人形将軍はすべてを捨てて新婚旅行を謳歌する

バール

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プロローグ

1. 凱旋式

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「なんてめでたい日なんだ!」
「今日はごちそうだ!」
「遅くになっても明かりを絶やさないでね!」

 帝都 サイカ。
アージェント帝国一の花の都はいつも以上に帝都民達の歓声に包まれていた。
 商店街では客引きの声に甘い焼き菓子の匂い。
 男は酒を飲み、女たちは流れてくる音楽に合わせて踊る。

「あ~♪  最強のアージェント! 敵なしのアージェント!」
「偉大な皇帝陛下に治められ♪ 人形将軍が攻め滅ぼす♪」
「「「偉大なるアージェント」」」

 帝国民が歌い、踊る。
 今日はアージェント帝国による大陸統一が成されためでたい日なのだ。

「あっ!人形将軍だ!」
「あっコラ!」

 子どもが指を差し、親に叱られる。
 大通りでは凱旋式が行われていた。
 
 兵士の装束には金があしらわれ、光り輝く。馬も同様にルビー、サファイアなどの宝石が散りばめられた装いをされ引かれている。
 まさに豪華絢爛と呼ぶにふさわしいものだった。

 そして、その先頭に彼がいた。

「……っ」

 帝都民は息を呑む。
 彼は簡素な白い衣を身にまとい、他の兵士とは違い宝飾の類は一切身に着けていなかった。髪には白い一輪の花を挿すのみ。
 しかし、彼は誰よりも美しかった。
 抜けるように白い肌、顔には長いまつ毛で縁取られた煌めく黒檀の瞳。
 通った鼻筋の下には薄い桃色の唇があった。
 ふと、風が吹く。
 彼の一つに結われた長い黒髪が風に揺られたゆたう。それは、絹のよるに滑らかだった。

 ほう、と溜息を吐きたくなる光景に帝都民は陶酔したようにトロンと目を溶かす。
 その様を彼、人形将軍は見えていないかのように前だけを見据えていた。
 薄く口角を上げたその顔はまるで本物の人形さながらであった。
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