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第十一章 王都公認案内人 ナヴィ・マクレガン編

162.大繁盛

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 『王都公認案内人適性試験』から一週間ほど経ったある日。


 王都に構えている『王都公認の盾』が飾られているとある案内所にて。


「ここのマップをお願いしたいんだけど……」

「はい、只今」

 案内人は店のバックルームに入る。


「ったく……どんだけ冒険者が来やがんだ」

「おいおいケビンだらしねぇな、前もこんな感じだったじゃねぇか」

「うるさいぞ! アーサー。お前も座ってるだけなら手伝え!」

 店の中を縦横無尽に走り回り仕事をこなしていくケビン。

「はは、お前がそこまで言うなら手伝ってやらんこともないぜ! 金はいただくけどな」

「はぁ!? いつも俺がどんだけお前にただ働きされてるのか知ってるのか?」

「そりゃ昔からのよしみだろ、な、ほら顔パスってやつだ。それによ……見たか俺の胸のタトゥーを!」

 アーサーの胸には六つのタトゥーが浮き上がっていた。それを見たケビンは顔に手を当て大きくため息をつく。

「もう何度も見せられた」

「俺はもうここらじゃ一番の冒険者といっても過言ではない。そんなやつにただ働きさせるのかお前は!」

「知らん。冒険者は冒険者だ。それ以上でもそれ以下でもな。それに……」

「それに……?」

「昔からのよしみっていうんならその概念は俺にも適用されるよな?」

「あ、あはははー? そ、そうか?」

「さぁ、お前のからかうために俺の店に来たその空いている両手を寄越せアーサー」

「あー! 今日もダンジョン攻略頑張るぞー!」

「あ、てめぇ逃げるな!!」

 一瞬で店の外に出たアーサーを追いかけるケビン。

「お前が俺クラスにふさわしい案内人になったらいくらでも手伝ってやるよ!」

「……たく。遠くに行っちまったな。アーサー。お前もきっと次回の大規模侵攻に……」



「ケビンさーん! マップはまだ!?」

「すまん、今行く! くそ『王都公認』の名をもらってから明らかに依頼の量とレベルが変わってる……一人じゃ厳しいのか?」

 王都ということもあるが俺の店でこの変わりよう。王都の人間しかほとんど来ないから俺の場合はまだ何とかなりそうだが。

 王都から離れているルナの店は、さらにはルーカトリ街は上級冒険者がごろごろいることで有名な街だ。それにきっと俺以上に仕事があるだろう……。やってけてるのだろうか……。



 ルーカトリ街にある『マリオット案内所』

 店の中が狭い分、店外では列を何度も折り返すほどの大行列となしていた。


「あ、店外でお待ちいただいている冒険者の皆様、もう少々お待ちください!」

「えぇーもう一時間も待ってるよ!!」
「足疲れたわぁ」
「もう今日クエストできないじゃん」

「すみませんすみません!」

「その占いもうちょっと早くできないの?」

「すみません、占い自体のスピードは早くすることはできますが精度が著しく落ちてしまうので、皆様の安全を考慮するとおすすめはできません」

「あっそ、俺らも上級冒険者として忙しいんだから時間無駄にさせないでよね」

「か、かしこまりました……」

 もう……あれから一週間ずっとこんな感じで休めないよ。
 ルーカトリ街は上級冒険者も案内所の数も多いから分散していたはずなのに一気にわたくしのお店に集中しちゃってる。
 それにあの物陰からじっとわたくしを見ている人……あれは向かいの案内所の……。


「おーい早くしてくれ!」

「は、はい!」

 わたくしは日ごろ上級の冒険者の方のサポートをしている分数が増えただけですが、ナヴィさんたちは心配ですね。
 あの活躍の仕方を知られればみんなナヴィさんのところに行くはず……。

 でもナヴィさんたちの村は出発したての冒険者のほとんどが一番始めに向かう村。

「大丈夫でしょうか……ナヴィさん」



 同じころ、オリバービレッジ『始まりの村』のマクレガン案内所にて。

 店の扉が開いた。

「あのーすみません。案内人適性試験に合格したナヴィさんって方はいますかー?」

「わ、私です。冒険者様、大変申し訳ないのですが店の外で列ができていると思うので最後尾にお願いします!」

「え……この大行列って……」

「はい……全て私へ依頼しようとしている冒険者様です」

「嘘でしょ……だって何回折り返してるのあの大行列……」

「すみません。私も把握しかねています」

「そうかぁ、じゃあまた来るよ」

「またお待ちしております」

 ちょっと待って、今の人もレベル四十クラス!?

 ここ『始まりの村』よね……?

 ちょっと来すぎじゃない?

 王都公認の名をもらってからか上級冒険者の数が一気に増えて一つ一つの案件を捌ききる時間があまりにも長い……。

 それに同行もこんなに。

「ちょっとエンフィーに連絡してみますか……」

 簡易的な通信魔法を使い、隣に構えている初心者向けの案内所にいるエンフィーに連絡を取った。

「あーエンフィー? そっちの様子はどう?」

「いや、もう大変だよぉ。上級冒険者以外はみんなこっちだからお姉ちゃんの店の行列と同じぐらいできちゃってるよ……」

「ごめんね、いつまで続くかわからないけど、とりあえず稼ぎ時だと思って頑張りましょ!」

「はぁ。お姉ちゃんポジティブだね。でも異論はないよ!」

「マクレガン姉妹の力存分に発揮しましょ!」
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