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第四章 『上級ガイド』のダンジョン探索編

30.罠地獄

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 四つに分岐された道を見て立ち尽くすナヴィ。

「いいや、ちょっと休憩……」

 近くにあった座れそうなちょうどいい岩に腰かけると、前回踏んだ岩のスイッチと同様下に埋まっていった。

「え、う、うそ! これも!」

 その岩はめり込み続けると一気に足元が崩れ、ナヴィとともに下に落ちていった。



「いたたた……くない? 痛くない!」

 十メートルほどの大きな穴に落ちたがナヴィは無傷だった。

「下も思ったより広いわね……ん? なんだろこのぬるぬるというかべとべとというか、そういえば地面もすごく柔らかいし……」

 粘液のようなものに体を覆われながらきょろきょろと周りを見渡していると、その柔らかな地面からナヴィの身体ほどのサイズの目がぎょろっと開いた。

「え、モンスター? しかもこの赤くて途中途中にある斑点って、まさか吸盤?」
「タコ!? 大きすぎない?」

 慌ててそのタコ型モンスターから降りようとするが粘液が体に付着していて思うように進まない。

 タコのモンスターは起き上がり、その大きな足の一本でナヴィの足を絡めとった。

「きゃ! ちょっと下ろしなさいよ!」

 タコはナヴィを逆さ吊りにして何度も左右に振った。

 待って、これって遊ばれてる……? 攻撃はされてないのよね。
 よし、ここは……。

 ナヴィは死体のよう振る舞い全く動かなくなった。

 最初は楽しそうにしていたタコもナヴィの反応を見ることができず死んでしまったと判断したのか、ナヴィをポイっと捨てた。


「いでっ。まだそのままの方がいいかしら」

 顔から落ちたナヴィは尻を突き出した体制のまま数秒動かずに死体の振りを続けた。

 その後それを見たモンスターはナヴィに黒い液体を放射した。


「ぎゃぁぁぁ。黒い液体? 墨?」

 ナヴィの純白のローブに黒い斑点がそこら中にかかった。

 うーローブがぁ。早く帰って洗濯したい……。遊び終わった相手に墨をかけるなんてどんなだめ押しよ全く。まぁそれ以外はほとんど無害だから助かったわ。

「じゃあ脱出しますか。」
<フライ!>

 ナヴィに白い羽が生え、岩が落ちていった際にできた穴の出口に向かって飛んだ。

 落ちる前にこうしておけばよかったかしら……。そうすれば粘液まみれ、その上から墨のコーティング。こんなことにはならなかったわ。

「えーっとここの四つの分岐された道で休憩は避けた方がよし。トラップが仕掛けられていて、タコ型モンスターのいる部屋に落とされる。ちなみにタコ型モンスターは遊ぶだけでほぼ無害。粘液と墨には注意っと」

 データを取り終えたナヴィは先を急ぐことにした。

「意外とここまででかなりの時間がかかるのね。まぁあたしの場合わざと全部引っかかってるからってのもあるけど……。とりあえずこの四つの分岐の正解は多分右から二番目」


 だけど結局全部行ってみないと攻略情報にはならないわよね。仕方ないかぁ。

 結局全ての道を回ることにしたナヴィ。各部屋には先ほど同様様々なトラップが仕掛けけられていた。

 属性攻撃や状態異常、急なモンスターの出現など初見ではほとんど対処できない内容だったが、補助魔法をうまく使いつつナヴィは最後の右から二番目の道を進む。

 しかし、ナヴィの心は完全に折れていた。

「はぁはぁ。マップ作成と攻略情報の収集がこんなに疲れるなんて……今度からあんまり引き受けないようにしよ、受け取る金額と労力が絶対に見合ってないもの! もー早く終わりたい」

 泣きそうになりながら右側の道に入っていくナヴィ。

 その後ナヴィは数分歩いているが、足元が悪いこと以外今まで無数にあったトラップが一つも見かけられずにいた。

 もしかしてこれはビンゴかしら。多分この先にレアアイテムが。

「あれ、行き止まり……、ん? あの独特な水色のオーブ。まさか、まさかね……」

 ナヴィの顔が徐々に引きつり始め、肩をがっくしと落とした。

「ボス戦なんて聞いてないよ。まぁ探索するのあたしがほぼ初めてだと思うけどさぁ」

 まぁでもとりあえずこれで終わりって考えればマップ作製も終了だし、最後だからやるしかないわね。

 やれることはここでやっておこうかしら。

 ナヴィは魔力を練り始めた。

<アタックグロウ!>
<ディフェンドグロウ!>
<マジックグロウ!>
<アクセル!>

 赤、青、紫、青と様々なオーラを纏った。

「よし、これでオーケー。行くわよボス戦」

 ナヴィが水色のオーブの前に立つと、転移魔法の魔法陣が展開され、強制的に移動させられた。

 ナヴィは目を開ける。


 鍾乳洞の中には変わりないわねって、あれ? あれ? 足元がない!

「きゃぁぁぁぁぁ」

 下に落ちていくと水の中に入っていった。

 水? なんで? ん、苦しい。とりあえず上を目指さないと……。

 急いで息の吸えるところまで泳ぎ顔を水面から出す。

「もしかして、湖の中で戦うのかしら」

 ナヴィが状況把握をしていると、前から水面がゆらゆらと揺れ、何か大きな物体が動いているように見えた。

 あれがボスね。どんなモンスターかしら。

 そのボスは一気に体を水面からだし激しい水しぶきを上げた。

「で、ででででかぁぁぁぁぁ!」

 水面から勢いよく飛び出したのは直径二メートル、体長十五メートルはある大型のウナギ型モンスターだった。

「これは、どうやって戦うのよ……でもとりあえずこの湖での戦闘ってことね」
 ローブを脱ぎ捨て魔法を唱えた。

<マーメイル!>

 ナヴィの足が人魚のヒレに変わり、首筋には小さなえらが生えた。

 良かったこの魔法覚えておいて。これで水中でも息しながら戦える!


 全く……大変なダンジョンね。さぁあたしが攻略してあげるわ! かかってきなさい!
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