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第八章 王都公認 案内人適性試験 最終試験編
83.第一試合勝者
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サテラとエドウィンの必殺技が会場を大きな衝撃波と大量の煙で埋め尽くした
「おいおいどうなったんだ……」
「わからねぇ。見えねぇよ」
「まさかエドウィンが負けるなんてないよな」
「さぁ、でもさっきの様子じゃ……」
「お、煙が晴れていくぞ」
時間の経過とともにフィールドを埋め尽くしていた煙が消えていく。
会場はその煙の消える音が鮮明に聞こえてくるほど静まり返っていた。
「エンフィー目大丈夫?」
「はい、少し目に土煙が入って……それよりも二人の様子は?」
サテラちゃん……立っていてくれ……。
お、人影が、あれは。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。てこずらせやがって。ようやく俺の槍がお前を捉えたな王女様」
先に姿を現したのはエドウィンだった。そしてエドウィンの目の前にはボロボロになり、片膝をついて呼吸が乱れていたサテラの姿が現れた。
それを見たナヴィがフィールドの外から叫んだ。
「サテラちゃん! サテラちゃん!」
まずい、このままだと一気にやられちゃう。
「ふっ、そのまま惨めにここでぶっ倒れな」
エドウィンが槍を握りしめ思い切り振り上げた。
「よっしゃエドウィンさん! これで『俺たち』の勝ちだ」
「違うなタパ、『俺』の勝ちだ!」
目一杯反らせた体を使い振り下ろそうとした瞬間だった。
「あ、あれ……」
エドウィンの体がふらつき始め、それと同時に振り上げていた槍が手からするりと抜けていった。
「なんで……」
「ふふ、甘かったですね」
その場で膝をついていたサテラがゆっくりと立ちあがった。
「サテラ。くそ、てめぇ何をした」
「あなたが闇雲に必殺技を出したときに、私はあなたの攻撃がどういう軌道で襲ってくるのかすぐにわかりました。そして私もそれに乗ったふりをして<ダブルスラッシュ>を使いました」
「ふりだと……」
「軌道が分かっていればその次に考えるのは避けた後のカウンターです。そしてどこを攻撃するか……その最適解は……」
ふらついてその場を動くことができないエドウィンにゆっくりと近づいていくサテラ。
「ここです!」
<パワースラッシュ!>
サテラ渾身のアッパーがエドウィンの顎に直撃した。
「がはっ!」
エドウィンの体が宙を舞いそのまま地面に叩きつけられた。
「エドウィンさん!」
その姿を見たタパが駆け寄ろうとするが、スーザン止めに入る。
「案内人はフィールドの立ち入りはできません。私が確認します」
スーザンはエドウィンの所へ瞬間移動し、膝をたたみエドウィンの顔を触り容体を確認した。
「ふむ、まあ確認する必要もないわね、木製とはいえあの強烈なアッパーくらって平気な子はいないわ。決まりね」
そのままゆっくりと立ち上がり、フィールドの中心に立った。
「エドウィン選手、スタン確認。試合終了!」
「勝者、ナヴィ・マクレガン、サテラ・ビル・ベルフラウペア!」
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」
会場全体で大歓声が沸き起こった。
観客席にいたとあるアカデミー生が拍手をしながら話をしていた。
「まじかよ、あのひ弱な王女様が次席のエドウィンを」
「ふん、エドウィンが油断して戦うからよ」
「それにしても二人ともいつもの動きと全然違ったよな」
「えぇ、これが『案内人』の力ってやつなのかしら」
「あぁ、なんか良くも悪くも案内人の効果がよく分かったよ。特にサテラの方は」
「うん。たった一日でここまで変わるのかしら」
「一日じゃ教えるので精一杯なはずだよな?」
「うん、どうしてかしら」
「ふっふっふ。その答え僕が教えてあげようかい?」
「「あなたは?」」
たまたま隣にいて話を聞いていたハンナが会話に入っていった。
ハンナはそのままそのアカデミー生に数分間昨日の特訓の内容を話した。
「……ということなの!」
「なるほど、つまりもともと持っていた格闘術と双剣をばらばらに使っていたからそれをつなげる練習をハンナさんとしてたってことなんですね。だからあんなにスムーズに回避と攻撃を同時に行うことができてたのか……」
「そういうこと、それにあの子は頭が良かったからエンフィーの持ってきたエドウィンの情報と癖をインプットしてそれを確認しながら戦ってたんだ。大きくはこの二つかな」
「へぇ、そちらの私たちと同い年くらいの『案内人さん』が?」
「ちょっ、ちょっとハンナさん。そんなにべらべら特訓の情報を言わなくても……」
「まぁまぁ、今日は勝ったんだしみんなもサテラちゃんのこと少しは認めてくれたから大丈夫だよ」
おめでとうサテラちゃん。君も他の子たちと、いやそれ以上に戦うことができるんだよ。今の気持ちを一杯噛みしめてね。
「勝った……。私があのエドウィンに……」
サテラは目の前で起きている事象がまるで自分のことではないかのように何も考えずただ遠くを見つめていた。
「サテラちゃーん!」
ナヴィは全速力でフィールドに駆け込みサテラを抱きしめた。
「おめでとう! 最後はどうなるかと思っちゃったよ……」
「ナ、ナヴィさん。ありがとうございます! 心配かけてしまってすみません。今日の勝利は全部ナヴィさんのおかげです!」
「ううん。この勝利は全部これまでのサテラちゃんの努力から手に入れたものよ。あたしはその一つ一つの点を結んだだけ」
「そうですけど、やっぱり私ナヴィさんがペアで良かったです!」
「ふふ、その言葉このトーナメントで優勝した時にまた聞かせてね」
「はい! 絶対ナヴィさんを優勝させます!」
『絶対』ね。いい顔になったじゃない。
その二人の姿を近くで見ていたスーザンが二人を見つめながら微笑む。
おめでとうナヴィさん、サテラちゃん。
今回の第一試合『案内人』の質が勝敗を露骨に左右したわね。方やしっかりとした信頼関係が構築され、冒険者が一人では絶対に引き出せない力を十分に引き出し勝利。方や、ばらばらの状態で臨んだ方は、冒険者の実力はあるもその実力の半分も引き出せず、むしろ足を引っ張ってそのまま負けていった。
このトーナメントはよほどの実力差がある場合を除いてアカデミー生自体の実力は殆ど勝敗に関係ない。
しっかりとその趣旨を理解して信頼関係を作り、相手の状況を見て上手くそこを漬け込んだナヴィさんの完全勝利ね。
「さて! それでは皆さん十分後に第二試合を始めたいと思います!」
「おいおいどうなったんだ……」
「わからねぇ。見えねぇよ」
「まさかエドウィンが負けるなんてないよな」
「さぁ、でもさっきの様子じゃ……」
「お、煙が晴れていくぞ」
時間の経過とともにフィールドを埋め尽くしていた煙が消えていく。
会場はその煙の消える音が鮮明に聞こえてくるほど静まり返っていた。
「エンフィー目大丈夫?」
「はい、少し目に土煙が入って……それよりも二人の様子は?」
サテラちゃん……立っていてくれ……。
お、人影が、あれは。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。てこずらせやがって。ようやく俺の槍がお前を捉えたな王女様」
先に姿を現したのはエドウィンだった。そしてエドウィンの目の前にはボロボロになり、片膝をついて呼吸が乱れていたサテラの姿が現れた。
それを見たナヴィがフィールドの外から叫んだ。
「サテラちゃん! サテラちゃん!」
まずい、このままだと一気にやられちゃう。
「ふっ、そのまま惨めにここでぶっ倒れな」
エドウィンが槍を握りしめ思い切り振り上げた。
「よっしゃエドウィンさん! これで『俺たち』の勝ちだ」
「違うなタパ、『俺』の勝ちだ!」
目一杯反らせた体を使い振り下ろそうとした瞬間だった。
「あ、あれ……」
エドウィンの体がふらつき始め、それと同時に振り上げていた槍が手からするりと抜けていった。
「なんで……」
「ふふ、甘かったですね」
その場で膝をついていたサテラがゆっくりと立ちあがった。
「サテラ。くそ、てめぇ何をした」
「あなたが闇雲に必殺技を出したときに、私はあなたの攻撃がどういう軌道で襲ってくるのかすぐにわかりました。そして私もそれに乗ったふりをして<ダブルスラッシュ>を使いました」
「ふりだと……」
「軌道が分かっていればその次に考えるのは避けた後のカウンターです。そしてどこを攻撃するか……その最適解は……」
ふらついてその場を動くことができないエドウィンにゆっくりと近づいていくサテラ。
「ここです!」
<パワースラッシュ!>
サテラ渾身のアッパーがエドウィンの顎に直撃した。
「がはっ!」
エドウィンの体が宙を舞いそのまま地面に叩きつけられた。
「エドウィンさん!」
その姿を見たタパが駆け寄ろうとするが、スーザン止めに入る。
「案内人はフィールドの立ち入りはできません。私が確認します」
スーザンはエドウィンの所へ瞬間移動し、膝をたたみエドウィンの顔を触り容体を確認した。
「ふむ、まあ確認する必要もないわね、木製とはいえあの強烈なアッパーくらって平気な子はいないわ。決まりね」
そのままゆっくりと立ち上がり、フィールドの中心に立った。
「エドウィン選手、スタン確認。試合終了!」
「勝者、ナヴィ・マクレガン、サテラ・ビル・ベルフラウペア!」
「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」
会場全体で大歓声が沸き起こった。
観客席にいたとあるアカデミー生が拍手をしながら話をしていた。
「まじかよ、あのひ弱な王女様が次席のエドウィンを」
「ふん、エドウィンが油断して戦うからよ」
「それにしても二人ともいつもの動きと全然違ったよな」
「えぇ、これが『案内人』の力ってやつなのかしら」
「あぁ、なんか良くも悪くも案内人の効果がよく分かったよ。特にサテラの方は」
「うん。たった一日でここまで変わるのかしら」
「一日じゃ教えるので精一杯なはずだよな?」
「うん、どうしてかしら」
「ふっふっふ。その答え僕が教えてあげようかい?」
「「あなたは?」」
たまたま隣にいて話を聞いていたハンナが会話に入っていった。
ハンナはそのままそのアカデミー生に数分間昨日の特訓の内容を話した。
「……ということなの!」
「なるほど、つまりもともと持っていた格闘術と双剣をばらばらに使っていたからそれをつなげる練習をハンナさんとしてたってことなんですね。だからあんなにスムーズに回避と攻撃を同時に行うことができてたのか……」
「そういうこと、それにあの子は頭が良かったからエンフィーの持ってきたエドウィンの情報と癖をインプットしてそれを確認しながら戦ってたんだ。大きくはこの二つかな」
「へぇ、そちらの私たちと同い年くらいの『案内人さん』が?」
「ちょっ、ちょっとハンナさん。そんなにべらべら特訓の情報を言わなくても……」
「まぁまぁ、今日は勝ったんだしみんなもサテラちゃんのこと少しは認めてくれたから大丈夫だよ」
おめでとうサテラちゃん。君も他の子たちと、いやそれ以上に戦うことができるんだよ。今の気持ちを一杯噛みしめてね。
「勝った……。私があのエドウィンに……」
サテラは目の前で起きている事象がまるで自分のことではないかのように何も考えずただ遠くを見つめていた。
「サテラちゃーん!」
ナヴィは全速力でフィールドに駆け込みサテラを抱きしめた。
「おめでとう! 最後はどうなるかと思っちゃったよ……」
「ナ、ナヴィさん。ありがとうございます! 心配かけてしまってすみません。今日の勝利は全部ナヴィさんのおかげです!」
「ううん。この勝利は全部これまでのサテラちゃんの努力から手に入れたものよ。あたしはその一つ一つの点を結んだだけ」
「そうですけど、やっぱり私ナヴィさんがペアで良かったです!」
「ふふ、その言葉このトーナメントで優勝した時にまた聞かせてね」
「はい! 絶対ナヴィさんを優勝させます!」
『絶対』ね。いい顔になったじゃない。
その二人の姿を近くで見ていたスーザンが二人を見つめながら微笑む。
おめでとうナヴィさん、サテラちゃん。
今回の第一試合『案内人』の質が勝敗を露骨に左右したわね。方やしっかりとした信頼関係が構築され、冒険者が一人では絶対に引き出せない力を十分に引き出し勝利。方や、ばらばらの状態で臨んだ方は、冒険者の実力はあるもその実力の半分も引き出せず、むしろ足を引っ張ってそのまま負けていった。
このトーナメントはよほどの実力差がある場合を除いてアカデミー生自体の実力は殆ど勝敗に関係ない。
しっかりとその趣旨を理解して信頼関係を作り、相手の状況を見て上手くそこを漬け込んだナヴィさんの完全勝利ね。
「さて! それでは皆さん十分後に第二試合を始めたいと思います!」
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