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第十一章 王都公認案内人 ナヴィ・マクレガン編
173.もう一人の刺客
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「ミモザ、そこまでだ」
「だ、誰だ!?」
ミモザの横に新手の刺客が現れた。
「黒いマントに深く被ったフード……それに二メートル近い巨体……なんなの?」
エンフィーは戦意を失ったナヴィの身体を摩りながらもその刺客を凝視した。
「そ、そんな、ど、どうしてあなた様が……」
ミモザが驚いてる……? あなた様ってことはやはり魔王軍の手先。だけど、魔力はそこまで感じない。さっきのミモザほどじゃないのに……なんであそこまで。
「何をしている、もう集合の時間だぞいつまでここでちんたらしているつもりだ」
「も、申し訳ございません。今すぐ、今すぐにこ奴らを……」
その会話をしている最中にナヴィは立ち上がった。
「あ、あんたはいったい何なの……ミモザの味方なの」
そう話しかけられた刺客はナヴィの目の前に瞬間移動をし、ナヴィの全身を舐めるように見た。
「い、いきなり目の前に!?」
「ふむ……ミモザ、この娘は……」
「はっ。魔王ディアボリクス様がおっしゃっていたマクレガンの」
「ふふ、そうか、お前があのマクレガンの……」
「……だったら何よ」
「このボス部屋の崩壊具合にお前のボロボロな体。ふむ魔王様の用心深さもここまで来ると病的だな」
「どういうこと……」
その刺客は上から見下すようにナヴィを睨みつけた。
「調べに来る必要もなかったってことだ」
「……っ!?」
な、なにこいつの目……ミモザとはまた違う、威圧的で鋭い目眼光……体が……う、動かない。そ、それに。
もう、この瞬間に分かった。あたしじゃこいつの足元のも及ばない。
「大丈夫か? 震えているぞ娘」
「あ、ああ、あああ」
駄目、体の震えが止まらない。こわい。
怖い怖い怖い怖い怖い。このままだと殺される。
「お、お姉ちゃん!!」
「はっ! あ、あたしは……」
呼吸をするのも忘れるほど硬直していたナヴィがエンフィーの呼びかけにより正気に戻った。
その姿を見た刺客が先程までの眼光から柔らかい目に変わり、ナヴィの頭を撫でる。
「ふふ、安心しろ。別にお前らに興味はない。もちろんここで殺すことはない」
「な、ディノール様!! それはどういう……」
「ミモザ、むしろお前はこんな娘一人を殺すのにどれだけの時間を要するのだ」
「……そ、それは……」
「言い訳はいらん。それはお前の油断と慢心の他ならない、城に戻ったら覚悟しておけ」
「……し、しかし!!」
「ほう、お前ごときの身分でフォースシートの俺に指図するのか? イレブンスシート。ミモザ・フリューゲル」
「フォ、フォースシート……?」
ミモザが十一番目で、このディノールってやつが、よ四番……!? それに今の魔力の爆発的な上がり方、ミモザの比じゃない。
「ひっ、そんな私は……」
「話は後で聞く。城に戻るぞ」
「は、はっ!」
「娘」
ミモザの元に歩くディノールは一度足を止め、ナヴィに話しかけた。
「な、なに」
「忠告だ。祖父の後を追うのはやめておけ。お前の今の実力じゃトニー・マクレガンの足元にも及ばない」
「なんであなたがおじいちゃんを……。それにあなたには関係ない……」
「……まぁいい。今回は見逃すが、次俺の目の前に現れたら必ず殺す」
「……」
「ではさらばだナヴィ・マクレガンよ」
ミモザとディノールはエンフィーとナヴィの前から黒い炎とともに消えていった。
「はぁはぁはぁ……うっ」
「お姉ちゃん!!」
ディノールたちが消えていった瞬間、ナヴィは崩れるように倒れていった。
「エ、エンフィーさん、ナヴィさん!」
岩陰に隠れていたアミスも合流する。
「ごめんエンフィーあたし、二人を守れなかった」
エンフィーはナヴィを抱きかかえる。
「そんなことない、私もアミスさんも無傷なのよ。お姉ちゃんがミモザの攻撃から全部守ってくれたんだよ」
「……あ、あはは、そ、そっか。ならよかった……」
「それより今は安静にして、かなりの大怪我だよ……」
<ヒール!>
「くっ……簡単なこれで傷は治せるけど、一つ一つの傷が深すぎる……」
「ありがとうエンフィー。とりあえず村まで帰れれば大丈夫だから……色々と報告もしないといけないしね」
「う、うん。じゃあもう少し休憩したら戻ろうか……」
こうして三人は小休止をした後ダンジョンの出口へと向かっていった。
ナヴィは歩くのがやっとの状態でアミスとエンフィーの肩を借りながら歩いていた。
「はぁはぁはぁ」
「お、お姉ちゃん。もう少し休憩していく?」
「ううん。大丈夫……大丈夫」
「体、震えてるけど……」
「あ、足ががくがくでね、心配かけさせてごめんね」
魔王軍幹部のサーティーンプリンスター。イレブンスシートのミモザにフォースシートのディノール。
ものすごい力だった。正直舐めていた、案内人のあたしでも少しは対抗できるって……でもそんなこと一ミリもなかった。
ミモザの攻撃はなんとか防げてはいたけどあの最後の黒い禍々しいオーラ。本来の力はあっちだ。それにディノール……あの眼光を見た瞬間、あたしの震えが止まらなかった。
きっとあいつもミモザみたいに力を隠している状態ではあるはずだけど……。
そんなディノールが四番目。あれよりも更に強いのが魔王を含めて四体。
おじいちゃんはそんなやつらと戦っていたの……?
それに比べてあたしは
あたしは
あたしはなんて無力なんだ……。
「ぐすっ……だめだ。こんなんじゃ。あたしは何もできなかった」
「お姉ちゃん……」
「ナヴィさん……」
エンフィーとアミスはそれ以上声を掛けることはなくナヴィの背中を摩りながらゆっくりとした足取りで村へと帰っていった。
「だ、誰だ!?」
ミモザの横に新手の刺客が現れた。
「黒いマントに深く被ったフード……それに二メートル近い巨体……なんなの?」
エンフィーは戦意を失ったナヴィの身体を摩りながらもその刺客を凝視した。
「そ、そんな、ど、どうしてあなた様が……」
ミモザが驚いてる……? あなた様ってことはやはり魔王軍の手先。だけど、魔力はそこまで感じない。さっきのミモザほどじゃないのに……なんであそこまで。
「何をしている、もう集合の時間だぞいつまでここでちんたらしているつもりだ」
「も、申し訳ございません。今すぐ、今すぐにこ奴らを……」
その会話をしている最中にナヴィは立ち上がった。
「あ、あんたはいったい何なの……ミモザの味方なの」
そう話しかけられた刺客はナヴィの目の前に瞬間移動をし、ナヴィの全身を舐めるように見た。
「い、いきなり目の前に!?」
「ふむ……ミモザ、この娘は……」
「はっ。魔王ディアボリクス様がおっしゃっていたマクレガンの」
「ふふ、そうか、お前があのマクレガンの……」
「……だったら何よ」
「このボス部屋の崩壊具合にお前のボロボロな体。ふむ魔王様の用心深さもここまで来ると病的だな」
「どういうこと……」
その刺客は上から見下すようにナヴィを睨みつけた。
「調べに来る必要もなかったってことだ」
「……っ!?」
な、なにこいつの目……ミモザとはまた違う、威圧的で鋭い目眼光……体が……う、動かない。そ、それに。
もう、この瞬間に分かった。あたしじゃこいつの足元のも及ばない。
「大丈夫か? 震えているぞ娘」
「あ、ああ、あああ」
駄目、体の震えが止まらない。こわい。
怖い怖い怖い怖い怖い。このままだと殺される。
「お、お姉ちゃん!!」
「はっ! あ、あたしは……」
呼吸をするのも忘れるほど硬直していたナヴィがエンフィーの呼びかけにより正気に戻った。
その姿を見た刺客が先程までの眼光から柔らかい目に変わり、ナヴィの頭を撫でる。
「ふふ、安心しろ。別にお前らに興味はない。もちろんここで殺すことはない」
「な、ディノール様!! それはどういう……」
「ミモザ、むしろお前はこんな娘一人を殺すのにどれだけの時間を要するのだ」
「……そ、それは……」
「言い訳はいらん。それはお前の油断と慢心の他ならない、城に戻ったら覚悟しておけ」
「……し、しかし!!」
「ほう、お前ごときの身分でフォースシートの俺に指図するのか? イレブンスシート。ミモザ・フリューゲル」
「フォ、フォースシート……?」
ミモザが十一番目で、このディノールってやつが、よ四番……!? それに今の魔力の爆発的な上がり方、ミモザの比じゃない。
「ひっ、そんな私は……」
「話は後で聞く。城に戻るぞ」
「は、はっ!」
「娘」
ミモザの元に歩くディノールは一度足を止め、ナヴィに話しかけた。
「な、なに」
「忠告だ。祖父の後を追うのはやめておけ。お前の今の実力じゃトニー・マクレガンの足元にも及ばない」
「なんであなたがおじいちゃんを……。それにあなたには関係ない……」
「……まぁいい。今回は見逃すが、次俺の目の前に現れたら必ず殺す」
「……」
「ではさらばだナヴィ・マクレガンよ」
ミモザとディノールはエンフィーとナヴィの前から黒い炎とともに消えていった。
「はぁはぁはぁ……うっ」
「お姉ちゃん!!」
ディノールたちが消えていった瞬間、ナヴィは崩れるように倒れていった。
「エ、エンフィーさん、ナヴィさん!」
岩陰に隠れていたアミスも合流する。
「ごめんエンフィーあたし、二人を守れなかった」
エンフィーはナヴィを抱きかかえる。
「そんなことない、私もアミスさんも無傷なのよ。お姉ちゃんがミモザの攻撃から全部守ってくれたんだよ」
「……あ、あはは、そ、そっか。ならよかった……」
「それより今は安静にして、かなりの大怪我だよ……」
<ヒール!>
「くっ……簡単なこれで傷は治せるけど、一つ一つの傷が深すぎる……」
「ありがとうエンフィー。とりあえず村まで帰れれば大丈夫だから……色々と報告もしないといけないしね」
「う、うん。じゃあもう少し休憩したら戻ろうか……」
こうして三人は小休止をした後ダンジョンの出口へと向かっていった。
ナヴィは歩くのがやっとの状態でアミスとエンフィーの肩を借りながら歩いていた。
「はぁはぁはぁ」
「お、お姉ちゃん。もう少し休憩していく?」
「ううん。大丈夫……大丈夫」
「体、震えてるけど……」
「あ、足ががくがくでね、心配かけさせてごめんね」
魔王軍幹部のサーティーンプリンスター。イレブンスシートのミモザにフォースシートのディノール。
ものすごい力だった。正直舐めていた、案内人のあたしでも少しは対抗できるって……でもそんなこと一ミリもなかった。
ミモザの攻撃はなんとか防げてはいたけどあの最後の黒い禍々しいオーラ。本来の力はあっちだ。それにディノール……あの眼光を見た瞬間、あたしの震えが止まらなかった。
きっとあいつもミモザみたいに力を隠している状態ではあるはずだけど……。
そんなディノールが四番目。あれよりも更に強いのが魔王を含めて四体。
おじいちゃんはそんなやつらと戦っていたの……?
それに比べてあたしは
あたしは
あたしはなんて無力なんだ……。
「ぐすっ……だめだ。こんなんじゃ。あたしは何もできなかった」
「お姉ちゃん……」
「ナヴィさん……」
エンフィーとアミスはそれ以上声を掛けることはなくナヴィの背中を摩りながらゆっくりとした足取りで村へと帰っていった。
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