は?」
「そうですね。例えば詠唱であったりだとかその魔法がもたらす効果であったりだとか、各属性の関係図だったりとかですね。どの本もかなり詳細に書かれていましたけど……」
「ふむ。まぁそれらしいことは書かれているのは当然だ」
「百聞は一見に如かず……ナヴィ。これを見ろ」
<ファイアーボール!>
ヴィオネットは魔力を練り右手に小さな炎の玉を出した。
「うわ、どうしたんですか急に」
「これはお前らがよく見る魔法だな」
「炎属性の下級呪文ですからね」
「じゃあこれはどうだ?」
「ん? あれ、なんか空気が凝縮されてる……?」
ヴィオネットは左手を広げ右手のファイアーボールに比較にならないほど大きな炎の玉を発生させた。
「すごい……けどこれって違う魔法ですよね? 中級呪文の<バーニングボール>じゃ……」
「いえ、ナヴィさん。違います。あれが姉さまのファイアーボールです」
ナヴィは目を丸くした。
「うそ、こんな巨大なファイアーボール見たの。あたしは初めてよ……」
「嘘じゃねぇぞ。これは両方ともれっきとしたファイアーボールだ」
「と、ということは練りこんでいた魔力量が違った……とかですか」
「いや、同じだ」
「ど、どうしてそこまで違うものになるんですか……?」
そのナヴィの質問に対し頭を抱えたヴィオネット。
「はぁ、いるんだよな。持ってる才能だけ強引になんでも解決できちまうやつってのが……」
「姉さま。姉さまが言わないでください」
「……うっ」
レミアの突っ込みにヴィオネットの口がもごついた。
「ナヴィさん。私がお答えします。姉さまいいですよね」
「あぁ頼んだ」
「レミアは知ってるの?」
「はい。昔習ったことですから。ナヴィさん。魔法を使うのに基本的に『必要になるもの』はご存じですか……?」
「え? そりゃ魔力でしょ。あとは魔法陣の形成に、慣れるまでは詠唱。このくらいかしら」
「大方はその通りです。では質問を変えます。魔法を使う時にあったほうが良いものって何だと思いますか?」
「あった方がいいもの?」
「はい、先ほど姉さまのファイアーボール。詠唱は省いていましたが同じ魔法陣。同じ魔力量であそこまで
大きさが変わっていましたよね」
「確かに。両方とも必要なものは揃っていた。ってことはそのあった方がいいものってのがあるかないかの違いってことかしら?」
「そのあった方がいいものとはなにか。それが魔法の仕組みの肝になります」
「そういえば先ほどの姉さまの左手のファイアーボールを生成するとき何か気づいていませんでしたか?」
「あ、たしか……二個目の方は出来上がる前に周りにあった空気がヴィオネさんの左手に凝縮されていった後に発生していたような……」
「ほう、よく見てんだなナヴィ」
「ヴィオネさんはそれを意図的にやっていたということですか?」
「あぁ、まぁ普段はあんなあからさまな見せ方はしないがな」
「ナヴィさん。物が燃えるための条件ってご存じですか?」
「え? 燃えるもの、発火点以上の温度、後は……酸素……あ」
そうか……二回目のあの空気が凝縮されていくのは意図的にそれを集めてから繰り出していたってことね。
「気づきましたか?」
「酸素が燃えるイメージを魔法を繰り出す瞬間に紐づけしていた。使用する魔法の仕組みを理解してイメージする力……ということでしょうか」
その言葉を聞いたヴィオネットが待っていたかのようににやりと笑う。
「ふ。意外と気づくのが早かったな。まぁそんな感じだ。基本的に魔法は魔力を練りこんだ量で威力が決まる。だがそれはあくまでも数字的なものだ」
「数字的……?」
「このくらいの魔力消費ならこのくらいの大きさになるっていう比例関係のようなものだ。だが魔法っつーのはそんな単純なもんじゃねぇ。それなら才能が無くても魔力量さえあればいくらでも強くなれちまうからな」
「確かに……ということはその魔法を使うにあたってのイメージを深めること。それが普通の魔法の一歩先に進む力ってことですかね」
「ナヴィさん。もうそこまで理解できたんですね……」
「あぁ、その通りだナヴィ。そして。それがこれからのお前の補助魔法をさらに強くする」
「なるほど。なんか色々と試してみたくなってきました!」
「魔法? 上位の魔法を使えるようにするとか、ですか?」
ナヴィは首を傾げながらヴィオネットに質問した。
「それはずっと後の話だ。それにレミアと俺の獣人族のドラゴンと、ヒューマンのお前とでは使用できる魔法の系統があまりにも違いすぎる。まぁヒューマンの中でもお前は相当特殊な部類だけどな」
「ま、まぁ、確かに……」
「ナヴィさん、攻撃魔法の方は……」
「やめてレミア! その憐れむような目であたしを見ないでちょうだい!」
「あはは。すみません」
「間違っちゃいねーわな。攻撃魔法に関していえばお前は足手まといの雑魚だ」
「ヴィオネさんまで……」
肩を落としため息を吐くナヴィ。
「ということは姉さま。今日は魔法の仕組みそのものについて……ですね?」
「あぁ。レミアはずっと昔にやった内容になってしまうんだが大丈夫か?」
「もちろんです。復習のつもりで一から学んでいきます」
「魔法の仕組み? それならあたしがこの世界に来てから……あ、本でたくさん読みましたけど」
「その本の内容は?」
「そうですね。例えば詠唱であったりだとかその魔法がもたらす効果であったりだとか、各属性の関係図だったりとかですね。どの本もかなり詳細に書かれていましたけど……」
「ふむ。まぁそれらしいことは書かれているのは当然だ」
「百聞は一見に如かず……ナヴィ。これを見ろ」
<ファイアーボール!>
ヴィオネットは魔力を練り右手に小さな炎の玉を出した。
「うわ、どうしたんですか急に」
「これはお前らがよく見る魔法だな」
「炎属性の下級呪文ですからね」
「じゃあこれはどうだ?」
「ん? あれ、なんか空気が凝縮されてる……?」
ヴィオネットは左手を広げ右手のファイアーボールに比較にならないほど大きな炎の玉を発生させた。
「すごい……けどこれって違う魔法ですよね? 中級呪文の<バーニングボール>じゃ……」
「いえ、ナヴィさん。違います。あれが姉さまのファイアーボールです」
ナヴィは目を丸くした。
「うそ、こんな巨大なファイアーボール見たの。あたしは初めてよ……」
「嘘じゃねぇぞ。これは両方ともれっきとしたファイアーボールだ」
「と、ということは練りこんでいた魔力量が違った……とかですか」
「いや、同じだ」
「ど、どうしてそこまで違うものになるんですか……?」
そのナヴィの質問に対し頭を抱えたヴィオネット。
「はぁ、いるんだよな。持ってる才能だけ強引になんでも解決できちまうやつってのが……」
「姉さま。姉さまが言わないでください」
「……うっ」
レミアの突っ込みにヴィオネットの口がもごついた。
「ナヴィさん。私がお答えします。姉さまいいですよね」
「あぁ頼んだ」
「レミアは知ってるの?」
「はい。昔習ったことですから。ナヴィさん。魔法を使うのに基本的に『必要になるもの』はご存じですか……?」
「え? そりゃ魔力でしょ。あとは魔法陣の形成に、慣れるまでは詠唱。このくらいかしら」
「大方はその通りです。では質問を変えます。魔法を使う時にあったほうが良いものって何だと思いますか?」
「あった方がいいもの?」
「はい、先ほど姉さまのファイアーボール。詠唱は省いていましたが同じ魔法陣。同じ魔力量であそこまで
大きさが変わっていましたよね」
「確かに。両方とも必要なものは揃っていた。ってことはそのあった方がいいものってのがあるかないかの違いってことかしら?」
「そのあった方がいいものとはなにか。それが魔法の仕組みの肝になります」
「そういえば先ほどの姉さまの左手のファイアーボールを生成するとき何か気づいていませんでしたか?」
「あ、たしか……二個目の方は出来上がる前に周りにあった空気がヴィオネさんの左手に凝縮されていった後に発生していたような……」
「ほう、よく見てんだなナヴィ」
「ヴィオネさんはそれを意図的にやっていたということですか?」
「あぁ、まぁ普段はあんなあからさまな見せ方はしないがな」
「ナヴィさん。物が燃えるための条件ってご存じですか?」
「え? 燃えるもの、発火点以上の温度、後は……酸素……あ」
そうか……二回目のあの空気が凝縮されていくのは意図的にそれを集めてから繰り出していたってことね。
「気づきましたか?」
「酸素が燃えるイメージを魔法を繰り出す瞬間に紐づけしていた。使用する魔法の仕組みを理解してイメージする力……ということでしょうか」
その言葉を聞いたヴィオネットが待っていたかのようににやりと笑う。
「ふ。意外と気づくのが早かったな。まぁそんな感じだ。基本的に魔法は魔力を練りこんだ量で威力が決まる。だがそれはあくまでも数字的なものだ」
「数字的……?」
「このくらいの魔力消費ならこのくらいの大きさになるっていう比例関係のようなものだ。だが魔法っつーのはそんな単純なもんじゃねぇ。それなら才能が無くても魔力量さえあればいくらでも強くなれちまうからな」
「確かに……ということはその魔法を使うにあたってのイメージを深めること。それが普通の魔法の一歩先に進む力ってことですかね」
「ナヴィさん。もうそこまで理解できたんですね……」
「あぁ、その通りだナヴィ。そして。それがこれからのお前の補助魔法をさらに強くする」
「なるほど。なんか色々と試してみたくなってきました!」
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