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3 悪夢の二年間
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ブルクルタ国立剣術学校、刀鍛冶枠で入学した俺はやる気にみなぎっていた。推薦枠を得るために受けた剣術審査でトップを取った。
衛兵志望や武術を嗜む家系の貴族たちには俺よりも強いヤツがいるのだが、鍛治職人も剣術を身に付ける事が推奨されていたからだ。
運良く奨学金を得る事になって、学生寮にも入れる事になった。一刀鍛冶士志望の平民としては順風満帆と言えた。この剣術学校に通う特権階級を将来顧客に出来るチャンスもあると期待していた。
胸を躍らせて自分の寮室に向かう。たまたま同室の者がいない部屋を充てがわれ、さらに幸運としか言いようがない。渡された鍵をドアの鍵穴に差し込むが、手応えが予想に反した。
「開いてる……」
疑問に思いながらゆっくりとドアを開けると、先客がいた。薄暗いはずの部屋が、そこだけ眩さを放っていた。
「お前がサイか。私の事は詳しく聞くな。私の事はアーネスと呼べば良い」
俺よりずっと小柄なのに尊大な態度は、王侯貴族なのか? 金髪に憂いのある濃いブルーの瞳、細く繊細な輪郭、白い肌のすらりとした手足。美少年のアーネスが肩越しに見上げ俺を品定めしている。
アーネスは、美少年ではなく男装の美少女だと直ぐに分かった。本名はアイネイアス・サーガ・ブルクルタ……。同室の二年間、その本名と身分を知ることは無かった——まさか王女だったとは。
特別特待生として突然入学してきたアーネスは、あっという間に上級生を組み伏せ、実力でトップに躍り出た。こいつのせいで、校内は大荒れし、手習い程度の貴族の坊ちゃんたちが軒並み退学していった。
不問のまま同室にされた俺は……逃げられなかった。刀鍛冶枠の推薦入学だった為、俺が辞めれば次の代から枠が取り消される。二年間で卒業しなければ奨学金がまるまる借金になる事情があった。
衛兵志望や武術を嗜む家系の貴族たちには俺よりも強いヤツがいるのだが、鍛治職人も剣術を身に付ける事が推奨されていたからだ。
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胸を躍らせて自分の寮室に向かう。たまたま同室の者がいない部屋を充てがわれ、さらに幸運としか言いようがない。渡された鍵をドアの鍵穴に差し込むが、手応えが予想に反した。
「開いてる……」
疑問に思いながらゆっくりとドアを開けると、先客がいた。薄暗いはずの部屋が、そこだけ眩さを放っていた。
「お前がサイか。私の事は詳しく聞くな。私の事はアーネスと呼べば良い」
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