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第七章 王都公認 案内人適性試験編

68.グルーピング

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「『グループワーク』でのダンジョン探索?」


「第二次試験は皆さんでパーティー作成をしダンジョン探索を行ってもらいます!」


「これはまた随分シンプルな試験だな」

「あわわわ、どうしようケビン。グループワーク来ちゃったわ」

 落ち着いている様子のケビンに対してナヴィは慌てふためいていた。

 その間もスーザンは説明を続ける。

「細かい内容は正午にお伝えします。グルーピングは集合時間がリミットになります。その間に頑張ってパーティーを作って下さいね! 上限はありませんが、先に言っておくと人数が多ければいいという内容ではないのでそれを考慮した上でメンバーを集めてください」

「現段階での説明は以上になります。それではまた正午にここでお会いしましょう!」


 スーザンは言い終えるとテラスから姿を消した。

「これは困ったわね、とりあえずあたしとケビンで二人」

「スリーマンセルが戦闘や探索の必要最小限の人数だ。最低でもあと一人ほしいが……」

 ならブランさん……あ、でもさっきなぁ。あんなに睨んでいたし……。

 ナヴィは一度ブランの様子を見に行った。

「ケビン。ブランさん、有力そうな人たち五人でもうパーティー作ってる……」

「あぁそうだな。しかしナヴィ。ブランだけではなく周りをよく見てみろ」

「……? あれ、もしかしてあたし達めちゃくちゃ避けられてる?」

 なんかあたし達の周りになんとも言えない空間が作られてるし。

「変に天才なんて言われてるから毛嫌いするやつも多いんだよ」

「なるほど……これは困ったわね」

 スリーマンセルもわかるけど多分最適な人数は四人から五人、多ければ多いほど色んなことに対処できるし、何とも言えないわよね。

「ナヴィ?」

「何かしら」

「ルナ・マリオットはどうだ?」

「確かに! そうじゃん! ルナがいるじゃん」

「あいつも俺ら同じ天才と呼ばれている。同じ境遇だからまず他の奴らとはパーティーは組めないだろうしな」

「うん、でも……」

 あたしルナとちゃんと会話できるかしら。ルナの顔を見るたびにあの時のテリウス様とルナの後姿の光景がフラッシュバックされるし……。

「やっぱりお前らなんかあったろ?」

 ナヴィに顔をぐっと近づけるケビン。

「なななな、そそんなことないわよ」

 ナヴィは頬を赤らめながらケビンから顔をそらす。

「まぁ、理由は何でもいいがここにはもういないぞ」

「え! ルナもうパーティーできたのかしら……」

「いや、むしろ逆だ」

「どういうこと?」

「さっき言っただろ、俺達と同じ境遇だって。それにお前から聞いたルナ・マリオットの性格上、きっとパーティーを作ることが無理だと思ってここからいなくなったんだろうな」 

「そっか……」

 きっとテリウス様の一件があったからあたしにも声が掛けられずに一人で行っちゃったんだ。

「ケビン!」

 これはあたしが起こした問題だし、このままルナと疎遠になっちゃうのも嫌だ!

「行くか?」

 ナヴィの真剣な眼差しにケビンも応えた。

「ええ、ルナを探すの手伝ってもらえるかしら」

「あぁ、もちろんだ」

 二人は他の受験者がグループ作りをしている中早々に会場を後にし、ルナの捜索に当たった。



 その頃、ルナは会場近くの裏路地に座り込んでいた。

「はぁ、やっぱりわたくしにはこの試験はできません」

 まさかグループワークだなんて。周りはわたくしのことを避けていたし誰もパーティーになろうとしてくれなかった……。

 それにナヴィさんも……。

「あの一件がなければ素直に話しかけに行けたのかな……」

 もう、わたくしの馬鹿。

 首をがくんと落とし、大きなため息をついた。

 そこから数時間が経ち時刻はあと数分で正午となるところだった。

「やっぱり辞退しよう。わたくしにこの試験を突破することは不可能です……」

 諦めのついたルナはその場から立ち上がり、会場に辞退を告げようと歩き出した瞬間。遠くから耳なじみのある声が聞こえてきた。

「ルーナー!」


「え?」

 そんな、まさかね……。気のせいだわ。きっとわたくしがそうなってほしいと思ってるから幻聴として聞こえてくるんだ。


「ルナ-! どこにいるのよー!」
「お願い出てきて、あなたの力が必要なの!」

 え、やっぱり聞こえてくる……。

 ルナは自分を呼ぶ声の方に向かい走り始めた。

「なんで、なんで、なんでなんでなんで……」

 あんなにナヴィさんを苦しめてしまったはずなのに……どうしてわたくしを呼ぶんですか。

 わたくしなんて、わたくしなんて……。


 ルナは先ほどまで座り込んでいた裏路地を抜けるとそこにはナヴィの姿があった。

「ふふ、ごきげんよう。ルナ」

 ナヴィはルナに笑顔を向けた。

「ナ、ナヴィさん……なんで……」

 それとは対照的にルナの目には涙が溜まっていた。

「細かい話は後よ。ルナ、あたし達のパーティーに入らない?」

 涙ぐむルナの顔の前にナヴィは手を差し伸べた。

「ナヴィさん……でもわたくしは……」

「だーかーら! 細かい話は後で! で、どうするの、もう時間になっちゃうよ!」

 ルナはボロボロと泣き始めた。

「え、ちょっとル、ルナ?」

 ルナは鼻を大きくすすり、噴き出てくる涙を袖で数回拭いた後、ナヴィの手を取った。

「ぐすっ。よろしくお願いします」

「あはは、泣きながら言わないでよ、では改めてよろしくね! ルナ!」

「はい!」

「泣くか笑うかどっちかにしなさいよ!」

 ナヴィさんの手、すごくあったかい……。

 ナヴィさん絶対辛かったはずなのにきっともう前に進もうとしているんだ。
 わたくしも前に進まなきゃ。

 こうして手を取りあった二人はその後ケビンと合流し、二次試験の会場に向かっていった。
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