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ミラクルビバーク 後編
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凍傷は危険だ。
長時間低温にさらされることで血の巡りが悪くなり、
レベル2の凍傷(しもやけ程度)であればまだいいものの、処置を怠って、レベル3以上の凍傷を負うこととなれば、
入院治療が必要になるのにとどまらず、壊死という最悪の事態を招くこともある。
俺の両手両足はしもやけで痛くて、おまけに右足は捻挫なので、さっきまでは、ケンケンでないと移動できなかった。
そう。
さっきまでは。
『ふはははっ』
さっきまでの俺とは違うのだよ。
さっきまでのとはね。
ザバァッ
全裸で湯船から立ち上がる俺。
どれ、高杉はどうしているのかな?
って・・・
お、おいっ!
あいつ、子供かっ!
『高杉!風呂では泳ぐなよーっ』
まったく。普段はインテリぶってるくせに、意外とおちゃめなやつめ。
高杉にあんな面白い一面があったとは。
少し寒い。
湯船つかろ。
トプン
・・・・・リラックス
・・・ウルトラ リラックス
ふぅ。
ほぐれるぜ・・・。
冷えで傷んでいた手足の指先から血が巡り出す感覚。
血液の流れが熱を運び、温められた血管は拡張して、血液を呼び込む。
熱が体幹に届くと、冷え切っていた内臓にも血が巡り出す。
自律神経は急速に調和を取り戻し、
心までもがポカポカに。
俺は、温浴に酔いしれながら、
少しの間まどろんでいた。
・・・・・・
・・・
・・おっと、
風呂で寝たらば、溺れてしまう。
あぶない、あぶないっと。
それにしても、この薬湯、めちゃくちゃ効能あるなぁ。
湯に浸かってからそろそろ、5分くらいになるが、しもやけが全快
・・・にとどまらず、なんと捻挫までもが全快!
ってありえなくないか!?
さっきまで凍傷で水膨れが出来かけていた手足の甲はつるつるスベスベの美肌になっているし、足の腫れが完全にひくだけではなく、気力もすこぶる充実。
今からでもハーフマラソン完走余裕でできそうな感じだ。
ザバァッ
少しのぼせたので、立ち上がって身体を冷ます。
湯治はこの繰り返しにかぎるよね。
頭がスッキリしたところで、辺りを見回すと、改めてその広さと立派さに驚かされた。
浴室に入る前は、家風呂くらいの広さを想像していたが、これ、いったいどれだけの広さあるんだ?
いま俺が浸かっている薬湯は浴槽の底だけで5畳はあるだろうか。
もちろん、これだけでも十分広い。
しかし、高杉が泳いでいるあの巨大風呂と言ったら・・・
プールだよね。
マジで、岩で出来たプールだよね。
高杉が泳ぐのも無理はないのかな?
だって、ゆうに、20メートルくらいはあるよ。
深さは肩まであるみたい。
俺も回復したから、そっちに行こうかな・・・。
いや、
やっぱり、こちらの薬湯でいいや。
お風呂はゆっくり浸かりたいのです。
遭難して、湯治。
全く不思議なこともあるもんですな。
ゴチン!!
岩肌にGショックがぶつかった感触が伝わってきた。
やばっ!
泳ぐのをやめて、すぐに手元を確認した。
さすがだ。
傷ひとつ付いていない。
ホッすると、
今泳いできた方を振り返る。
全くどんだけ広い風呂なんだここは。
今泳いだ感じだと
丁度25メートルってところか。
立った状態で肩までお湯がある温泉なんて、初めてなものだから、つい夢中で泳いでしまったのだが・・・。
沖野め、こっちを見て、何かニヤついてやがる。
私にだって、たまにはレクリエーションというものが必要なのだよ。
まぁ、それはそれとして、
いい湯加減で気持ちいいんだけども、
流石に温泉で泳いでいるのはのぼせるし、喉が乾くなあ・・・。
そろそろ10分というところか。
もう少し、お風呂を楽しんだら、湯上り後の食事と行きますか。
脱衣所には高級そうなバスタオルが積まれていて、そこに、ご自由にお使いくださいの貼り紙がされていた。
湯上りにぴったりな浴衣まで備えつけられていたので、遠慮なく使わせてもらっている。
髪の毛もいい具合に乾いたので、
さて、
『食堂で、ご飯を食べるぞぅ!』
・・・・・
・・・
だから、私のセリフをとるなっちゅうの!!
食堂のテーブルの上には、
出来立ての料理が所狭しと並んでいた。
麻婆豆腐、餃子、担々麺、これは私がリクエストしたものだな?
そう、寒さの影響なのだろうか。
私は猛烈に中華が食べたくなったのだ。
それに、おでん、味噌煮込みうどん、すき焼き、これは沖野のリクエストだったな。
あいつも寒い中、ずっとうずくまっていたからな。
大分身体が冷えていたんだろう。
温かい食べ物がたくさん並んでいる。
それに加えて、
なかなか気が利いているな。
お風呂上がりの我々の為に、よく冷えた瓶ビールに、刺身の盛り合わせ、さらにはデザートにフルーツの盛り合わせまで。
『もう、たまんねぇよな』
「あぁ、私ももうだめだ」
我慢できるはずもない。
「よし、」
『さっそく、食べ始めようぜ!!』
私は最初にビール。
傍に置いてある栓抜で開けるわ、
コップにつぐわ、一気に飲み干すわ、
・・・・・
・・・
・
ク、
クァァーーーッ!!
生き返った!!!
そう。
まさしく雪山での遭難による極限の状況からこの謎の宿屋?に迷い込み、我々は生き返ったのだ。
感慨深い
いや、感慨深いなぁ。
「なぁ、沖・・
『美味い!
この肉、松坂牛だよ!
特上!美味いっ!!』
沖野くん。
君は本当に空気を読まないね。
っと、その煮えたぎっているのはすき焼きかい?
「美味い・・。これは確かに。松坂牛だっっ!!」
極限からの生存からの湯治からのグルメ三昧ですって???
飲んで食って、飲んで食って!
宴じゃ!宴じゃぁぁぁ・・・
こうして、酔いは回り、胃袋は満たされながら、夜が更けていくのであった。
・・・・・
・・・
・・
翌朝、目がさめると我々は登山道近くの避難小屋中にいた。
窓の外を見れば、
吹雪はすっかり晴れて
美しい青空が広がっていた。
起床時、2人とも格好は登山ウェアで寝袋にくるまっていた。
・・・・・・
・・・
『おい。高杉』
『昨日は、松坂牛うまかったよな?』
「あ、ああ・・・」
『大きいお風呂、入ったよなぁ』
「ああ」
『捻挫も・・・治ってる・・』
「うん」
「2人とも助かって、よかったな」
長時間低温にさらされることで血の巡りが悪くなり、
レベル2の凍傷(しもやけ程度)であればまだいいものの、処置を怠って、レベル3以上の凍傷を負うこととなれば、
入院治療が必要になるのにとどまらず、壊死という最悪の事態を招くこともある。
俺の両手両足はしもやけで痛くて、おまけに右足は捻挫なので、さっきまでは、ケンケンでないと移動できなかった。
そう。
さっきまでは。
『ふはははっ』
さっきまでの俺とは違うのだよ。
さっきまでのとはね。
ザバァッ
全裸で湯船から立ち上がる俺。
どれ、高杉はどうしているのかな?
って・・・
お、おいっ!
あいつ、子供かっ!
『高杉!風呂では泳ぐなよーっ』
まったく。普段はインテリぶってるくせに、意外とおちゃめなやつめ。
高杉にあんな面白い一面があったとは。
少し寒い。
湯船つかろ。
トプン
・・・・・リラックス
・・・ウルトラ リラックス
ふぅ。
ほぐれるぜ・・・。
冷えで傷んでいた手足の指先から血が巡り出す感覚。
血液の流れが熱を運び、温められた血管は拡張して、血液を呼び込む。
熱が体幹に届くと、冷え切っていた内臓にも血が巡り出す。
自律神経は急速に調和を取り戻し、
心までもがポカポカに。
俺は、温浴に酔いしれながら、
少しの間まどろんでいた。
・・・・・・
・・・
・・おっと、
風呂で寝たらば、溺れてしまう。
あぶない、あぶないっと。
それにしても、この薬湯、めちゃくちゃ効能あるなぁ。
湯に浸かってからそろそろ、5分くらいになるが、しもやけが全快
・・・にとどまらず、なんと捻挫までもが全快!
ってありえなくないか!?
さっきまで凍傷で水膨れが出来かけていた手足の甲はつるつるスベスベの美肌になっているし、足の腫れが完全にひくだけではなく、気力もすこぶる充実。
今からでもハーフマラソン完走余裕でできそうな感じだ。
ザバァッ
少しのぼせたので、立ち上がって身体を冷ます。
湯治はこの繰り返しにかぎるよね。
頭がスッキリしたところで、辺りを見回すと、改めてその広さと立派さに驚かされた。
浴室に入る前は、家風呂くらいの広さを想像していたが、これ、いったいどれだけの広さあるんだ?
いま俺が浸かっている薬湯は浴槽の底だけで5畳はあるだろうか。
もちろん、これだけでも十分広い。
しかし、高杉が泳いでいるあの巨大風呂と言ったら・・・
プールだよね。
マジで、岩で出来たプールだよね。
高杉が泳ぐのも無理はないのかな?
だって、ゆうに、20メートルくらいはあるよ。
深さは肩まであるみたい。
俺も回復したから、そっちに行こうかな・・・。
いや、
やっぱり、こちらの薬湯でいいや。
お風呂はゆっくり浸かりたいのです。
遭難して、湯治。
全く不思議なこともあるもんですな。
ゴチン!!
岩肌にGショックがぶつかった感触が伝わってきた。
やばっ!
泳ぐのをやめて、すぐに手元を確認した。
さすがだ。
傷ひとつ付いていない。
ホッすると、
今泳いできた方を振り返る。
全くどんだけ広い風呂なんだここは。
今泳いだ感じだと
丁度25メートルってところか。
立った状態で肩までお湯がある温泉なんて、初めてなものだから、つい夢中で泳いでしまったのだが・・・。
沖野め、こっちを見て、何かニヤついてやがる。
私にだって、たまにはレクリエーションというものが必要なのだよ。
まぁ、それはそれとして、
いい湯加減で気持ちいいんだけども、
流石に温泉で泳いでいるのはのぼせるし、喉が乾くなあ・・・。
そろそろ10分というところか。
もう少し、お風呂を楽しんだら、湯上り後の食事と行きますか。
脱衣所には高級そうなバスタオルが積まれていて、そこに、ご自由にお使いくださいの貼り紙がされていた。
湯上りにぴったりな浴衣まで備えつけられていたので、遠慮なく使わせてもらっている。
髪の毛もいい具合に乾いたので、
さて、
『食堂で、ご飯を食べるぞぅ!』
・・・・・
・・・
だから、私のセリフをとるなっちゅうの!!
食堂のテーブルの上には、
出来立ての料理が所狭しと並んでいた。
麻婆豆腐、餃子、担々麺、これは私がリクエストしたものだな?
そう、寒さの影響なのだろうか。
私は猛烈に中華が食べたくなったのだ。
それに、おでん、味噌煮込みうどん、すき焼き、これは沖野のリクエストだったな。
あいつも寒い中、ずっとうずくまっていたからな。
大分身体が冷えていたんだろう。
温かい食べ物がたくさん並んでいる。
それに加えて、
なかなか気が利いているな。
お風呂上がりの我々の為に、よく冷えた瓶ビールに、刺身の盛り合わせ、さらにはデザートにフルーツの盛り合わせまで。
『もう、たまんねぇよな』
「あぁ、私ももうだめだ」
我慢できるはずもない。
「よし、」
『さっそく、食べ始めようぜ!!』
私は最初にビール。
傍に置いてある栓抜で開けるわ、
コップにつぐわ、一気に飲み干すわ、
・・・・・
・・・
・
ク、
クァァーーーッ!!
生き返った!!!
そう。
まさしく雪山での遭難による極限の状況からこの謎の宿屋?に迷い込み、我々は生き返ったのだ。
感慨深い
いや、感慨深いなぁ。
「なぁ、沖・・
『美味い!
この肉、松坂牛だよ!
特上!美味いっ!!』
沖野くん。
君は本当に空気を読まないね。
っと、その煮えたぎっているのはすき焼きかい?
「美味い・・。これは確かに。松坂牛だっっ!!」
極限からの生存からの湯治からのグルメ三昧ですって???
飲んで食って、飲んで食って!
宴じゃ!宴じゃぁぁぁ・・・
こうして、酔いは回り、胃袋は満たされながら、夜が更けていくのであった。
・・・・・
・・・
・・
翌朝、目がさめると我々は登山道近くの避難小屋中にいた。
窓の外を見れば、
吹雪はすっかり晴れて
美しい青空が広がっていた。
起床時、2人とも格好は登山ウェアで寝袋にくるまっていた。
・・・・・・
・・・
『おい。高杉』
『昨日は、松坂牛うまかったよな?』
「あ、ああ・・・」
『大きいお風呂、入ったよなぁ』
「ああ」
『捻挫も・・・治ってる・・』
「うん」
「2人とも助かって、よかったな」
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