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第50話 ピッチャー交代
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//|1|2|3|4|5|6|7|8|9|計
――――――――――――――――――――
上級生|3|0|7| |10|
中学生|0|3|5| |5|
試合状況:3回裏4番隆介のツーランで2得点。点差を5に縮めた。
およそ世界一と言っても過言でないレベルの強烈過ぎるハイタッチの衝撃によって隆介は転倒。同時にとんでもない勢いで手首やら腕やらが吹っ飛ばされたことで左手は勿論のこと左肩にもかつてない衝撃とそれを吸収しきれなかったダメージが襲い掛かって来た。
「痛ってええぇぇーー!!」
(あれ?)
当てられた龍介は悲鳴を、周りのメンバーは呆然とこちらを見つめており自分の予想した反応と大きく違った事で輝明は困惑した。
『何か間違った?』
「何かじゃねーよ!全体的に間違ってんだよ!何処の世界にただのハイタッチであんな全力投球気味に掌叩きつけて来る奴がいるってんだよ!やるならもっと軽くやれ軽く!」
(迷一杯じゃないんだ。腕か肩の力をもっと緩めるべきだったかな…ハイタッチって難しいな。やっぱりピッチング同様全力を出すのはまだ控えた方がよいのだろうか?)
「アッハハハハハハハハハハ!お腹、お腹痛い。赤坂、あんた最高。アハハハハハハハ!」
「涼夏てめえ、何笑ってんだよ」
「だってさあ、あんな”バチィ――ン!!”って。しかもあんたぶっ飛ばされてスっ転んでるし……ぷっ、アッハハハハハハハ!」
「いつまでも馬鹿みたいに笑ってんじゃねーよ!それにお前次のバッターだろうが!いいからとっと切り替えて早く打席行けよ」
「あっちのピッチャー交代で投球練習してたから待ってたのよ。でもそろそろ終わったみたいだから行くわ。いや~笑った笑った。ああ~お腹痛すぎてバッティングに影響出たらどうしよう。今もまだあんたのすっこんだ場面が脳裏に焼き付いてて…ぷっ」
「いつまでもくだらないこと言ってないでとっとと行け!」
「はいは~い」
さ~て、失投だったとは言えあの愚弟がホームラン打つとはね。ここは私も一発大きいのを狙って…と言いたいとこだけどまだ四点差でランナー無し。それに…
涼夏は打席の足場を確認しながらマウンドの方をちっと見た。
失点による投手交代。ここで私が打てるかどうかで追い上げムード継続できるかどうか。流れが変わる一つの分岐点。ここは一発狙うよりも出塁優先で変わったばかりのピッチャーの出鼻を挫く!
身長は170㎝そこそこ。一応剣崎先輩がエースである事を考えると急速は110~120㎞くらいかしら?さて、一体どんな球を投げるのかしら?
”シュッ”
「なっ!」
遅っそ!軌道は少し山なり。チェンジアップ?初球から?隆介がホームラン打った後だから負けじと私も大きいの狙って来るだろうと思って狙いを外しにきたの?確かにこの試合は負けたら終わりの公式戦じゃないから普段ならそうしてただろうけど、残念。私にとっては今日は公式戦だからチームプレイ優先!状態を残して踏みとどまれてるから大丈夫。ここまま振り抜けば…
バットを振り出した時点でジャストミート出来ると確信していた涼夏。しかし彼女の予想に反してピッチャーの放った球は降下線を辿りながらも更にシンカー気味に沈んだ。
「曲がっ!…」
”キーン”
バットの先端に当たっただけの打球はショートへと転がり難なくアウトとなった。
(そうだった…秋大にいなかったら忘れてた。三年生の特殊ピッチャー、万田先輩)
「何今の球?歪んだっていうかなんか変な曲がり方してたように見えたんだけど。カーブ系?かなんか?」
「気を付けて下さい。あの人ナックル使いです」
「えっ、ナックル?マジか~。私見た事ないんだけど」
「私も見たのは初めてでしたけど普通にやっかいですね」
話し聞いてた通りユラユラ揺れて曲がったわな。あれがナックル。フルタイムの方だとしたらランナー出さない事には攻略は難しいかも。
あまり遅くてつい初球から手を出しちゃった。球種確かめる目的も含めてもっと見ていくべきだったかな。
涼夏悔しそうに表情を歪めながらベンチに戻るとが心底嬉しそうな表情でニタニタしながらこちらを見て来た。
「あれ~可笑しいなぁ、尻拭いしてやるって息巻いてた割に凡退してるのはどうしてかな~」
「ふん、その必要性がなくなったから力が抜けちゃったのよ。まあ、それ以上に打席に入る光景があまりに可笑し過ぎて力が抜け過ぎちゃったのが原因かもね」
「「……っ」」
2人とも互いの言葉にイラつきながら無言で額に青筋を浮かべて睨み合ってた。
「そう言えばお前知ってたのか?こいつがメモとペンをポケットに入れていたの」
「そういえばさっき取り出してたわね。ああ~そう言えばそんな事言われていたような言われていなかったような」
「じゃあ俺に言っとけよ。こいつとの会話スゲ~大変で…」
「その大変ながらも相手の気持ちを理解しようと歩み寄る事が大切だって身をもって伝えかったんじゃない?あんた最初早々に諦めてたし」
まあ、赤坂とのやり取りが大変なのは確かだけど。
「誰だよ?こいつに指示してたのは」
龍介の疑問に対して輝明が真っ直ぐ相手ベンチにいる自由の方向を指し示した。
「兄貴かよ…くそっ!」
そうこうしているうちに田辺がファーストゴロとなりアウト3つ目でチャンジとなった。
「さあ、さっさと守備に就きましょうか。今度こそヒヨらないでね」
「そうだな。誰かさんの凡退した流れを引きずらないようにしないとな」
「凡退した私にも効くからその言い方は遠慮願いたいな」
面々はだべりながらグラウンドへと向かって行く。先程よりも少し緊張感が欠けているようにも感じられるが、劣勢の少し重苦しい空気でほぼ無言に近かった中で無駄話を行える余裕が出てきた事がチームとしては良い方向に変化しているなと反対側のベンチから自由は楽しそうに見つめつつ、自身の出番を今か今かと待ち遠しく感じたいた。
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上級生|3|0|7| |10|
中学生|0|3|5| |5|
試合状況:3回裏4番隆介のツーランで2得点。点差を5に縮めた。
およそ世界一と言っても過言でないレベルの強烈過ぎるハイタッチの衝撃によって隆介は転倒。同時にとんでもない勢いで手首やら腕やらが吹っ飛ばされたことで左手は勿論のこと左肩にもかつてない衝撃とそれを吸収しきれなかったダメージが襲い掛かって来た。
「痛ってええぇぇーー!!」
(あれ?)
当てられた龍介は悲鳴を、周りのメンバーは呆然とこちらを見つめており自分の予想した反応と大きく違った事で輝明は困惑した。
『何か間違った?』
「何かじゃねーよ!全体的に間違ってんだよ!何処の世界にただのハイタッチであんな全力投球気味に掌叩きつけて来る奴がいるってんだよ!やるならもっと軽くやれ軽く!」
(迷一杯じゃないんだ。腕か肩の力をもっと緩めるべきだったかな…ハイタッチって難しいな。やっぱりピッチング同様全力を出すのはまだ控えた方がよいのだろうか?)
「アッハハハハハハハハハハ!お腹、お腹痛い。赤坂、あんた最高。アハハハハハハハ!」
「涼夏てめえ、何笑ってんだよ」
「だってさあ、あんな”バチィ――ン!!”って。しかもあんたぶっ飛ばされてスっ転んでるし……ぷっ、アッハハハハハハハ!」
「いつまでも馬鹿みたいに笑ってんじゃねーよ!それにお前次のバッターだろうが!いいからとっと切り替えて早く打席行けよ」
「あっちのピッチャー交代で投球練習してたから待ってたのよ。でもそろそろ終わったみたいだから行くわ。いや~笑った笑った。ああ~お腹痛すぎてバッティングに影響出たらどうしよう。今もまだあんたのすっこんだ場面が脳裏に焼き付いてて…ぷっ」
「いつまでもくだらないこと言ってないでとっとと行け!」
「はいは~い」
さ~て、失投だったとは言えあの愚弟がホームラン打つとはね。ここは私も一発大きいのを狙って…と言いたいとこだけどまだ四点差でランナー無し。それに…
涼夏は打席の足場を確認しながらマウンドの方をちっと見た。
失点による投手交代。ここで私が打てるかどうかで追い上げムード継続できるかどうか。流れが変わる一つの分岐点。ここは一発狙うよりも出塁優先で変わったばかりのピッチャーの出鼻を挫く!
身長は170㎝そこそこ。一応剣崎先輩がエースである事を考えると急速は110~120㎞くらいかしら?さて、一体どんな球を投げるのかしら?
”シュッ”
「なっ!」
遅っそ!軌道は少し山なり。チェンジアップ?初球から?隆介がホームラン打った後だから負けじと私も大きいの狙って来るだろうと思って狙いを外しにきたの?確かにこの試合は負けたら終わりの公式戦じゃないから普段ならそうしてただろうけど、残念。私にとっては今日は公式戦だからチームプレイ優先!状態を残して踏みとどまれてるから大丈夫。ここまま振り抜けば…
バットを振り出した時点でジャストミート出来ると確信していた涼夏。しかし彼女の予想に反してピッチャーの放った球は降下線を辿りながらも更にシンカー気味に沈んだ。
「曲がっ!…」
”キーン”
バットの先端に当たっただけの打球はショートへと転がり難なくアウトとなった。
(そうだった…秋大にいなかったら忘れてた。三年生の特殊ピッチャー、万田先輩)
「何今の球?歪んだっていうかなんか変な曲がり方してたように見えたんだけど。カーブ系?かなんか?」
「気を付けて下さい。あの人ナックル使いです」
「えっ、ナックル?マジか~。私見た事ないんだけど」
「私も見たのは初めてでしたけど普通にやっかいですね」
話し聞いてた通りユラユラ揺れて曲がったわな。あれがナックル。フルタイムの方だとしたらランナー出さない事には攻略は難しいかも。
あまり遅くてつい初球から手を出しちゃった。球種確かめる目的も含めてもっと見ていくべきだったかな。
涼夏悔しそうに表情を歪めながらベンチに戻るとが心底嬉しそうな表情でニタニタしながらこちらを見て来た。
「あれ~可笑しいなぁ、尻拭いしてやるって息巻いてた割に凡退してるのはどうしてかな~」
「ふん、その必要性がなくなったから力が抜けちゃったのよ。まあ、それ以上に打席に入る光景があまりに可笑し過ぎて力が抜け過ぎちゃったのが原因かもね」
「「……っ」」
2人とも互いの言葉にイラつきながら無言で額に青筋を浮かべて睨み合ってた。
「そう言えばお前知ってたのか?こいつがメモとペンをポケットに入れていたの」
「そういえばさっき取り出してたわね。ああ~そう言えばそんな事言われていたような言われていなかったような」
「じゃあ俺に言っとけよ。こいつとの会話スゲ~大変で…」
「その大変ながらも相手の気持ちを理解しようと歩み寄る事が大切だって身をもって伝えかったんじゃない?あんた最初早々に諦めてたし」
まあ、赤坂とのやり取りが大変なのは確かだけど。
「誰だよ?こいつに指示してたのは」
龍介の疑問に対して輝明が真っ直ぐ相手ベンチにいる自由の方向を指し示した。
「兄貴かよ…くそっ!」
そうこうしているうちに田辺がファーストゴロとなりアウト3つ目でチャンジとなった。
「さあ、さっさと守備に就きましょうか。今度こそヒヨらないでね」
「そうだな。誰かさんの凡退した流れを引きずらないようにしないとな」
「凡退した私にも効くからその言い方は遠慮願いたいな」
面々はだべりながらグラウンドへと向かって行く。先程よりも少し緊張感が欠けているようにも感じられるが、劣勢の少し重苦しい空気でほぼ無言に近かった中で無駄話を行える余裕が出てきた事がチームとしては良い方向に変化しているなと反対側のベンチから自由は楽しそうに見つめつつ、自身の出番を今か今かと待ち遠しく感じたいた。
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