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第六章 コイルとエンフィー『幸運の聖水』を求めて
59.王都公認の
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「王都のために近々このお店を辞めていただきます」
「「は……」」
ブレビンスの一言で店内に数秒の沈黙が流れた。
そこからナヴィが咳ばらいをし、口を開く。
「あの、ブレビンス様。おっしゃってる意味が私にはよく理解できないのですが……」
「あはは、簡潔に言ったつもりなんですけどね……」
ブレビンスが苦笑いで答える。
「ブレビンス様。言葉が足りなすぎます。これでは『あなたは案内人を辞めなさい』と言われているようにとらえてしまいますよ」
「え、そうなの、スーザンちゃん!?」
あの眼鏡を掛けた白髪の女性はがスーザンさん? 確か今は世界に十数人しかいないって言われてる『アドバイザークラス』の凄腕案内人……だったはずじゃ。
「あの……」
「あ、すみません口を挟んでしまって。わたくし、ブレビンス様の秘書を務めております。スーザン・アレスと申します。ナヴィ・マクレガンさん。そしてエンフィー・マクレガンさんお会いできる日を楽しみにしておりました」
スーザンは手を差し出した。
「い、いえこちらこそお会いできて光栄です」
ナヴィは快く握手に応じる。
この人噂通りすっごい若いし綺麗な方。確か二十五歳くらいだったはず。その年でもう凄腕のベテラン案内人だなんて。どんなインフレの起こし方よ。
「ナヴィさん。うちの理事長がすみません。こういう話し方なものでよくトラブルに巻き込まれてしまうんです」
「あはは、そ、そうなんですね。それでさっきの話なんですけど……」
「あ、そうね……そのことは」
「ちょっとちょっとスーザンちゃん! 僕を抜きにして話さないでよぉ」
横からブレビンスが入ってきた。
「あの、ちょ、理事長近いです! 気持ち悪いのですりすりしないでください!」
「なーに僕らの中じゃないか」
ブレビンスの手がスーザンの尻を掴む。
「ちっこのエロおやじ……本当にいい加減に」
<エアシュート!>
「ぎょえぇぇぇ!」
「ちょ! エンフィー!」
弾丸が飛んできた方向にはくるくると杖を回しているエンフィーがいた。
「あの、いいから早く説明してもらえますかね」
うわ、エンフィー。頭に怒りマークがついてるわよ。丸見えだわ。そしてブレビンス様気絶しちゃってる……。威力も弱めてなかったのね。
「エンフィー。一応ブレビンス様を運んでもらえるかしら。裏でいいから」
「はーい! 縄とかで縛っておいた方がいいかな?」
「それはもはや粗相だよ。そのままにしておいてくれればいいから」
「すみませんスーザンさん。捕まりますかね私たち」
「ふふ、大丈夫ですよ。それに先に捕まるならあの方ですから」
この人単純な部下って感じでもないのかな。あんまり気にしてる様子もないし。
「あ、立ち話もなんですし、ぜひこちらにお掛けになって下さい。飲み物はコーヒーでよろしいでしょうか?」
「あら、ご丁寧にありがとう」
ナヴィがコーヒーを淹れ終わり、カウンターで楽しそうに話すエンフィーとスーザンの前に置いた。
「お待たせしました。お口に合うかどうかわかりませんが……」
「ありがとう。では早速……うん、とってもおいしいコーヒーね」
「良かったです。そういえば二人で楽しそうに何の話をしていらしたのですか?」
「お姉ちゃん。やっぱりスーザンさんはすごいよ! 今まで苦労したこととか、レベル六十クラスの冒険者様との同行とか勉強になる話ばっかりでもうずっと話聞いてたいって感じで!」
興奮気味に話すエンフィーにスーザンが微笑みながら話を続ける。
「いえいえ。エンフィーさんたちの方がすごいわ。二人ともその年でもうガイドと上級ガイドだなんて。王都での二人の評判にも頷ける」
「えへへ、まだまだですよ。私たちが目指すのは『スーパーアドバイザー』ですから。ね、お姉ちゃん」
「ええ。そのためにもたくさん同行して実力も付けてお店も大きくしていかないとね」
「ふふ、いい姉妹ですね。流石はトニー・マクレガン様の孫娘。」
「さて、そしたら二人とも早速話を始めてもいいかしら?」
「「は、はい」」
二人は一度小さく息を吐き何を言われても大丈夫なようと身構えた。
「さっきの理事長の話は半分は本当のことなの」
「え、じゃあやっぱりあたし達の店は……」
「ふふ。だから少しだけ付け加えさせてほしいわ」
「……?」
「『フリーで活動する案内所』を辞めて、あなた達のお店を『王都公認の案内所』にしない?」
「王都公認……ですか?」
そんなのあったんだ。全然知らなかった。
「エンフィーは知ってた?」
「一応……でも何が違うのかあんまりわからないけど」
「うん。まぁこの村にはあまり王都の情報とかは来ないもんね。知らなくても無理ないわ」
「その……王都公認の案内所ってどうやったらなれるものなんですか……?」
「お、食いつきがいいわね……それは……これよ!」
スーザンはテーブルに一枚の紙を出した。
「これは。チラシ……ん? なになに。」
ナヴィとエンフィーは身を乗り出しチラシの内容を読んだ。
『集え! 伝説の案内人になりゆく者たちよ! 第三十回 王都公認 案内人適性試験 開催決定!』
「案内人適性試験……?」
「そう、ナヴィさん。あなたにはこれに出てもらおうと思って今日ここに来たのよ!」
第六章 コイルとエンフィー『幸運の聖水』を求めて 完
「「は……」」
ブレビンスの一言で店内に数秒の沈黙が流れた。
そこからナヴィが咳ばらいをし、口を開く。
「あの、ブレビンス様。おっしゃってる意味が私にはよく理解できないのですが……」
「あはは、簡潔に言ったつもりなんですけどね……」
ブレビンスが苦笑いで答える。
「ブレビンス様。言葉が足りなすぎます。これでは『あなたは案内人を辞めなさい』と言われているようにとらえてしまいますよ」
「え、そうなの、スーザンちゃん!?」
あの眼鏡を掛けた白髪の女性はがスーザンさん? 確か今は世界に十数人しかいないって言われてる『アドバイザークラス』の凄腕案内人……だったはずじゃ。
「あの……」
「あ、すみません口を挟んでしまって。わたくし、ブレビンス様の秘書を務めております。スーザン・アレスと申します。ナヴィ・マクレガンさん。そしてエンフィー・マクレガンさんお会いできる日を楽しみにしておりました」
スーザンは手を差し出した。
「い、いえこちらこそお会いできて光栄です」
ナヴィは快く握手に応じる。
この人噂通りすっごい若いし綺麗な方。確か二十五歳くらいだったはず。その年でもう凄腕のベテラン案内人だなんて。どんなインフレの起こし方よ。
「ナヴィさん。うちの理事長がすみません。こういう話し方なものでよくトラブルに巻き込まれてしまうんです」
「あはは、そ、そうなんですね。それでさっきの話なんですけど……」
「あ、そうね……そのことは」
「ちょっとちょっとスーザンちゃん! 僕を抜きにして話さないでよぉ」
横からブレビンスが入ってきた。
「あの、ちょ、理事長近いです! 気持ち悪いのですりすりしないでください!」
「なーに僕らの中じゃないか」
ブレビンスの手がスーザンの尻を掴む。
「ちっこのエロおやじ……本当にいい加減に」
<エアシュート!>
「ぎょえぇぇぇ!」
「ちょ! エンフィー!」
弾丸が飛んできた方向にはくるくると杖を回しているエンフィーがいた。
「あの、いいから早く説明してもらえますかね」
うわ、エンフィー。頭に怒りマークがついてるわよ。丸見えだわ。そしてブレビンス様気絶しちゃってる……。威力も弱めてなかったのね。
「エンフィー。一応ブレビンス様を運んでもらえるかしら。裏でいいから」
「はーい! 縄とかで縛っておいた方がいいかな?」
「それはもはや粗相だよ。そのままにしておいてくれればいいから」
「すみませんスーザンさん。捕まりますかね私たち」
「ふふ、大丈夫ですよ。それに先に捕まるならあの方ですから」
この人単純な部下って感じでもないのかな。あんまり気にしてる様子もないし。
「あ、立ち話もなんですし、ぜひこちらにお掛けになって下さい。飲み物はコーヒーでよろしいでしょうか?」
「あら、ご丁寧にありがとう」
ナヴィがコーヒーを淹れ終わり、カウンターで楽しそうに話すエンフィーとスーザンの前に置いた。
「お待たせしました。お口に合うかどうかわかりませんが……」
「ありがとう。では早速……うん、とってもおいしいコーヒーね」
「良かったです。そういえば二人で楽しそうに何の話をしていらしたのですか?」
「お姉ちゃん。やっぱりスーザンさんはすごいよ! 今まで苦労したこととか、レベル六十クラスの冒険者様との同行とか勉強になる話ばっかりでもうずっと話聞いてたいって感じで!」
興奮気味に話すエンフィーにスーザンが微笑みながら話を続ける。
「いえいえ。エンフィーさんたちの方がすごいわ。二人ともその年でもうガイドと上級ガイドだなんて。王都での二人の評判にも頷ける」
「えへへ、まだまだですよ。私たちが目指すのは『スーパーアドバイザー』ですから。ね、お姉ちゃん」
「ええ。そのためにもたくさん同行して実力も付けてお店も大きくしていかないとね」
「ふふ、いい姉妹ですね。流石はトニー・マクレガン様の孫娘。」
「さて、そしたら二人とも早速話を始めてもいいかしら?」
「「は、はい」」
二人は一度小さく息を吐き何を言われても大丈夫なようと身構えた。
「さっきの理事長の話は半分は本当のことなの」
「え、じゃあやっぱりあたし達の店は……」
「ふふ。だから少しだけ付け加えさせてほしいわ」
「……?」
「『フリーで活動する案内所』を辞めて、あなた達のお店を『王都公認の案内所』にしない?」
「王都公認……ですか?」
そんなのあったんだ。全然知らなかった。
「エンフィーは知ってた?」
「一応……でも何が違うのかあんまりわからないけど」
「うん。まぁこの村にはあまり王都の情報とかは来ないもんね。知らなくても無理ないわ」
「その……王都公認の案内所ってどうやったらなれるものなんですか……?」
「お、食いつきがいいわね……それは……これよ!」
スーザンはテーブルに一枚の紙を出した。
「これは。チラシ……ん? なになに。」
ナヴィとエンフィーは身を乗り出しチラシの内容を読んだ。
『集え! 伝説の案内人になりゆく者たちよ! 第三十回 王都公認 案内人適性試験 開催決定!』
「案内人適性試験……?」
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