楽園パスポート

鋼鉄の椎茸

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グリーンヒーリング

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「楽園パスポートの噂聞いた?」
「なんだよそれ」
「えっ?君知らないの?僕も見たことがあるわけじゃないんだけど・・」

疲れた人へのプレゼントです。
時間は無制限、ただし1回きり。
一人きりで、合言葉は開けゴマ。
とくにデメリットはございません。
ごゆるりと、おくつろぎください。

なお、この噂を聞いたことがない人の前には現れません。

from 癒しの大精霊

「こんな説明じゃ肝心の中身がわからないじゃないか。」
「だから、ただの噂なんだよ。」
「ふーん。そう」


・・・
・・・・・
・・・・・ふむ。あの人間随分と疲れておる。
「・・・大精霊しゃま?」
「ああ、ピルポか。すまないが、下界にこれを届けてくれないかの?」





明日の会議の準備がようやくひと段落。
時計は深夜11時を回っていた。

自分以外の誰もいないオフィス。
今日一日、思い返せば色々腹が立つ事ばかりなので、敢えて何も考えまい。

今会社を出れば、余裕で終電に間に合う。
そう思いながら、立ち上がった時。
机の上に見慣れないカードが置いてあるのに気がついた。

楽園パスポート?

さっきまで使っていたパソコンの隣に初めて見るカードが置かれていた。

そういえば、昨日の昼間に、同期の沢田がおかしな噂話をしていたな。

たしか、

「ひらけゴマ・・・だっけか?」

へへへ。そんなうまい話があるんだったら俺もあやかってみたいよ。

そう独り言を言い終わる間も無く、あたりはいつものオフィスではなくなっていた。



目の前には
大人数人がかりでも抱えきれない大木

周りを見渡すと
辺り一面に同じような大木がそびえ立つ

アメリカ西海岸には樹高100メートルにも達するセコイアの木が自生しているらしいが、こちらはそれ以上と思える巨大さだった。

木がでかい。

そして、酸素が濃い。
森の中は濃厚な木の匂いに満ちていて鼻の奥を通りこして脳の奥まで浸透してゆくようで・・・

そして、何故か下半身が熱かった

足下を確認すると膝上の辺りまで水が来ていた。

泥水のようなそれを、つぶさに観察して、確信する

硫黄だ。


つまり、俺はスーツのまま、温泉に足を突っ込んでいるようだった。

「ええい。ままよ」

もうどうにでもなれ、としゃがみこんで、首まで温泉に浸かってみる。

先ほどの森の匂いとは打って変わって、タマゴの腐敗臭に似た特有の匂いが鼻をなでる。

服の上からお湯が染み込んでくるにつれ、じわりじわりと上半身が温まってくる。

温浴熱は先ほどから温めていた下半身からお腹そして、温まりやすい末梢からからだの中心部に向けて、広がり、おそらく今、俺の顔は健康的に上気しているのだろう。

気がついた時には、お湯の中でネクタイを取り外し、革靴を脱ぎ捨て、

今・・・全裸です。

森の中で一人で全裸です。


それはともかく、硫黄泉はアトピーにも効果があるようで残業中も俺を悩ませていた不快な痒みも今は全く治ってしまっていた。

ああ   温まる・・・心の奥底まで。

一体なんなんだ!?
この超癒し空間は!!



体が充分に温まったので、大樹の根元に腰掛けて休んでいると左手の小指がヒヤリとしたものに触れた。

ぎょっとしながら目をやると、大樹の根元の水面から出たところに冷たい液体の入った瓶が置いてあった。

ご丁寧に栓抜きまで置いてある。

なるほど。これはサイダーか。瓶には大きく大精霊サイダーと表記されていた。
ついでに成分表示のところに帰りの合言葉も添えて。
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