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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
117.育成方針
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「あ、あれ……なんで」
すぐに立ち上がり体勢を立て直すダリウス。
「どうしたの、ダリウス何かおかしなことでも?」
起き上がったダリウスの目の前にサテラが立っていた。
「くっ、おらぁぁ!」
ダリウスはサテラの姿が目に入った瞬間、飛び掛かり攻撃を再開した。
「う、でもやっぱり速いわね……」
「ふ、ほらそこがら空き!」
「し、しまっ」
このタイミングはサテラに完璧に決まる! この脇腹への攻撃は上空に跳んで躱すだろう。そこを<パワードアッパー>で決めて今度こそ終わりにする。それにブランさんが教えてくれたこの流れで勝てばきっと満足してくれる!
ダリウスは脇腹目掛けて強烈なパンチを繰り出す。そしてその流れのまま必殺技を繰り出した。
「これを避けても君が上に避けることは分かってる。このまま倒させてもらうよ!」
<パワードアッパー!>
「何をしてるの、ダリウス?」
「えっ、なんで下に……」
ダリウスの上空に向け放たれた必殺技が空振りに終わった。
サテラはその着地を狙い魔法を放つ。
<ウインドカッター!>
「ぐあぁぁ!」
ダリウスはブランのいる方へ吹き飛ばされた。
「ダリウス、何をしている!」
「ご、ごめんなさい」
どういうこと、なんで、教えた通りやってるのに……。
「あはは、こりゃまた大胆な作戦を伝えたねナヴィは」
試合を客席で見ていたハンナはエンフィーに話しかける。
「なんかサテラちゃんタイムアウト前と戦い方変わりました?」
「うん。かなり変わったね……百八十度変わったといっても過言ではない」
「真逆じゃないですか!」
「うん。真逆だ」
「はい……?」
「今のサテラちゃんの戦い方をよく見てごらん?」
「……あ、またなんか変な動きしてますね……」
「僕が特訓で教えたのは双剣の扱い方や戦闘の正攻法のスタイルだ。だけど今の彼女はそれを完全に無視して戦っている、双肩使いの戦い方とは思えないほどに動きの一つ一つが雑で洗練さに欠けている……まぁきっとナヴィが無視をさせたって感じかな」
「で、でもそれじゃあ、なあなあになっちゃうんじゃ……」
「僕もそう思ってたんだけど、どうやらそうじゃないみたいだね……ダリウス君に限っては」
サテラの行動に対し、ダリウスは攻撃も防御も常にワンテンポ遅れての対応をしていた。
「本当ですね、さっきよりも明らかに動きが鈍くなってる……」
「うん。あのブランという案内人の底が知れたよ」
「そうか、偵察したサテラちゃんの動きを完璧に体に叩き込ませそれをダリウス君に体現させていた。けど逆を言えばそれしかしていないってことですか」
「そういうことだと思う。多分ダリウス君はサテラは次こう来るって、何十回何百回シュミレートして体に染み込ませた。けど、サテラちゃんの対応をするのにいきなり特訓とは違う行動をするのって意外と難儀なんだよ。自分の癖って直そうとすると他にぼろが出たりするでしょ? ダリウス君は今まさにその状態ってことさ」
「本当だ……でもサテラちゃんもサテラちゃんで戦い方を真逆にするって頭でわかっててもそんな簡単にできることじゃ……」
サテラちゃん、もともの戦闘能力は低かったけど、戦闘の幅を持たせるという意味でのアイキューは相当高かった。ナヴィも言いはしなかったけど、そっちの特訓も少しずつ行ってたみたいだし。
「現に今それができている、それはあの二人の戦闘に対する考え方の相性がどれだけいいかってことの証明でもあるかも。ここに来て案内人の育成方針の差が出始めたみたいだね……」
「くそ! くそ! どうして攻撃が当たらない」
ミミィの時もさっきまでのサテラもブランさんの言う通りやって上手くいっていたのに……。どうして今になって。
「てめぇ馬鹿野郎、ダリウス惑わされるな! 自分で考えて対応していけ!」
戦況は一転しサテラのペースへ。フィールドの縁に立たされたダリウスに対しブランが罵声を浴びせた。
「ブランさん……は、はい!」
ブランの顔を見たダリウスがサテラから距離を取り、深呼吸をする。
「はぁ、はぁ。すーはぁー」
落ち着け……まだ負けたわけじゃない。
それにここで不甲斐ない姿を見せたらまたブランさんに怒られる、殴られる、それは嫌だ、何か考えなきゃ、何か考えなきゃ!
あれ……。
僕は何を考えればいいんだ……一人の時は今までどうやって戦ってたっけ……?
ダリウスさんに言われた通りに戦わなきゃ。でも、今自分で考えろって……。
「ダリウス! 止まるんじゃねぇ! さっさと攻撃しろ」
あれ、何するんだっけ。どんな攻撃するんだっけ……。
「分からない……分からない……」
ブランは頭を抱えその場で硬直した。
「サテラ。僕はどうやって戦えばいいんだ……」
「……ダリウス」
すぐに立ち上がり体勢を立て直すダリウス。
「どうしたの、ダリウス何かおかしなことでも?」
起き上がったダリウスの目の前にサテラが立っていた。
「くっ、おらぁぁ!」
ダリウスはサテラの姿が目に入った瞬間、飛び掛かり攻撃を再開した。
「う、でもやっぱり速いわね……」
「ふ、ほらそこがら空き!」
「し、しまっ」
このタイミングはサテラに完璧に決まる! この脇腹への攻撃は上空に跳んで躱すだろう。そこを<パワードアッパー>で決めて今度こそ終わりにする。それにブランさんが教えてくれたこの流れで勝てばきっと満足してくれる!
ダリウスは脇腹目掛けて強烈なパンチを繰り出す。そしてその流れのまま必殺技を繰り出した。
「これを避けても君が上に避けることは分かってる。このまま倒させてもらうよ!」
<パワードアッパー!>
「何をしてるの、ダリウス?」
「えっ、なんで下に……」
ダリウスの上空に向け放たれた必殺技が空振りに終わった。
サテラはその着地を狙い魔法を放つ。
<ウインドカッター!>
「ぐあぁぁ!」
ダリウスはブランのいる方へ吹き飛ばされた。
「ダリウス、何をしている!」
「ご、ごめんなさい」
どういうこと、なんで、教えた通りやってるのに……。
「あはは、こりゃまた大胆な作戦を伝えたねナヴィは」
試合を客席で見ていたハンナはエンフィーに話しかける。
「なんかサテラちゃんタイムアウト前と戦い方変わりました?」
「うん。かなり変わったね……百八十度変わったといっても過言ではない」
「真逆じゃないですか!」
「うん。真逆だ」
「はい……?」
「今のサテラちゃんの戦い方をよく見てごらん?」
「……あ、またなんか変な動きしてますね……」
「僕が特訓で教えたのは双剣の扱い方や戦闘の正攻法のスタイルだ。だけど今の彼女はそれを完全に無視して戦っている、双肩使いの戦い方とは思えないほどに動きの一つ一つが雑で洗練さに欠けている……まぁきっとナヴィが無視をさせたって感じかな」
「で、でもそれじゃあ、なあなあになっちゃうんじゃ……」
「僕もそう思ってたんだけど、どうやらそうじゃないみたいだね……ダリウス君に限っては」
サテラの行動に対し、ダリウスは攻撃も防御も常にワンテンポ遅れての対応をしていた。
「本当ですね、さっきよりも明らかに動きが鈍くなってる……」
「うん。あのブランという案内人の底が知れたよ」
「そうか、偵察したサテラちゃんの動きを完璧に体に叩き込ませそれをダリウス君に体現させていた。けど逆を言えばそれしかしていないってことですか」
「そういうことだと思う。多分ダリウス君はサテラは次こう来るって、何十回何百回シュミレートして体に染み込ませた。けど、サテラちゃんの対応をするのにいきなり特訓とは違う行動をするのって意外と難儀なんだよ。自分の癖って直そうとすると他にぼろが出たりするでしょ? ダリウス君は今まさにその状態ってことさ」
「本当だ……でもサテラちゃんもサテラちゃんで戦い方を真逆にするって頭でわかっててもそんな簡単にできることじゃ……」
サテラちゃん、もともの戦闘能力は低かったけど、戦闘の幅を持たせるという意味でのアイキューは相当高かった。ナヴィも言いはしなかったけど、そっちの特訓も少しずつ行ってたみたいだし。
「現に今それができている、それはあの二人の戦闘に対する考え方の相性がどれだけいいかってことの証明でもあるかも。ここに来て案内人の育成方針の差が出始めたみたいだね……」
「くそ! くそ! どうして攻撃が当たらない」
ミミィの時もさっきまでのサテラもブランさんの言う通りやって上手くいっていたのに……。どうして今になって。
「てめぇ馬鹿野郎、ダリウス惑わされるな! 自分で考えて対応していけ!」
戦況は一転しサテラのペースへ。フィールドの縁に立たされたダリウスに対しブランが罵声を浴びせた。
「ブランさん……は、はい!」
ブランの顔を見たダリウスがサテラから距離を取り、深呼吸をする。
「はぁ、はぁ。すーはぁー」
落ち着け……まだ負けたわけじゃない。
それにここで不甲斐ない姿を見せたらまたブランさんに怒られる、殴られる、それは嫌だ、何か考えなきゃ、何か考えなきゃ!
あれ……。
僕は何を考えればいいんだ……一人の時は今までどうやって戦ってたっけ……?
ダリウスさんに言われた通りに戦わなきゃ。でも、今自分で考えろって……。
「ダリウス! 止まるんじゃねぇ! さっさと攻撃しろ」
あれ、何するんだっけ。どんな攻撃するんだっけ……。
「分からない……分からない……」
ブランは頭を抱えその場で硬直した。
「サテラ。僕はどうやって戦えばいいんだ……」
「……ダリウス」
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