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第十章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 決勝戦編

147.勝者は……

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<エクスプロードウインド!>

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「サテラ、まさかあなたこのために……」

 サテラは反撃はしつつも決定打になるような攻撃はしていなかった。けどそれは残った魔力を<エクスプロードウインド>に全てを注ぎ込むため、限界まで溜めながら戦っていたんだ。

 サテラの片腕に集まった大量の風がナターシャに向かって発射された。

「ガァァァ!!」

 ナターシャもそのタイミングに合わせていたかのようにこの試合一番の威力の<ボルティックサイズ>を放つ。


 二つの技が大きな音とともにぶつかり合った。




「すごい風と雷……ロイ君吹き飛ばされてない?」

「おいらは大丈夫だぞルナ! それよりも二人とも凄すぎて全然見えない……」


 フィールドでぶつかり合っている二つの力は観客席まで吹き飛ばしそうなほどの威力と勢いのあるものとなっていた。


「はぁぁぁぁぁぁ! これで倒れなさいナターシャ!」

 サテラは最後の一滴まで魔力を絞り出し全力でナターシャに風を放出し続けた。


「くっ、あとちょっとなのに……」

 残りの魔力もほとんどなくなり、サテラは自分が限界を迎えたことを察した。


 その時だった。

「グルァァァァ!!」

 長い時間受け止めていたナターシャの大鎌にひびが入り、そのまま砕け散った。


「ギャァァァァァ!!」

「来た今だ! いっけぇぇぇぇぇぇぇ!」

 大鎌が破壊され身を守るものが無くなったナターシャにサテラのダメ押しの風がナターシャをフィールド外まで吹き飛ばした。


「はぁ、はぁ、はぁ。やった! けどもう限界」

「サテラ!」

 ナヴィの目の前で魔力の底が尽きたサテラは倒れた。

「へへ。もう、指一本も動かせないや……」

「あ、よかった……」

 サテラに意識があることが分かり安堵するナヴィ。

 ナターシャは気を失っているのか立ち上がれずにいた。


「「「うおぉぉぉぉぉぉ」」」


 会場全体がサテラの勝利を確信し大歓声をあげる。


「ルナ、サテラが勝ったよ! すげぇよあいつ!!」

「うん、すごい。これは大番狂わせね!」


「ハンナさん! サテラちゃんの勝ちですね!!」

「あぁ、まさかここまで自分の力を出し切るとは……すごい試合だったね」


「ナターシャ……まぁ、後で慰めてやるか」

 ケビンを含めた会場にいる全ての人間がサテラを勝者と認め健闘を讃えていた。


「決まったわね……さてフィールドの中に」

 スーザンがフィールドの中に入ろうとしたその時だった。

「ガァァァァ!!」


「「え!?」」

 サテラの攻撃で完全に意識を失っていたナターシャが立ち上がり叫びだした。


「嘘でしょ……あのサテラの攻撃を受けてまだ立ち上がるの……」

「そんな、私もう一歩も動けないのに……」

 ナヴィ達が満身創痍でも立ち上がるナターシャの姿に驚きを隠せずにいた。


「グルアァァ! グルァァァ!」

 倒れる前よりも更に<バーサーク>の獣化が進んでおり、虎模様の痣はより濃く、整えられていた爪は無造作に伸び始め、まさに獣と言わんばかりの体つきに近づいていた。

「ナターシャ、あの状態は……やばい!!」

 完全に獣化が進んでいる……今の状態は非常に危険だ。本来のナターシャの意識が戻りにくくなってしまう。

 とにかく早く止めなければ!


 ケビンはナターシャに向かって走り出した。

「ガァァァァ!!」

 ナターシャは手にしていた大鎌を捨て爪をとがらせ攻撃を仕掛けようと猛スピードでサテラに突っ込んでいく。

「サテラァ!! くそっ、くそ!!」

 ナヴィはフィールドに駆けあがった。

 ナターシャが距離を詰めてきたのを見たサテラは負けを覚悟し目を瞑った。

「く、ナヴィさん。ごめんなさい」

 ナターシャの猛スピードにより煙がたかれ、観客席からはサテラ達の様子が見えなくなっていた。


「おいおい、ルナどうなってんの!?」

「わからない……けどナターシャちゃんが立ち上がってサテラちゃんに攻撃を仕掛けていくのは見えた」

「まじかよ!」

「けどあのナターシャちゃんはナターシャちゃんじゃない……完全にあの攻撃の仕掛け方は殺意からくるものだった」
「サテラちゃんどうか無事でいて」


 ナターシャの攻撃にサテラは切り裂かれた。

 誰もが煙が晴れるまではそう思っていた。

 しかし、煙が晴れていくとその光景は異様なものとなっていた。
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