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第八章 王都公認 案内人適性試験 最終試験編
76.四人の食卓
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最終試験開始の宣言が出され、会場を後にした受験者と見習い冒険者たち。ナヴィとサテラも同じように会場を背に歩き始めた。
「サテラちゃん、今日は夕方だけど、もしよかったら一緒に夜ご飯食べない?」
「へ? わ、わた、私ですか?」
「あはは。あなたしかいないわよ今日はあたしがご馳走してあげる!」
「あ、あ、ありがとうございます」
「あ、でもその前に二人と合流しようかしら……」
「ふ、二人、ですか?」
「えぇ、あ、いた」
「あ、おねぇちゃーん!」
「ふふ、その様子を見るに二次試験も突破したみたいだね」
ナヴィとサテラの視線の先には大きく手を振るエンフィーとハンナがいた。
「エンフィー、ハンナ。お待たせ」
「別に僕らは待ってはないけどね」
「お姉ちゃん! 見て見てこの装備!」
ナヴィと似た系統の純白のローブと杖をエンフィーは嬉しそうに見せた。
「うんうん、似合ってる。ってこれ、ほぼあたしと同じ装備じゃない!」
「そりゃエンフィーは君とほぼ同じ性質持ちなんだからしょうがないでしょ」
「あれ、ってことはエンフィーも……」
「うん、もちろん補助魔法使いよ! まぁでも私は第二属性で水属性が得意なことを知れたけどね」
「え! それもうあたしの完全な上位互換じゃん!」
これじゃいつエンフィーに抜かされてもおかしくない……。うかうかしてらんないわねぇ。
「いいのかいエンフィー、補助魔法の潜在能力自体はナヴィの方が上だったってこと言わなくて」
ハンナはエンフィーの耳に手を当てナヴィには聞こえないほどの小声で話す。
「大丈夫ですよ。今のお姉ちゃんはこのくらいでへこたれませんから、むしろ燃えるタイプだと思います。これでもっと強くなってもらって働いてもらわないと!」
「あはは、姉妹共々本当に君らは恐ろしいよ」
「何二人でさっきからこそこそ話してるの?」
「うわぁお姉ちゃん近いよ! びっくりするじゃん!」
「あたしの方がエンフィーの報告聞いてびっくりしたんだからいいでしょこのくらい」
「もぉぉ。って、あれ、その子は……?」
エンフィーはナヴィの後ろに隠れていた小さな見習い冒険者を指さした。
「……」
ナヴィのスカートの裾をぎゅっと掴み顔を半分出すサテラ。
「あぁ、この子についてなんだけど……」
その瞬間、ナヴィの背後からギュルルとお腹の音が鳴った。
三人がサテラの方に目を向けた。
「ひっ!」
「あ、あぁあたしもお腹減ったわ。とりあえずここじゃなんだし、この子のことも含めてご飯にしましょうか?」
さらに隠れるサテラにナヴィは優しく微笑んだ。
「やったーおねぇちゃんのおごりだぁ!」
「やったー! 僕ももうお金ないんだよね」
「あんたたちは自分で出しなさい。あたしが奢るのはサテラだけよ」
「「そんなぁー」」
こうして四人は近くのレストランに入り、夜ご飯を食べることになった。
「……おいしい」
「うんうん。この鶏肉最高だよね!」
「あ、エンフィーあたしの取らないで!」
「いいじゃーん一口ぐらい」
少々値が張る高級レストランだったがその分四人は食事を楽しんでいた。
「そういえばサテラちゃんは冒険者見習いなんだって? 武器は何を使っているんだい?」
「……そ、双剣です」
「お、僕と一緒じゃん!」
驚きと嬉しさから、ガタンと大きな音を立て立ち上がったハンナ。
その音を聞いた他の客がハンナたちを凝視していた。
「あ、あはは。す、すみませーん」
ゆっくりと静かに座る。
「ハ、ハンナさんも、そ、双剣なんですか?」
お、サテラちゃんこの話には食らいつくのね……。
「えぇ、ハンナは双剣使いよ。あたし達の村ではそこそこ有名な冒険者よ」
「ちょっと! そこそこってなんだよ!」
「まぁ、一番ではないもんね。上から数えた方が早いのは間違いないけど」
「エンフィーまで……」
これはもしかして。
「ねぇ、サテラちゃん。もしよければ明日ハンナと一緒に特訓してみない?」
ナヴィがニコニコとしながら提案した。
「ちょっと! 僕はまだ何も」
「いいでしょハンナ、どうせ暇なんだから」
「いいんですか!?」
先ほどのハンナと同じようにサテラも勢い良く立った。
「あ、う、うん。僕で良ければ」
その勢いに押されるかのように了承した。
「よろしくお願いします!」
頭を深々と下げたサテラにナヴィは驚いた。
この子、ただの恥ずかしがり屋のコミュ障かと思ったけど、そんなこともないのね。
「ん……あれ?」
それを見ていたエンフィーは何かに気づき、サテラに話しかけた。
「ねぇ、サテラちゃん。あなたのその綺麗な髪飾り」
「あ、あの、こ、これは」
その言葉を聞いた瞬間に動揺し始めるサテラ。
「サテラちゃん。あなた、下の名前は?」
「あ、あの、わ、わたし」
「ん? どうしたのサテラちゃん? エンフィーどういうこと?」
「あのダイヤモンドの髪飾り、そしてサテラという名前。どこかで聞いたと思ったらやっぱり……」
「あの、エ、エンフィーさん! や、やめ」
「たぶんあなたの名前は。サテラ・ビル・ベルフラウ」
「ベルフラウ……? それってもしかして」
ハンナが腕を組んで考え始めた。
「王家の第一王女よ」
「え!? あなた王女様だったの!?」
サテラは小さく頷き、そのまま俯いた。
「サテラちゃん、今日は夕方だけど、もしよかったら一緒に夜ご飯食べない?」
「へ? わ、わた、私ですか?」
「あはは。あなたしかいないわよ今日はあたしがご馳走してあげる!」
「あ、あ、ありがとうございます」
「あ、でもその前に二人と合流しようかしら……」
「ふ、二人、ですか?」
「えぇ、あ、いた」
「あ、おねぇちゃーん!」
「ふふ、その様子を見るに二次試験も突破したみたいだね」
ナヴィとサテラの視線の先には大きく手を振るエンフィーとハンナがいた。
「エンフィー、ハンナ。お待たせ」
「別に僕らは待ってはないけどね」
「お姉ちゃん! 見て見てこの装備!」
ナヴィと似た系統の純白のローブと杖をエンフィーは嬉しそうに見せた。
「うんうん、似合ってる。ってこれ、ほぼあたしと同じ装備じゃない!」
「そりゃエンフィーは君とほぼ同じ性質持ちなんだからしょうがないでしょ」
「あれ、ってことはエンフィーも……」
「うん、もちろん補助魔法使いよ! まぁでも私は第二属性で水属性が得意なことを知れたけどね」
「え! それもうあたしの完全な上位互換じゃん!」
これじゃいつエンフィーに抜かされてもおかしくない……。うかうかしてらんないわねぇ。
「いいのかいエンフィー、補助魔法の潜在能力自体はナヴィの方が上だったってこと言わなくて」
ハンナはエンフィーの耳に手を当てナヴィには聞こえないほどの小声で話す。
「大丈夫ですよ。今のお姉ちゃんはこのくらいでへこたれませんから、むしろ燃えるタイプだと思います。これでもっと強くなってもらって働いてもらわないと!」
「あはは、姉妹共々本当に君らは恐ろしいよ」
「何二人でさっきからこそこそ話してるの?」
「うわぁお姉ちゃん近いよ! びっくりするじゃん!」
「あたしの方がエンフィーの報告聞いてびっくりしたんだからいいでしょこのくらい」
「もぉぉ。って、あれ、その子は……?」
エンフィーはナヴィの後ろに隠れていた小さな見習い冒険者を指さした。
「……」
ナヴィのスカートの裾をぎゅっと掴み顔を半分出すサテラ。
「あぁ、この子についてなんだけど……」
その瞬間、ナヴィの背後からギュルルとお腹の音が鳴った。
三人がサテラの方に目を向けた。
「ひっ!」
「あ、あぁあたしもお腹減ったわ。とりあえずここじゃなんだし、この子のことも含めてご飯にしましょうか?」
さらに隠れるサテラにナヴィは優しく微笑んだ。
「やったーおねぇちゃんのおごりだぁ!」
「やったー! 僕ももうお金ないんだよね」
「あんたたちは自分で出しなさい。あたしが奢るのはサテラだけよ」
「「そんなぁー」」
こうして四人は近くのレストランに入り、夜ご飯を食べることになった。
「……おいしい」
「うんうん。この鶏肉最高だよね!」
「あ、エンフィーあたしの取らないで!」
「いいじゃーん一口ぐらい」
少々値が張る高級レストランだったがその分四人は食事を楽しんでいた。
「そういえばサテラちゃんは冒険者見習いなんだって? 武器は何を使っているんだい?」
「……そ、双剣です」
「お、僕と一緒じゃん!」
驚きと嬉しさから、ガタンと大きな音を立て立ち上がったハンナ。
その音を聞いた他の客がハンナたちを凝視していた。
「あ、あはは。す、すみませーん」
ゆっくりと静かに座る。
「ハ、ハンナさんも、そ、双剣なんですか?」
お、サテラちゃんこの話には食らいつくのね……。
「えぇ、ハンナは双剣使いよ。あたし達の村ではそこそこ有名な冒険者よ」
「ちょっと! そこそこってなんだよ!」
「まぁ、一番ではないもんね。上から数えた方が早いのは間違いないけど」
「エンフィーまで……」
これはもしかして。
「ねぇ、サテラちゃん。もしよければ明日ハンナと一緒に特訓してみない?」
ナヴィがニコニコとしながら提案した。
「ちょっと! 僕はまだ何も」
「いいでしょハンナ、どうせ暇なんだから」
「いいんですか!?」
先ほどのハンナと同じようにサテラも勢い良く立った。
「あ、う、うん。僕で良ければ」
その勢いに押されるかのように了承した。
「よろしくお願いします!」
頭を深々と下げたサテラにナヴィは驚いた。
この子、ただの恥ずかしがり屋のコミュ障かと思ったけど、そんなこともないのね。
「ん……あれ?」
それを見ていたエンフィーは何かに気づき、サテラに話しかけた。
「ねぇ、サテラちゃん。あなたのその綺麗な髪飾り」
「あ、あの、こ、これは」
その言葉を聞いた瞬間に動揺し始めるサテラ。
「サテラちゃん。あなた、下の名前は?」
「あ、あの、わ、わたし」
「ん? どうしたのサテラちゃん? エンフィーどういうこと?」
「あのダイヤモンドの髪飾り、そしてサテラという名前。どこかで聞いたと思ったらやっぱり……」
「あの、エ、エンフィーさん! や、やめ」
「たぶんあなたの名前は。サテラ・ビル・ベルフラウ」
「ベルフラウ……? それってもしかして」
ハンナが腕を組んで考え始めた。
「王家の第一王女よ」
「え!? あなた王女様だったの!?」
サテラは小さく頷き、そのまま俯いた。
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