150 / 262
第十章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦編
150.ナヴィの気持ち
しおりを挟む
「着いたわよ。医務室」
ナヴィは扉を開け、ベッドにサテラを寝かせる。
「ありがとうございます。あれナヴィさんどちらへ?」
「あー、トイレ! すぐ戻ってくるからそのまま安静にしといて」
笑顔で医務室を後にするナヴィ。
その頃、ケビンとナターシャも医務室に向かおうとしていた。
「あれ、ナヴィさん?」
「あら、ケビンにナターシャちゃん」
二人は医務室に向かう道中でナヴィに遭遇する。
ケビンはそのまま通り過ぎようとするナヴィに声を掛けた。
「ナヴィ。サテラの様子はどうだ?」
ナヴィはその問いかけに顔の向きを変えずに答える。
「……うん。とりあえず安静にしとけば大丈夫かな」
「そうか……お前は?」
「あたし? あたしは……ちょっとトイレに……」
「そうか……邪魔をしたな」
「……うん。それじゃ」
そのままトイレのある方へとナヴィは歩いていった。
「あ、あたしもトイレ行っておこうかな」
ナターシャはナヴィの後ろをついていこうと歩き出したその瞬間、ケビンに強く引き留められた。
「え、ケビンさん?」
「お前は治療が先だ。トイレに行くのは終わってからだ」
「えぇーなんでですかー! 漏れちゃいますよあたし!」
「そう思うなら早く医務室に向かうぞ」
「乙女にトイレを我慢させるなんてケビンさんはどこまであたしをいじめれば気が済むんですか」
「お前が歩き続けない限り俺の右手はグーのままだがいいんだな……?」
「あ、あはは。いや、冗談ですよ冗談、さぁ、早く医務室に行きましょう!」
「あぁ」
その後ナヴィの歩いてきた方向に足を進める二人。ケビンは一度トイレに向かうナヴィの背中をちらりと見た。
「音が何もない……なんかすごく心細いな……」
医務室で一人で寝込んでいたサテラ。扉が開いた音を聞いてピクリと体が動く。
「ナ、ナヴィさんかな! おかえりなさ……あ、ケビンさんとナターシャでしたか」
「サテラぁぁ!」
ナターシャは自分の怪我のことを忘れているのか、サテラと目が合った瞬間にサテラの寝込んでいるベッドに飛びついた。
「具合はどう? あたしあの状態になってからほとんど意識が無くて、どのくらい怪我させたとかあまり分かってなくてさ、サテラもぶっ倒れてたから殺しちゃったのかなって目が覚めた瞬間に思っちゃってもう、本当に焦っちゃって」
べらべらとマシンガンのように言葉を並べていくナターシャにサテラは動揺していた。
「あ、ナ、ナターシャ落ち着いて! 私は見ての通り大丈夫だから、傷もそうだけどどちらかというと魔力切れで今の状態になってるだけだし」
「そう、よかったぁー。とにかく今は安静にしててね、あたしもここで今から治療するけど」
「ナターシャ……お前……」
ナターシャの背後には拳を構えたケビンが待ち構えていた
「ひっ、ケ、ケビンさん。なんか黒いオーラが出てます……よ?」
「医務室がどんなところかわかってんのか? あ?」
「すすすすすみません。大人しくするのでその拳をお収めください」
「大丈夫だ強制的に大人しくさせてやる」
「ひ、や、やめ。ぎゃーー!!」
ナターシャの頭からゴンと大きな音が医務室中に鳴り響いた。
「い、痛すぎる……」
「お前が悪い、さぁ、そこに座れ」
「はい。治療する前に怪我増やしてどうするんですか」
ナターシャがボソッと呟いた。
「何か言ったか……?」
「いえ、な、何も! ってあれ、サテラ? もう立てるの?」
扉に手を掛けようとしていたサテラにナターシャが声を掛けた。
「あ、うん。魔力が戻りつつあるからもう歩くくらいは」
「サテラ、どこに行くんだ?」
「ケビンさん? 少し元気になったのでナヴィさんを探しに。どこにいるかご存じでしょうか?」
「ナヴィはトイレに行くと言っていた。それもお腹が痛いっつってめちゃくちゃ腹を押さえてたぞ。行ってもトイレの中だから意味ないと思うが」
「あ、そうなんですね」
ケビンの発言を聞いたナターシャは首を傾げケビンに問いかけた。
「え、ケビンさん。ナヴィさんそんなこと一言も、わっぷ!」
ケビンは急にナターシャの口を手で押さえた。
「それに立ち上がれたとしてもナターシャに受けた傷は相当深いだろ。安静にしてろ。ナヴィもきっとそう言うだろ」
「た、確かに今外出たら逆に怒られちゃうか……ケビンさんありがとうございます」
「いや、俺は別に」
サテラはドアノブに掛けていた手を下ろすとベッドへ戻っていった。
はぁ。俺もお人よしになったもんだな……。これは貸しにしておくぞナヴィ。
トイレの前ではナヴィが壁をどんと叩きそのまま身を任せて崩れ落ちていった。
「くそ。くそ。負けた。あぁ。ああぁ。畜生。畜生……」
あたしはまだまだだった。もっとサテラを信頼してあげていれば。余計なこと考えていなければ。あの子を優勝させることができていた。
完全にあたしの力不足だった。
サテラは持てる力を十二分に発揮して自分の殻を破った。けどあたしは何ができていた。
もっと。もっとできることが、やれることがあったはずなのに。
くそ。くそ。
「あぁぁぁぁぁ!!」
ナヴィの泣き叫ぶ声が廊下中に響き渡っていた。
ナヴィは扉を開け、ベッドにサテラを寝かせる。
「ありがとうございます。あれナヴィさんどちらへ?」
「あー、トイレ! すぐ戻ってくるからそのまま安静にしといて」
笑顔で医務室を後にするナヴィ。
その頃、ケビンとナターシャも医務室に向かおうとしていた。
「あれ、ナヴィさん?」
「あら、ケビンにナターシャちゃん」
二人は医務室に向かう道中でナヴィに遭遇する。
ケビンはそのまま通り過ぎようとするナヴィに声を掛けた。
「ナヴィ。サテラの様子はどうだ?」
ナヴィはその問いかけに顔の向きを変えずに答える。
「……うん。とりあえず安静にしとけば大丈夫かな」
「そうか……お前は?」
「あたし? あたしは……ちょっとトイレに……」
「そうか……邪魔をしたな」
「……うん。それじゃ」
そのままトイレのある方へとナヴィは歩いていった。
「あ、あたしもトイレ行っておこうかな」
ナターシャはナヴィの後ろをついていこうと歩き出したその瞬間、ケビンに強く引き留められた。
「え、ケビンさん?」
「お前は治療が先だ。トイレに行くのは終わってからだ」
「えぇーなんでですかー! 漏れちゃいますよあたし!」
「そう思うなら早く医務室に向かうぞ」
「乙女にトイレを我慢させるなんてケビンさんはどこまであたしをいじめれば気が済むんですか」
「お前が歩き続けない限り俺の右手はグーのままだがいいんだな……?」
「あ、あはは。いや、冗談ですよ冗談、さぁ、早く医務室に行きましょう!」
「あぁ」
その後ナヴィの歩いてきた方向に足を進める二人。ケビンは一度トイレに向かうナヴィの背中をちらりと見た。
「音が何もない……なんかすごく心細いな……」
医務室で一人で寝込んでいたサテラ。扉が開いた音を聞いてピクリと体が動く。
「ナ、ナヴィさんかな! おかえりなさ……あ、ケビンさんとナターシャでしたか」
「サテラぁぁ!」
ナターシャは自分の怪我のことを忘れているのか、サテラと目が合った瞬間にサテラの寝込んでいるベッドに飛びついた。
「具合はどう? あたしあの状態になってからほとんど意識が無くて、どのくらい怪我させたとかあまり分かってなくてさ、サテラもぶっ倒れてたから殺しちゃったのかなって目が覚めた瞬間に思っちゃってもう、本当に焦っちゃって」
べらべらとマシンガンのように言葉を並べていくナターシャにサテラは動揺していた。
「あ、ナ、ナターシャ落ち着いて! 私は見ての通り大丈夫だから、傷もそうだけどどちらかというと魔力切れで今の状態になってるだけだし」
「そう、よかったぁー。とにかく今は安静にしててね、あたしもここで今から治療するけど」
「ナターシャ……お前……」
ナターシャの背後には拳を構えたケビンが待ち構えていた
「ひっ、ケ、ケビンさん。なんか黒いオーラが出てます……よ?」
「医務室がどんなところかわかってんのか? あ?」
「すすすすすみません。大人しくするのでその拳をお収めください」
「大丈夫だ強制的に大人しくさせてやる」
「ひ、や、やめ。ぎゃーー!!」
ナターシャの頭からゴンと大きな音が医務室中に鳴り響いた。
「い、痛すぎる……」
「お前が悪い、さぁ、そこに座れ」
「はい。治療する前に怪我増やしてどうするんですか」
ナターシャがボソッと呟いた。
「何か言ったか……?」
「いえ、な、何も! ってあれ、サテラ? もう立てるの?」
扉に手を掛けようとしていたサテラにナターシャが声を掛けた。
「あ、うん。魔力が戻りつつあるからもう歩くくらいは」
「サテラ、どこに行くんだ?」
「ケビンさん? 少し元気になったのでナヴィさんを探しに。どこにいるかご存じでしょうか?」
「ナヴィはトイレに行くと言っていた。それもお腹が痛いっつってめちゃくちゃ腹を押さえてたぞ。行ってもトイレの中だから意味ないと思うが」
「あ、そうなんですね」
ケビンの発言を聞いたナターシャは首を傾げケビンに問いかけた。
「え、ケビンさん。ナヴィさんそんなこと一言も、わっぷ!」
ケビンは急にナターシャの口を手で押さえた。
「それに立ち上がれたとしてもナターシャに受けた傷は相当深いだろ。安静にしてろ。ナヴィもきっとそう言うだろ」
「た、確かに今外出たら逆に怒られちゃうか……ケビンさんありがとうございます」
「いや、俺は別に」
サテラはドアノブに掛けていた手を下ろすとベッドへ戻っていった。
はぁ。俺もお人よしになったもんだな……。これは貸しにしておくぞナヴィ。
トイレの前ではナヴィが壁をどんと叩きそのまま身を任せて崩れ落ちていった。
「くそ。くそ。負けた。あぁ。ああぁ。畜生。畜生……」
あたしはまだまだだった。もっとサテラを信頼してあげていれば。余計なこと考えていなければ。あの子を優勝させることができていた。
完全にあたしの力不足だった。
サテラは持てる力を十二分に発揮して自分の殻を破った。けどあたしは何ができていた。
もっと。もっとできることが、やれることがあったはずなのに。
くそ。くそ。
「あぁぁぁぁぁ!!」
ナヴィの泣き叫ぶ声が廊下中に響き渡っていた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
他人の人生押し付けられたけど自由に生きます
鳥類
ファンタジー
『辛い人生なんて冗談じゃ無いわ! 楽に生きたいの!』
開いた扉の向こうから聞こえた怒声、訳のわからないままに奪われた私のカード、そして押し付けられた黒いカード…。
よくわからないまま試練の多い人生を押し付けられた私が、うすらぼんやり残る前世の記憶とともに、それなりに努力しながら生きていく話。
※注意事項※
幼児虐待表現があります。ご不快に感じる方は開くのをおやめください。
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が子離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん
月猫
ファンタジー
異世界へ拉致された主人公。目が覚めた先はボロボロの世界樹の中だった?!
迷宮の主となった主人公は、ダンジョンの能力【創造】により全く新しい”モノ”を世界に作り出し、現状の打破に挑む。
新しい魔物を創ったり、予想外な成長に困惑したり。
世界樹の愚痴を聞いたり、なだめたり。
世界樹のため、世界のため、世界樹の治療と環境改善を目指し、迷宮はどんどん大きくなる。そんなお話。
始めは少々危険な場面がありますが、ダンジョンが成長してからはその様な場面は少なくなり、周りの生物の方がダンジョンに抗う感じになります。
俺TUEEEならぬ、ダンジョンTUEEEもの。チート能力ならぬ、チートダンジョンの予定。
(チート能力者が居無いとは言っていない)
初投稿です。山なし谷なし作品ですが、暖かい目でみてください。
異世界なのだから、元の世界の常識が当てはまらなくても、おかしくないのでは? をコンセプトに、スキルやら魔法やらの仕組みを表現できたらと思っています。
※「小説家になろう」にも掲載
※ストックが切れたら、更新が遅くなると思います、ご容赦下さい
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる