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第十一話・③ 頭のおかしい生徒・神崎夢人
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猪子陀の願いを叶えたと言う青年は、下品に、実にわざとらしく、これみよがしに腹を抱えて狂ったように笑う。
演技だとしても、狂っているのか?と言えるくらい、彼は腕で両脇を抱えて過呼吸を起こしかけながら全身を揺らし笑い転げている。
あまりにもその光景が異様、そしてその『願いを叶えた』という言葉を考えて猪子陀は完全に動けなかった。
「ハー、ハー。おっかしい!やっぱなーんにも、気づいていないし、分かってないんだ!?いこだチャンは!」
『いこだちゃん』。猪子陀をそう呼ぶのはあの生徒だけだった――――。
「神崎…夢人…か…!?!?」
思い出せなかった情報が、錠を外されたように溢れてくる。
――この青年は、神崎夢人《かんざき ゆめひと》。確かに、十年前に在籍していた。
この地域で古くから名家として存在する、神崎家の長男。
教師にも同級生にも不遜な態度を取るが、それがどういう訳か許されてしまうという奇妙な生徒だった。
猪子陀は夢人の担任をしたことがあり、態度が生意気で制裁しようと色々ことを仕組んだが、それは全て翌日には
『なかったこと』になっていた…。
だが、腸が煮えくり返っている状態の猪子陀を、何故か夢人は気に入っていた。
『いこだちゃん』と呼び、気安くヘラヘラと話しかけてくる、最低な生徒。
そんな彼は、周りの人間を馬鹿にしつつも、、妙に観察している部分があった。
猪子陀が同僚に嫌味砲を浴びせ、その同僚が猪子陀の目の前で飛び降り自殺を図ったことがあった。
猪子陀は嫌味の中に、自殺教唆に近い言葉も混ぜ込んでいた。
彼の計画では、その言葉で同僚は自宅で自殺を図るだろう…。という目論みだったのだが、屑である同僚はストレスに耐え切れずに猪子陀の嫌味砲の最中に側に遭った窓を開けて突発的に飛び降りたのだ、
話をしていたのは、旧校舎四階の廊下。
飛び降りた先は、二階の出っ張りになっているコンクリの屋根…。
このまま放置しておけば、猪子陀は別に何も咎められることはない。
精神脆弱な同僚の一連の行動には、関係ない。
居なくなるのならそれはそれで好都合なのだから、猪子陀にはなんの問題もなかった。
「いこだちゃん、今…モリ先生、飛び降りたよね?先生の口撃でさ?」
誰もこの階にはいなかったはずなのだが、いつのまにか猪子陀が会話していた場所の壁の側に、夢人は立っていた。
「神崎…見ていたのか?」
いつもの嫌な微笑みで猪子陀がそう問いかけると、神崎はタタッと窓に駆け寄り、モリが落ちた窓下を見た。
「わー!ほんとに落ちてる!やったね、いこだちゃん!」
非日常に興奮するように、夢人は目をキラキラと輝かせてもっと幼い子供のようにはしゃぐ。
普通の人間なら、こんな反応はしない。
猪子陀はこの時、夢人も殺そうか悩んでいた。
黙っていろといって、言うことを聞くやつでもない。
証拠隠滅は鉄則だ…そう思っていた時、夢人は持ちかけた。
「俺さ、モリ先生が落ちたコト。いこだちゃんが話をしていたこと、ぜーんぶ真っ白に戻せるけど、どーする?」
演技だとしても、狂っているのか?と言えるくらい、彼は腕で両脇を抱えて過呼吸を起こしかけながら全身を揺らし笑い転げている。
あまりにもその光景が異様、そしてその『願いを叶えた』という言葉を考えて猪子陀は完全に動けなかった。
「ハー、ハー。おっかしい!やっぱなーんにも、気づいていないし、分かってないんだ!?いこだチャンは!」
『いこだちゃん』。猪子陀をそう呼ぶのはあの生徒だけだった――――。
「神崎…夢人…か…!?!?」
思い出せなかった情報が、錠を外されたように溢れてくる。
――この青年は、神崎夢人《かんざき ゆめひと》。確かに、十年前に在籍していた。
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教師にも同級生にも不遜な態度を取るが、それがどういう訳か許されてしまうという奇妙な生徒だった。
猪子陀は夢人の担任をしたことがあり、態度が生意気で制裁しようと色々ことを仕組んだが、それは全て翌日には
『なかったこと』になっていた…。
だが、腸が煮えくり返っている状態の猪子陀を、何故か夢人は気に入っていた。
『いこだちゃん』と呼び、気安くヘラヘラと話しかけてくる、最低な生徒。
そんな彼は、周りの人間を馬鹿にしつつも、、妙に観察している部分があった。
猪子陀が同僚に嫌味砲を浴びせ、その同僚が猪子陀の目の前で飛び降り自殺を図ったことがあった。
猪子陀は嫌味の中に、自殺教唆に近い言葉も混ぜ込んでいた。
彼の計画では、その言葉で同僚は自宅で自殺を図るだろう…。という目論みだったのだが、屑である同僚はストレスに耐え切れずに猪子陀の嫌味砲の最中に側に遭った窓を開けて突発的に飛び降りたのだ、
話をしていたのは、旧校舎四階の廊下。
飛び降りた先は、二階の出っ張りになっているコンクリの屋根…。
このまま放置しておけば、猪子陀は別に何も咎められることはない。
精神脆弱な同僚の一連の行動には、関係ない。
居なくなるのならそれはそれで好都合なのだから、猪子陀にはなんの問題もなかった。
「いこだちゃん、今…モリ先生、飛び降りたよね?先生の口撃でさ?」
誰もこの階にはいなかったはずなのだが、いつのまにか猪子陀が会話していた場所の壁の側に、夢人は立っていた。
「神崎…見ていたのか?」
いつもの嫌な微笑みで猪子陀がそう問いかけると、神崎はタタッと窓に駆け寄り、モリが落ちた窓下を見た。
「わー!ほんとに落ちてる!やったね、いこだちゃん!」
非日常に興奮するように、夢人は目をキラキラと輝かせてもっと幼い子供のようにはしゃぐ。
普通の人間なら、こんな反応はしない。
猪子陀はこの時、夢人も殺そうか悩んでいた。
黙っていろといって、言うことを聞くやつでもない。
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