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第53話 乗り越えろ
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//|1|2|3|4|5|6|7|8|9|計 ――――――――――――――――――――
上級生|3|0|7| |10|中学生|0|3|5| |5|
試合状況:ワンナウト・一、三塁
ここでよりによって剣崎先輩。一打席目は三振に取れたけど、二打席はしっかりレフト前に運ばれたしアウトコース中心に攻めたい。攻めたい…けど
ファーストの方をチラッと見る。
右方向。特にライン際に飛ばされると守備が不安な先生だからな。敬遠したとしても次はさっきアウトにはできたもののヒット性の当たり打ってる人で満塁だからな。多分どっちを選んでも結果はそこまで変わらない気がする。ならランナー増やさず勝負した方が良いんだが…考えても仕方ない。ここは取りあえず外から入って様子を見よう
割り切ってサインを出して投げさせた第一球はアウトローに入ってストライクを一つ取った。
反応してこなかった?インコースの球を待ってたのか?
二球目も同じくアウトローに投げ込むと剣崎はアウトローの球を手を出すも左に大きく切れてファールとなった。
外の球をあんなに強引に引っ張った。もしかして右打ちしないように意識してるのか?
「龍っち、ようやく気付いたっぽいね」
「まあ、殆ど奴が気にしてないというか、飛んでもキャッチャー除くと8分の1の確率だしファーストだけにそうそう飛ばないだろと言わんばかりに全く気にせずスイングしてるから気付きづらかったんだろうな」
「みんな剣崎ほど極端に左側に打とうとしてないからな」
「しかも序盤にセカンドに鋭い打球二つ行ってる上にファーストにゴロ打っちゃったお馬鹿さんの打球が隠れ蓑になっちゃって余計気付きづらかったんだろうね」
「…………」
もう一球外を試そう。ただし今度は…
”シュッ”
またアウトロー、もう一回引っ張って…この球は!
さっきのように引っ張ったものの外に一つ外れたボール球だった。バット端、それも焦ってしまい少しボールの上を叩いてしまい何とか左にもっていくもさっきと違いボテボテゴロ。サードが懸命に走るも打球は白線の外へ出てファールとなった。
ふぅ~焦った。危うくサードゴロになるとこだった。本当に一年生とか関係なく高校生とは思えない制度で際どい所に投げて来るな。ストレートだけとはいえこれだけ四隅に投げられ、尚且つボール1個分の出し入れを自在に行える制球力
「ボール!」
(さっきと同じギリギリ1個分だけ外したストレート。ここまでの流れだとやっぱ絶対マグレで放ってないよな。真っすぐだけでもこれだけ色んな所に自在に投げ込めるなら捕手も色々考えて組立てとか出来そうで楽しそうだな。由自にもあれの10分の1でもいいからコントロールがあれば…
分割してないストライクゾーンそのもののですら入らない事がざらにあるからな~。去年やむなくあいつがピッチャーやるから代わりに俺が捕手やる事になったけど酷かったもんな。
あいつが投手だと基本的にストライク入らないから戦術的な意味でなくあいつのグラウンドコンディションを何とかせんとばかり精神的な方でばかりリードしてたもんな。
まあアイツが精神的に精神的に崩れる事って基本まず無いからその心配は杞憂だったけどあの何処行くわからん球止めるの骨が折れたな…おっと今試合中だったんだ。集中集中!
このまま外のボールを引っ張り続けんのキツイな。ここまでくるとわざとアウトになる方が精神的には楽なんだけど…そういうの望まないもんな。特に涼夏《アレ》が)
軽くため息を吐くと立ち位置をバッターボックスの一番前に移動した。
(こっちの方が少ない角度で引っ張られるだろう。外に外してくるボール球に気を付けつつ入れて来た外の球を打つ。インコースに来たとしてもこの球速なら多分対応出来るだろう)
ポイントを随分前に置きに来た。どういう理由であれアウトローの球を強く意識しているのは間違いない。だったらここは…
サインを受け取り投げた第四球は”シュッ”
(なっ!インハンイ)
思わぬボールに差し込まれる形となりながらもなんとかバット振り抜き打球は少しフライ気味レフトにフェアゾーンギリギリに落ちないかという高さに上がった。
(この角度だとギリギリ入らない…とは思うけどもしまた突っ込んでフェアゾーンに落ちたら失点確実。しかも三塁ランナーだけでなく一塁ランナーにも帰られて二失点になるだろう)
レフトは懸命に追いながらも際どい打球に突っ込むか安全に行くべきか迷っていた。普段ならばある程度確信をもって判断出来る打球であったが前の回に取り損ねていた事を少しだけ引きずっており、判断力が鈍っていた。そして気持ちが守りに入りかけそうにもなっていた。
(ここは確実に行った方が…)
「引くな!」
(龍介!?)
「絶対ファールだ!気にせず横に思いっきり飛べ!」
(いや、でも結構微妙だぞ?もしかしたらまた…。それにあの試合の時もこうやって俺が落とした事で失点が広がったんだ!それにさっきだって結局追いつけなかった!だからやっぱりここは…)
向かう足取りが重くなり精神的に沈みかけた時、再びホームから声が聞こえてきた。
「ビビらず乗り越えろ!いつかじゃない、今ここでだ!」
(今、ここで。やっぱり前の回のお前のあの行動は…龍介は乗り越えられたのか。くっ、なら俺も、俺も…)
「う、うおぉおーー!!」
気がつくと鎌田は無我夢中でより強く地面を蹴った。ボールとの距離も試合状況も何もかも忘れてただひたすら目の前に落下するボールだけを追いかけた。そして懸命に飛び込んだ結果ダイビングキャッチを成功させたのだった。
そしてこの回を0点に抑えたこと以上に今のプレイにチーム全体が盛り上がりより一層皆の士気が高まったのだった。
上級生|3|0|7| |10|中学生|0|3|5| |5|
試合状況:ワンナウト・一、三塁
ここでよりによって剣崎先輩。一打席目は三振に取れたけど、二打席はしっかりレフト前に運ばれたしアウトコース中心に攻めたい。攻めたい…けど
ファーストの方をチラッと見る。
右方向。特にライン際に飛ばされると守備が不安な先生だからな。敬遠したとしても次はさっきアウトにはできたもののヒット性の当たり打ってる人で満塁だからな。多分どっちを選んでも結果はそこまで変わらない気がする。ならランナー増やさず勝負した方が良いんだが…考えても仕方ない。ここは取りあえず外から入って様子を見よう
割り切ってサインを出して投げさせた第一球はアウトローに入ってストライクを一つ取った。
反応してこなかった?インコースの球を待ってたのか?
二球目も同じくアウトローに投げ込むと剣崎はアウトローの球を手を出すも左に大きく切れてファールとなった。
外の球をあんなに強引に引っ張った。もしかして右打ちしないように意識してるのか?
「龍っち、ようやく気付いたっぽいね」
「まあ、殆ど奴が気にしてないというか、飛んでもキャッチャー除くと8分の1の確率だしファーストだけにそうそう飛ばないだろと言わんばかりに全く気にせずスイングしてるから気付きづらかったんだろうな」
「みんな剣崎ほど極端に左側に打とうとしてないからな」
「しかも序盤にセカンドに鋭い打球二つ行ってる上にファーストにゴロ打っちゃったお馬鹿さんの打球が隠れ蓑になっちゃって余計気付きづらかったんだろうね」
「…………」
もう一球外を試そう。ただし今度は…
”シュッ”
またアウトロー、もう一回引っ張って…この球は!
さっきのように引っ張ったものの外に一つ外れたボール球だった。バット端、それも焦ってしまい少しボールの上を叩いてしまい何とか左にもっていくもさっきと違いボテボテゴロ。サードが懸命に走るも打球は白線の外へ出てファールとなった。
ふぅ~焦った。危うくサードゴロになるとこだった。本当に一年生とか関係なく高校生とは思えない制度で際どい所に投げて来るな。ストレートだけとはいえこれだけ四隅に投げられ、尚且つボール1個分の出し入れを自在に行える制球力
「ボール!」
(さっきと同じギリギリ1個分だけ外したストレート。ここまでの流れだとやっぱ絶対マグレで放ってないよな。真っすぐだけでもこれだけ色んな所に自在に投げ込めるなら捕手も色々考えて組立てとか出来そうで楽しそうだな。由自にもあれの10分の1でもいいからコントロールがあれば…
分割してないストライクゾーンそのもののですら入らない事がざらにあるからな~。去年やむなくあいつがピッチャーやるから代わりに俺が捕手やる事になったけど酷かったもんな。
あいつが投手だと基本的にストライク入らないから戦術的な意味でなくあいつのグラウンドコンディションを何とかせんとばかり精神的な方でばかりリードしてたもんな。
まあアイツが精神的に精神的に崩れる事って基本まず無いからその心配は杞憂だったけどあの何処行くわからん球止めるの骨が折れたな…おっと今試合中だったんだ。集中集中!
このまま外のボールを引っ張り続けんのキツイな。ここまでくるとわざとアウトになる方が精神的には楽なんだけど…そういうの望まないもんな。特に涼夏《アレ》が)
軽くため息を吐くと立ち位置をバッターボックスの一番前に移動した。
(こっちの方が少ない角度で引っ張られるだろう。外に外してくるボール球に気を付けつつ入れて来た外の球を打つ。インコースに来たとしてもこの球速なら多分対応出来るだろう)
ポイントを随分前に置きに来た。どういう理由であれアウトローの球を強く意識しているのは間違いない。だったらここは…
サインを受け取り投げた第四球は”シュッ”
(なっ!インハンイ)
思わぬボールに差し込まれる形となりながらもなんとかバット振り抜き打球は少しフライ気味レフトにフェアゾーンギリギリに落ちないかという高さに上がった。
(この角度だとギリギリ入らない…とは思うけどもしまた突っ込んでフェアゾーンに落ちたら失点確実。しかも三塁ランナーだけでなく一塁ランナーにも帰られて二失点になるだろう)
レフトは懸命に追いながらも際どい打球に突っ込むか安全に行くべきか迷っていた。普段ならばある程度確信をもって判断出来る打球であったが前の回に取り損ねていた事を少しだけ引きずっており、判断力が鈍っていた。そして気持ちが守りに入りかけそうにもなっていた。
(ここは確実に行った方が…)
「引くな!」
(龍介!?)
「絶対ファールだ!気にせず横に思いっきり飛べ!」
(いや、でも結構微妙だぞ?もしかしたらまた…。それにあの試合の時もこうやって俺が落とした事で失点が広がったんだ!それにさっきだって結局追いつけなかった!だからやっぱりここは…)
向かう足取りが重くなり精神的に沈みかけた時、再びホームから声が聞こえてきた。
「ビビらず乗り越えろ!いつかじゃない、今ここでだ!」
(今、ここで。やっぱり前の回のお前のあの行動は…龍介は乗り越えられたのか。くっ、なら俺も、俺も…)
「う、うおぉおーー!!」
気がつくと鎌田は無我夢中でより強く地面を蹴った。ボールとの距離も試合状況も何もかも忘れてただひたすら目の前に落下するボールだけを追いかけた。そして懸命に飛び込んだ結果ダイビングキャッチを成功させたのだった。
そしてこの回を0点に抑えたこと以上に今のプレイにチーム全体が盛り上がりより一層皆の士気が高まったのだった。
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第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》
登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/
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