30 / 262
第四章 『上級ガイド』のダンジョン探索編
30.罠地獄
しおりを挟む四つに分岐された道を見て立ち尽くすナヴィ。
「いいや、ちょっと休憩……」
近くにあった座れそうなちょうどいい岩に腰かけると、前回踏んだ岩のスイッチと同様下に埋まっていった。
「え、う、うそ! これも!」
その岩はめり込み続けると一気に足元が崩れ、ナヴィとともに下に落ちていった。
「いたたた……くない? 痛くない!」
十メートルほどの大きな穴に落ちたがナヴィは無傷だった。
「下も思ったより広いわね……ん? なんだろこのぬるぬるというかべとべとというか、そういえば地面もすごく柔らかいし……」
粘液のようなものに体を覆われながらきょろきょろと周りを見渡していると、その柔らかな地面からナヴィの身体ほどのサイズの目がぎょろっと開いた。
「え、モンスター? しかもこの赤くて途中途中にある斑点って、まさか吸盤?」
「タコ!? 大きすぎない?」
慌ててそのタコ型モンスターから降りようとするが粘液が体に付着していて思うように進まない。
タコのモンスターは起き上がり、その大きな足の一本でナヴィの足を絡めとった。
「きゃ! ちょっと下ろしなさいよ!」
タコはナヴィを逆さ吊りにして何度も左右に振った。
待って、これって遊ばれてる……? 攻撃はされてないのよね。
よし、ここは……。
ナヴィは死体のよう振る舞い全く動かなくなった。
最初は楽しそうにしていたタコもナヴィの反応を見ることができず死んでしまったと判断したのか、ナヴィをポイっと捨てた。
「いでっ。まだそのままの方がいいかしら」
顔から落ちたナヴィは尻を突き出した体制のまま数秒動かずに死体の振りを続けた。
その後それを見たモンスターはナヴィに黒い液体を放射した。
「ぎゃぁぁぁ。黒い液体? 墨?」
ナヴィの純白のローブに黒い斑点がそこら中にかかった。
うーローブがぁ。早く帰って洗濯したい……。遊び終わった相手に墨をかけるなんてどんなだめ押しよ全く。まぁそれ以外はほとんど無害だから助かったわ。
「じゃあ脱出しますか。」
<フライ!>
ナヴィに白い羽が生え、岩が落ちていった際にできた穴の出口に向かって飛んだ。
落ちる前にこうしておけばよかったかしら……。そうすれば粘液まみれ、その上から墨のコーティング。こんなことにはならなかったわ。
「えーっとここの四つの分岐された道で休憩は避けた方がよし。トラップが仕掛けられていて、タコ型モンスターのいる部屋に落とされる。ちなみにタコ型モンスターは遊ぶだけでほぼ無害。粘液と墨には注意っと」
データを取り終えたナヴィは先を急ぐことにした。
「意外とここまででかなりの時間がかかるのね。まぁあたしの場合わざと全部引っかかってるからってのもあるけど……。とりあえずこの四つの分岐の正解は多分右から二番目」
だけど結局全部行ってみないと攻略情報にはならないわよね。仕方ないかぁ。
結局全ての道を回ることにしたナヴィ。各部屋には先ほど同様様々なトラップが仕掛けけられていた。
属性攻撃や状態異常、急なモンスターの出現など初見ではほとんど対処できない内容だったが、補助魔法をうまく使いつつナヴィは最後の右から二番目の道を進む。
しかし、ナヴィの心は完全に折れていた。
「はぁはぁ。マップ作成と攻略情報の収集がこんなに疲れるなんて……今度からあんまり引き受けないようにしよ、受け取る金額と労力が絶対に見合ってないもの! もー早く終わりたい」
泣きそうになりながら右側の道に入っていくナヴィ。
その後ナヴィは数分歩いているが、足元が悪いこと以外今まで無数にあったトラップが一つも見かけられずにいた。
もしかしてこれはビンゴかしら。多分この先にレアアイテムが。
「あれ、行き止まり……、ん? あの独特な水色のオーブ。まさか、まさかね……」
ナヴィの顔が徐々に引きつり始め、肩をがっくしと落とした。
「ボス戦なんて聞いてないよ。まぁ探索するのあたしがほぼ初めてだと思うけどさぁ」
まぁでもとりあえずこれで終わりって考えればマップ作製も終了だし、最後だからやるしかないわね。
やれることはここでやっておこうかしら。
ナヴィは魔力を練り始めた。
<アタックグロウ!>
<ディフェンドグロウ!>
<マジックグロウ!>
<アクセル!>
赤、青、紫、青と様々なオーラを纏った。
「よし、これでオーケー。行くわよボス戦」
ナヴィが水色のオーブの前に立つと、転移魔法の魔法陣が展開され、強制的に移動させられた。
ナヴィは目を開ける。
鍾乳洞の中には変わりないわねって、あれ? あれ? 足元がない!
「きゃぁぁぁぁぁ」
下に落ちていくと水の中に入っていった。
水? なんで? ん、苦しい。とりあえず上を目指さないと……。
急いで息の吸えるところまで泳ぎ顔を水面から出す。
「もしかして、湖の中で戦うのかしら」
ナヴィが状況把握をしていると、前から水面がゆらゆらと揺れ、何か大きな物体が動いているように見えた。
あれがボスね。どんなモンスターかしら。
そのボスは一気に体を水面からだし激しい水しぶきを上げた。
「で、ででででかぁぁぁぁぁ!」
水面から勢いよく飛び出したのは直径二メートル、体長十五メートルはある大型のウナギ型モンスターだった。
「これは、どうやって戦うのよ……でもとりあえずこの湖での戦闘ってことね」
ローブを脱ぎ捨て魔法を唱えた。
<マーメイル!>
ナヴィの足が人魚のヒレに変わり、首筋には小さなえらが生えた。
良かったこの魔法覚えておいて。これで水中でも息しながら戦える!
全く……大変なダンジョンね。さぁあたしが攻略してあげるわ! かかってきなさい!
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
戦国魔法奇譚
結城健三
ファンタジー
異世界の冒険者が、1570年代の戦国時代に転移してしまう
武田信玄と徳川、織田の連合軍が戦う三方ヶ原 翌年病死するはずの武田信玄の病を治し
変わっていく歴史 しかし転移してきたのは、冒険者だけでは無かった!
新宿アイル
一ノ宮ガユウ
ファンタジー
遥か6100万光年の彼方から、いつの間にか東京の地下に空間転移していた〈ロートの追憶〉。
半世紀前、その〈ロートの追憶〉を奪うため、〈ルジェ〉は、円環(ロンド)と呼ばれる巨大な円形地下空間を構築したが、その計画は失敗した。
しかし円環(ロンド)はいまだ健在。
〈追憶のカケラ〉とは、その円環(ロンド)を復活させるための鍵。
再び強奪を目論む〈ルジェ〉が送り込んだ、ロカとコルヴェナの兄妹、そしてヒト型機械兵ガルバルデのデッサが狙う。
祖父の指示に従い、秋葉原に来たハルは、そのコルヴェナとガルバルデに遭遇する。
そして、コルヴェナたちを追って空間転移してきたジシェと、たまたま居合わせた同級生のモジャコとともに、都内に散らばる〈追憶のカケラ〉を集めることになる。
ピンチに現れ、ハルたちを救ったのは、旧式のヒト型機械兵ルドゥフレーデ、リグナ。
リグナの能力は少しずつ覚醒し、デッサを上回っていく――が、そもそもは、リグナもまた〈ルジェ〉が持ち込んだもの。
半世紀前、円環(ロンド)の稼働を阻止したのは〈テヴェ〉のオーラという人物であり、そのオーラに、廃棄されかかっていたところを救われたから、リグナはいまハルたちを助けているらしい。
けれども、その証はどこにもない。
かすかに生まれた疑念は、ハルの中でどんどん膨らんでいく。
彼女は自分たちを欺いているのではないか?
ただ、再び訪れたピンチを救ってくれたのもまた、リグナだった……。
真実がどちらにあるのかは誰にもわからない。
堂々巡りで考えたところで答えはなく、最後は信じるか信じないかの二択でしかない。
信じられずに後悔するくらいなら、騙され欺かれて後悔したほうがいい――と、ハルは心を決めるだった。
都内に散らばる〈追憶のカケラ〉に、6100万光年と半世紀前の記憶と想いが重なる物語。
※2021.08.12: 挿し絵 (画像) の枚数制限 (1作品につき200枚まで) の関係で分けていた「新宿アイル(5章以降)」をこちらに集約しました (詳細は各章の変更履歴を参照)。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!
ほむらさん
ファンタジー
ヘルメット、マスク、そして赤い軍服。
幸か不幸か、偶然この服を手に入れたことにより、波乱な人生が幕を開けた。
これは、異世界で赤い流星の衣装を一生涯着続けることになった男の物語。
※服は話の流れで比較的序盤に手に入れますが、しばらくは作業着生活です。
※主人公は凄腕付与魔法使いです。
※多種多様なヒロインが数多く登場します。
※戦って内政してガチャしてラッキースケベしてと、バラエティー豊かな作品です。
☆祝・100万文字達成!皆様に心よりの感謝を!
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
幼馴染が女勇者なので、ひのきの棒と石で世界最強を目指すことにした。
のきび
ファンタジー
(小説家になろうより清書加筆修正して移籍中。なろう掲載日2017/06/21)
そこは勇者と魔王が存在する世界。グランヘイム王国の片田舎で生まれた二人の少年少女、ガリウスと幼馴染みのミスティア。ガリウスは人や物に名前をつけることでその能力を引き出すことが出来る真名命名(ネーミング)と言う力をもつ。ガリウスは幼馴染みに懇願され、彼女に救国の女勇者(ヴァルキリア)と真名をつけてしまう。彼女はその真名が示す通り国を救うべく旅立ってしまった。愛する人が旅立ってしまいガリウスは日々悶々とした日を過ごすが、ゴブリンに襲われた商人一家を助けたところから物語は一変する。
ライゼン通りのパン屋さん ~看板娘の日常~
水竜寺葵
ファンタジー
あらすじ
ライゼン通りの一角にある何時も美味しい香りが漂うパン屋さん。そのお店には可愛い看板娘が一人いました。この物語はそんな彼女の人生を描いたものである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる