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 私は、千切れた枯れ草が横切る寒々とした道を歩いている。まだ色があるのは空のみ、昼が過ぎたばかりだが、日が落ちる時間を焦りながら歩いている。

 トランクがあるだけマシと、その重みを頼りに堪えながら私は、馴染んだ町に向かっている。

 帰り道だが、帰る当てのない私。

 結婚したその日に結婚が無効となり、翌日の夜明けから歩き通している。

 そもそも私には出過ぎた縁談だと思っていましたとも! 古い血を持つというだけで、後ろ盾のない私に男爵家の長男の妻と収まりかけていた……でも、

 その血というのが、結局はその結婚を無効に持ち込んだ。結婚式の当日、一人の女性が身籠っているのに気が付いてしまった。それは、夫となる人の秘密の恋人で、在ろう事か、身分のある女性だった。慌てた男爵が、その日のうちに私と夫になるはずの人との結婚を無効にしてしまったのだ。

 私には、命が見えてしまう。もうずっとこの血に絶えたはずの能力だった。

 絶えつつある異能は頼りなく、私は身寄りのないメイド暮らしをしていた。

「もう、未練もなく生きていけると思ってたのに」

 何もない白茶けた草原に真っ直ぐに伸びた道の途中、熱いのか寒いのか分からない身体を休ませることにした。

 帰るところはない。それでも、町に行けば知り合いがいる。礼拝堂に行けば、一晩ぐらいは泊まらせてもらえるかも知らない。修道女には、成れないだろう。異能の血を持つ故に……。結婚の所為で知られてしまった血筋を呪う。

 遠くから馬車が見える。見覚えのある馬車。ふと、胸が高鳴る。でも、それは許されてはいけない想い。

 私の姿を見つけた、馬車が止まると、もう会うことが叶わなかった人が優しく声を掛けてくれた。
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