上 下
175 / 262
第十一章 王都公認案内人 ナヴィ・マクレガン編

175.時は来た

しおりを挟む
「ふぅ。さぁ続きを始めよう」

 魔王ディアボリクスの表情が先程の憤怒の表情から元に戻る。

「テラクレウス。続きを」

「はっこれでそれぞれの報告は終わったな。ではここからが大事だ、フィフスシート、アビゲイル、奴らの動向の報告を」

「はい、奴らはどうも我らが動き始める前から二回目の大規模侵攻の立案をしている模様です」

「何だと……早すぎないか」

 ディアボリクスの眉がぴくりと動く。

「……はい。どうやらディアボリクス様の前回受けた傷や、我らの城の陣形全体が完全に修復する前にもう一度大規模侵攻を仕掛けると計画しているようです」

「なるほど。なんと愚かな、それでそれを始めるのはいつ頃だと」

「およそ二年後だと……」

「ふふふ。地に足がついていないのはお前らの方だぞ……」

「その通りでございます。いかがいたしますか、ディアボリクス様」

「俺の傷が治るのは後一年といったところだ、欠けたサーティーンプリンスターの穴もお前たちがいれば問題ない。今の奴らのとの戦力の差は火を見るよりも明らかだ」

「はい」

「前回は奴らの急襲より始まった戦争ではあったが、今回はこちらから仕掛けてやろうではないか、テラクレウス」

「はっ!」

「今から一年後計画通り『ブラッディフェスト』を開始する。各自準備を迅速に行うように。その監督を全てをお前に任せるぞ」

「はっ。お任せを」

「ふふふ。腐ったこの世界の家畜どもよ。見た目や思想、生き方や種族によってその恐怖からこの世界の果てへと捨てられた我々が、今度は貴様らすべてを駆逐し、世界全土に血の雨を降らせてやる」
「我が親愛なる神官、サーティーンプリンスターよ、時は来た!」

 ディアボリクスは勢いよく椅子から立ち上がり、両手を大きく広げた。

「我々は自由だ! 生きる場所も、死ぬ場所も! 平和ボケをした奴らに教えてやろう……我らがいかにこの世界を統べるにふさわしい存在かということを。さぁ共に戦う我が友たちよ」

「世界を変えるぞ」


「「「はっ! 我々の命、常にディアボリクス様と共に!!」」」

「会議は以上だ。それではあとは頼んだ、俺は少し眠る」

 ディアボリクスは奥の部屋へと戻っていった。

「ではここからの我々の動きを話していこう」

「「「はっテラクレウス様」」」




 私たちがミモザたちに襲われてから二週間ほどが経った。

「ちょっお姉ちゃん、もう出るの!?」

「あ、おはようエンフィー。えぇ、今日は早いの」

 お姉ちゃんの身体は回復魔法のおかげで一週間ほどで良くなった。

「おはようございますなのです! ナヴィさん!」

「えぇおはようアミス。今日もよろしくね!」

「はいなのです! さぁエンフィーさん今日もバリバリ働きますよー!」

「あ、は、はい」

 アミスさんはこんな感じだしダンジョンでも大変だったけど、いざ働いてみたらすごく優秀なガイドでした。特に事務処理系の仕事はスーザンさんに鍛えられてるだけあって私の数倍速い。

 お姉ちゃんが王都公認の案内人になってからあわただしかった店内は、アミスさんが加わったことによってだいぶ落ち着きを取り戻しました。

 とはいえそれでも今はこっちのお姉ちゃんの方の店で全ての冒険者の案内をしているけどね。流石に前みたいに二店舗での運営は難しいみたいです。

「じゃあ二人とも、あたし言ってくるから」

「はい! 行ってらっしゃいなのですー!」
「うん、気を付けて」

「すみませーん」

 ナヴィが案内所を出てすぐに冒険者が入ってきた。

「あ、コイル様、いらっしゃいませ! 昨日はダンジョン攻略お疲れさまでした!」

「あはは、僕は何もしてなんですよ、あ、これ、報告書です」

「ありがとうございます! 確かに……昨日の今日ですけどほとんど怪我みたいなものもしてないですね……」

「はい、ダンジョン自体の推奨レベルも僕のレベルで行くにはかなり難しかったみたいなのですが」

「この資料だけ見ると、コイル様の言う通り一筋縄ではいかないダンジョンですよね……」

「そうなんです。実は本当に僕は何もしてなくて……」

「……」

「エンフィーさん。最近ナヴィさん何かありましたか?」

「へ? お姉ちゃんですか」

「はい、確かにいつも通り丁寧なマッピングとガイドで相変わらずすごく助かっていたのですが、モンスターとの戦闘になると目の色を変えて激しく戦闘に参加しようとするんです」

「え……」

「なんだろう、いつもは補助魔法中心の戦い方ですごくやりやすかったのですが、使う魔法は全て攻撃魔法……まるで僕の力は必要ないって言っているかのような戦い方で……」

「そう……ですか」

 エンフィーはコイルの前で悲しげな表情を見せる。

「あ、別にいやとかじゃないんですよ。お目当ての品は見つかったし、仕事としても全うしてくれていたので不満とかではないのですが、なにか焦っているように見えたんです。冒険者のように、強くならなきゃって」

「……なるほど、やっぱりお姉ちゃんは」

「深くは聞きません。いいか悪いかも僕にはわかりませんしね。ただ、いつものナヴィさんらしくない。そうは思いました」

「ありがとうございます。コイル様。私からもお姉ちゃんに少し話してみます」

「はい。ごめんなさい変なこと言ってしまって……」

「あ、いえ、お気になさらず!」

 その時、ポストの中を見ていたアミスからエンフィーを呼ぶ声が聞こえた。

「エンフィーさーん! ナヴィさん宛の郵便が入っていたのです!」

「お姉ちゃん宛? 誰だろう」

「あ、先生……本部からです! 案内所本部!」

「本部……?」 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪意か、善意か、破滅か

野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。 婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、 悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。 その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 〜強面、筋骨隆々、とても強い。 でもとっても優しい男が異世界でのんびり暮らすお話〜

かむら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞にて、ジョブ・スキル賞受賞しました!】  身長190センチ、筋骨隆々、彫りの深い強面という見た目をした男、舘野秀治(たてのしゅうじ)は、ある日、目を覚ますと、見知らぬ土地に降り立っていた。  そこは魔物や魔法が存在している異世界で、元の世界に帰る方法も分からず、行く当ても無い秀治は、偶然出会った者達に勧められ、ある冒険者ギルドで働くことになった。  これはそんな秀治と仲間達による、のんびりほのぼのとした異世界生活のお話。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン
ファンタジー
前世の兄と共に異世界転生したセリナ。子どもの頃に親を失い、兄のシオンと二人で生きていくため、セリナは男装し「セリ」と名乗るように。それから十年、セリとシオンは、仲間を集め冒険者パーティを組んでいた。 これは、異世界転生した女の子がお仕事頑張ったり、恋をして性別カミングアウトのタイミングにモダモダしたりしながら過ごす、ありふれた毎日のお話。 ※日常ほのぼの?系のお話を目指しています。 ※同性愛表現があります。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

処理中です...