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第十章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦編
149.トーナメント終了
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『王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦、勝者は。 ケビン、ナターシャペア!!』
スーザンのアナウンスを聞いた観客の大歓声と拍手が会場に広がった。
『表彰式、結果発表はこの後一時間後に行いたいと思います! また本トーナメントの参加者全員はフィールドにお集まりください! 観客席にいらっしゃるお客様はしばらくお待ちください!』
「あたしが優勝……信じられない」
会場をゆっくりと見渡しながらもぼーっとしてしまうナターシャ。
「あぁ、よくやったなナターシャ」
「ケビンさん!!」
ナターシャは横に並んだケビンにぎゅっと抱き着いた。
「おい、いつも言ってるだろ急に抱き着くな!」
「グスッ……本当に……本当にありがとうございました」
ナターシャは涙を流しながらも笑顔でケビンに感謝の気持ちを伝えた。
「ふ、泣くか笑うかどっちかにしろ」
「だって泣くほど嬉しいんですもん。あたしが優勝できたこともそうですけど……」
「ん?」
「ケビンさん。あたしはケビンさんの力になることはできたでしょうか?」
もじもじとしながらケビンに上目遣いをするナターシャ。
「……さぁな」
「え! ひどい! せっかくこんなになるまであたし頑張ったのに!」
「褒めてほしいなら褒めてほしいってちゃんと言え」
「褒めてほしい!」
「だめだ、もう遅い」
「そんなぁ……」
しゅんとした顔に変わったナターシャの姿をケビンは鼻で笑い、ナターシャの頭に手を置いた。
「ケビンさん?」
「お前のゴールはここじゃない。これからも一層努力しろ。もっと強くなれ」
頭を撫でながらそう諭すケビンに頬を膨らませるナターシャ。
「むーまぁ今日はこの撫で撫でだけで満足してあげます」
「なんで上から目線なんだよ」
ナターシャ。すまんな。本当はお前が優勝してくれたことが嬉しいんだが、照れくさくてこのくらいのことしかできない俺を許してくれ。
危険な道だったがよく俺についてきてくれた。
俺のパートナーがナターシャで本当に良かった。
ありがとう……。本当にありがとう。
「へ? ケビンさん。今なんか言いました!?」
「は? な、何も言ってないぞ」
「うそ! 今……がとうって小さく言ってた! 絶対ありがとうですよね!?」
「そんなことは言ってない! いいから一回フィールドから出て手当てするぞ」
「ふーん照れ隠しですね、まぁそういうことにしといて上げます」
にやにやとするナターシャにケビンが撫でていた手をグーに変え、そのまま軽く小突いた。
「いった!!」
「それ以上言ったら殴るぞ」
「もう殴られてますけど……えへへ」
「さぁ、控室に戻ろう」
「はーい!」
ナターシャとケビンが優勝の喜びを分かち合っている頃、ナヴィは結果を発表された後に気を失ったサテラを負ぶり、静かにフィールドを後にした。
フィールドを出て医務室までの廊下を歩いている時にサテラが目を覚ました。
「あれ……ここは」
「あ、サテラ起きた?」
「これはナヴィさんの背中……?」
「うん、あのままサテラ気を失っちゃって動く気配がなかったから」
「す、すみません。もう大丈夫ですから!」
「いいのいいの、今魔力すっからかんなんだから立つことはできても歩くことはできないよ、それだけ限界まで魔力を使い切ったんだから」
「そう……ですね」
「グスッ、グスッ……」
ナヴィは肩から服を通してほんのりと湿った感触を感じ取る。
「サテラ?」
「ナヴィさん。ごめんなさい、私、必ず優勝するって。ナヴィさんを導くって言ったのに……」
「まぁ、ほら、もう結果が出ちゃったんだから今更そういってもしょうがないことよ」
苦笑いをしながらサテラを励まそうとするナヴィ。
「私、あんなにダメダメだったのにここまで強くしてもらって……それにこの試合でも突き放したり、勝手に行動したりして迷惑しかかけてないのに、結局勝つこともできなくて……」
「悲観することはないのよ。サテラはあの中でも今までのベストが出せたんだから。あなたに非はないわ」
「でも、ナヴィさんは公認の案内人には……」
「あーそれはまぁ、うん。でもねサテラ、あたしの案内人としてのゴールはここじゃないのよ」
「え……?」
「あたしには目標があって、今回の案内人適性試験はそのための過程の一つに過ぎないの。まぁ、もちろんなれないことは悔しいけど」
「……」
「でも、そこで落ち込んでいる暇なんてないし、これから先も乗り越えなきゃいけないことは沢山あると思う。サテラ。あなたはどう?」
「私は……」
「もう、何もしないでいいほど強くなれたかしら?」
「いえ、まだ。まだまだ特訓してもっと強くならなきゃいけないなって思いました」
「うん。今回はこういう結果になっちゃったけど、それでもお互いまたここからスタートなんだよ。歩みを止めずに頑張りましょう?」
「ナヴィさん……はい!」
本当に、私はこの人にいつも救われてる。絶対悔しいはずなのに。絶対優勝したかったはずなのにそれを私のせいには絶対にしない。
私にもっと力があれば、私にもっと覚悟があったら……。
スーザンのアナウンスを聞いた観客の大歓声と拍手が会場に広がった。
『表彰式、結果発表はこの後一時間後に行いたいと思います! また本トーナメントの参加者全員はフィールドにお集まりください! 観客席にいらっしゃるお客様はしばらくお待ちください!』
「あたしが優勝……信じられない」
会場をゆっくりと見渡しながらもぼーっとしてしまうナターシャ。
「あぁ、よくやったなナターシャ」
「ケビンさん!!」
ナターシャは横に並んだケビンにぎゅっと抱き着いた。
「おい、いつも言ってるだろ急に抱き着くな!」
「グスッ……本当に……本当にありがとうございました」
ナターシャは涙を流しながらも笑顔でケビンに感謝の気持ちを伝えた。
「ふ、泣くか笑うかどっちかにしろ」
「だって泣くほど嬉しいんですもん。あたしが優勝できたこともそうですけど……」
「ん?」
「ケビンさん。あたしはケビンさんの力になることはできたでしょうか?」
もじもじとしながらケビンに上目遣いをするナターシャ。
「……さぁな」
「え! ひどい! せっかくこんなになるまであたし頑張ったのに!」
「褒めてほしいなら褒めてほしいってちゃんと言え」
「褒めてほしい!」
「だめだ、もう遅い」
「そんなぁ……」
しゅんとした顔に変わったナターシャの姿をケビンは鼻で笑い、ナターシャの頭に手を置いた。
「ケビンさん?」
「お前のゴールはここじゃない。これからも一層努力しろ。もっと強くなれ」
頭を撫でながらそう諭すケビンに頬を膨らませるナターシャ。
「むーまぁ今日はこの撫で撫でだけで満足してあげます」
「なんで上から目線なんだよ」
ナターシャ。すまんな。本当はお前が優勝してくれたことが嬉しいんだが、照れくさくてこのくらいのことしかできない俺を許してくれ。
危険な道だったがよく俺についてきてくれた。
俺のパートナーがナターシャで本当に良かった。
ありがとう……。本当にありがとう。
「へ? ケビンさん。今なんか言いました!?」
「は? な、何も言ってないぞ」
「うそ! 今……がとうって小さく言ってた! 絶対ありがとうですよね!?」
「そんなことは言ってない! いいから一回フィールドから出て手当てするぞ」
「ふーん照れ隠しですね、まぁそういうことにしといて上げます」
にやにやとするナターシャにケビンが撫でていた手をグーに変え、そのまま軽く小突いた。
「いった!!」
「それ以上言ったら殴るぞ」
「もう殴られてますけど……えへへ」
「さぁ、控室に戻ろう」
「はーい!」
ナターシャとケビンが優勝の喜びを分かち合っている頃、ナヴィは結果を発表された後に気を失ったサテラを負ぶり、静かにフィールドを後にした。
フィールドを出て医務室までの廊下を歩いている時にサテラが目を覚ました。
「あれ……ここは」
「あ、サテラ起きた?」
「これはナヴィさんの背中……?」
「うん、あのままサテラ気を失っちゃって動く気配がなかったから」
「す、すみません。もう大丈夫ですから!」
「いいのいいの、今魔力すっからかんなんだから立つことはできても歩くことはできないよ、それだけ限界まで魔力を使い切ったんだから」
「そう……ですね」
「グスッ、グスッ……」
ナヴィは肩から服を通してほんのりと湿った感触を感じ取る。
「サテラ?」
「ナヴィさん。ごめんなさい、私、必ず優勝するって。ナヴィさんを導くって言ったのに……」
「まぁ、ほら、もう結果が出ちゃったんだから今更そういってもしょうがないことよ」
苦笑いをしながらサテラを励まそうとするナヴィ。
「私、あんなにダメダメだったのにここまで強くしてもらって……それにこの試合でも突き放したり、勝手に行動したりして迷惑しかかけてないのに、結局勝つこともできなくて……」
「悲観することはないのよ。サテラはあの中でも今までのベストが出せたんだから。あなたに非はないわ」
「でも、ナヴィさんは公認の案内人には……」
「あーそれはまぁ、うん。でもねサテラ、あたしの案内人としてのゴールはここじゃないのよ」
「え……?」
「あたしには目標があって、今回の案内人適性試験はそのための過程の一つに過ぎないの。まぁ、もちろんなれないことは悔しいけど」
「……」
「でも、そこで落ち込んでいる暇なんてないし、これから先も乗り越えなきゃいけないことは沢山あると思う。サテラ。あなたはどう?」
「私は……」
「もう、何もしないでいいほど強くなれたかしら?」
「いえ、まだ。まだまだ特訓してもっと強くならなきゃいけないなって思いました」
「うん。今回はこういう結果になっちゃったけど、それでもお互いまたここからスタートなんだよ。歩みを止めずに頑張りましょう?」
「ナヴィさん……はい!」
本当に、私はこの人にいつも救われてる。絶対悔しいはずなのに。絶対優勝したかったはずなのにそれを私のせいには絶対にしない。
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