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第十章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦編

151.表彰式

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「サテラ、お待たせ」

「ナヴィさん! 遅かったですね」

「あはは、ごめんごめん」

 医務室へと戻ってきたナヴィ。

「あ、そっか、ケビンとナターシャちゃんもいるのね」

「やっと戻ってきた! もうナヴィさん遅いですよ!」

 ぐぐぐと顔をナヴィに近寄せるナターシャ。

「え、ど、どうしたのナターシャちゃん!?」

「ケビンさん! これであたしトイレ行っていいですよね!!」

 ナターシャは股を押さえながらジタバタとしていた。

「あぁ、いってこい」

「じゃ、失礼しまーす!!」

 ものすごい勢いで扉を開けトイレへと走っていった。

「ナターシャちゃん?」

 首を傾げるナヴィ。

 ケビンは小声でナヴィに問いかけた。

「もう大丈夫か?」

「へ? あ、ケビンあなたもしかして……!」

 あたしのためにナターシャちゃんを……。

「って気づいてたの?」

「まぁな、お前のあの顔は多分トイレに行くときの顔じゃないと思ってな」

「……そうね」

「サテラもお前を探そうとしてたんだぞ」

「あーそれは申し訳ないことをしたわ。ケビンありがとう」

「ふっ。これは貸しにしておいてやる」

 ケビンは皮肉めいた言い方でナヴィに伝えた。

「あはは、大きな貸しだわ。またいつかね」


「ナヴィさん、トイレ大丈夫でしたか?」

 ケビンとナヴィの元にサテラが向かってきた。

「あら、サテラ。もう立てるようになったのね」

「はい。だいぶ魔力も戻ってきたので」

「でもまだ怪我も治ってないんだからベッドで安静に。今から回復魔法の準備するね」

「お願いします! ってあれ」

「ん?」

「ナヴィさん。目が赤いですけど、何かありましたか?」

「へ!? あ、うーんと、さっき埃が目に入ってたくさん掻いちゃってさ……」

「だめですよ、痒いのは我慢しないと余計に悪化しちゃうんですからね」

「あはは、うん。気を付けるわ」

 ナヴィは歪んだ笑顔で言葉を返した。

 その会話を聞いたケビンがボソッと呟いた。

「ふん。へたくそ」


『結果発表、表彰式、に参加される受験者とアカデミー生は説明がありますので十分後に控室にお集まりください』


「うわ、もうそんな時間なのね!」

「意外と早いですね」

「そうね、とりあえず応急処置程度になっちゃうけど軽く手当てして本格的な治療は終わってからにしようか」

「そうですね、私も歩く程度なら少々痛みますが問題なくできるので」

「うん。じゃあとりあえず足を出して」

「はい!」

 数分間二人は治療の専念した。


 そして表彰式。

 今回のトーナメントに出場した受験者とアカデミー生がフィールドに中心に並んでいた。

『皆さん、大変お待たせいたしました! それではこれから表彰式そして結果発表を行っていきたいと思います。それではまず今回の試験の主催者、案内人育成委員会理事長ブレビンス・ゴードンより挨拶と今回の全ての試験の講評です』

 スーザンがブレビンスにマイクを渡した。

 マイクを持ちきょろきょろと辺りを見渡すブレビンス。

「ブランはいない……か」

『えーおほん。皆さん。理事長のブレビンス・ゴードンです。本日は案内人適性試験 最終試験 トーナメント決勝戦に足をお運びいただき誠にありがとうございます。さて、皆様には今回のトーナメントで案内人の重要性を感じていただけましたでしょうか?』

 観客席が最後の問いに対してざわざわとし始めた。

「案内人の重要性……?」
「どういうことだ?」
「さぁ」

『昨今のこの世界の情勢は昔のように冒険者のみの世界ではなく、案内人と冒険者。分業していくのが基本の形となっております』

『そして今回の試験はそれを皆様に知っていただく意図もありました。試合をご覧になられた方はお気づきと思いますが、案内人一人一人が冒険者と真剣に向き合い、発展途上の有望なアカデミー生の才能を見事開花させることができました。そしてそれはアカデミー生も肌身で感じていたはずです』

『特に準決勝からは案内人がタイムアウトを使うたびに面白いくらいに形勢が逆転していきましたよね。それほどの力を我々案内人は持っていることを知っていただけたのではないでしょうか?』

『案内人育成員会としての今回の趣旨は「有能な人材の確保」でした。しかしそれだけではなく今回の試験を実際に皆さんにご覧になっていただき、案内人の可能性と有用性をしっかりと目に焼き付けていただきたかったということも同時に考えておりました』

『このトーナメントのように、これからも冒険者とともに歩み寄っていける存在になれるよう我々案内人は更なる質の向上を目指し頑張って参りたいと思います』

『とはいえ、今回は試験ですのでどうしても公認の案内人にはなれない方も出てきてしまいますが、それでも受験者の皆さんにはこれからも精進し、またこの試験に挑んでいただければなと思っております』

『本日はどうもありがとうございました!』

 観客席からの大きな拍手と歓声を浴び、深く一礼をするブレビンス。そのままマイクをスーザンに手渡した。

『ありがとうございました! それでは早速表彰式に移らせていただきます!』

『最終試験 トーナメント、同率四位。ルナ、ロイペア! そしてブラン、ダリウスペア』

「おいらは四位かぁ! ごめんなルナ」
「ううん。わたくしは次頑張ればいいだけだから!」

「ブランさん……」

 ダリウスはブランからもらったカードを強く握り、上を向いた。

『第二位! ナヴィ、サテラペア!』

「なにしゅんとしてるのサテラ!」
「ナヴィさん……?」

「準優勝よ! ほらみんなの顔を見てごらん、声を聞いてごらん」


「あの子もすごかったよなぁ」
「あぁ、あの風の技! 優勝したと思ったんだけど惜しかったよな」
「まぁでもこれから冒険者になるんならかなりの有望株よな!!」

「……みんな私に向けて」

「そうよ、観客席のアカデミー生の子もみんなあなたを見る目が変わってるわ」

「……」

「胸を張りなさい。ここからまたあなたのスタートなのだから」

「……はい!」

『そして、第一位! ケビン、ナターシャペア!』
『優勝したケビンさんは本日から公認の案内人として活躍していただきます! 二人に大きな拍手を!!』

「いえーい! おらおらぁ! どんなもんじゃーい!」
「はしゃぎすぎだナターシャ」

 ふぅーやっぱりケビンには勝てなかったわねー。まぁ次頑張るしかないわね。

『それでは次に結果発表をさせていただきます!』

「へ? 今のが結果発表じゃ……?」
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