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第12話 遅れた自己紹介
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「いい練習になったな」
「確かに厳しいコースばっかだったから嫌でも練習になったよ」
「コースを散らしだしてからはまともにバット振れない人が多かったですからね~。収穫の意味でも良い一日でした。ね~先輩」
「うるせー!お前だってノーヒットだろうが!」
「そうだそうだ打ってない奴が偉そうに言ってんな」
「俺はずっとピッチャーとキャッチャーしてたんですが⁉︎そもそも打席にすら立っていないんですが⁉︎」
「気合いでなんとかなるだろうが」
「理不尽過ぎる…まあ、一番収穫は早くも相棒が見つかった事ですがね」
そう言うと自由は輝明の肩を掴んで自分の腰に引き寄せてた。
「つうか、改めて見てみると誘拐犯と拉致られた子の身長差すごいな。30㎝以上はありそうだ」
「ちょっと、ちょっと!もう過去の事なんですからそういう言い方はよしてくださいよ」
「過去って、つい数時間前の出来事なんだが?」
「俺らはもう打ち解け合って正真正銘のバッテリーになんったんですからチャチャ入れないでください」
「………」
(あれは打ち解け合えた、のだろうか?…僕にはまだわからないけど)
「今のこの子の無言には無口とは関係のない要素がふんだんに盛り込まれていたように感じるんだが?」
「へ~だったら聞かせてもらいたいんだけどその相棒君の名は何というだろうか?色々衝撃的すぎて聞きそびれてたんだが?」
一人の部員が尋ねた途端にさっきまでほがらかに笑っていた自由の表情が一瞬で凍り付いた。それを見た部員達はそれぞれニヤリと笑った。
「まさか知らないってことはないよな~前沢く~ん」
「先輩流石にそれは失礼ですよ~。なにせ『相棒』なんて豪語してたぐらいなんですよ?知らないわけがないじゃないですか」
「そうだな俺が悪かった。だから教えてくれないかな前沢くん。君が『相棒』とまで謳うその素敵な恋女房のお名前を。ファーストネームだけでも構わないんだけどな~」
尋ねる先輩の頬が吊り上るのに比例して自由の顔はどんどん青ざめて行き、遂に寮へと帰る道中に発狂した。
「何故だぁ――!少年の、相棒の名前が出てこなぁ――い!!」
(…まず名乗っていないのですが)
由自が地面にへばり付いて頭を抱えていると一人の部員が質問を投げかける。
「そもそもちゃんと自己紹介したのかよ?」
「ハッ!そうか、そうだよ。そもそも自己紹介してなかったんだよ。な~んだ、たかがそんな事じゃないですか。焦らせないでくださいよ先輩!」
自由はすぐさま起き上がり軽く先輩部員の背中を叩いた。しかし彼のセーブしきれていないそれは一般的な高校生に普通に突っ張りされているのと変わりない威力があり、叩かれた先輩部員はその個所を押さえて自由を睨む。
「てんめ、いつか絶対ぶっ飛ばす!」
「やめとけ、やめとけ。体格的に逆にお前がぶっ飛ばさるぞ」
「『たかがそんな事』って、初対面だと真っ先に行いそうな事なんだ?ここまで連れまわしておきながら遠回しにしてるとか…まさかとは思うが名乗ってもいないとは言わないよな?」
「………前沢自由(まえさわじゆう)!ピカピカの高校生!はい、これで名乗りましたからね!!」
「お前なぁ…」
(前沢自由…)
「さあ、今度は少年が名乗る番だ!」
「この流れで相手の名前を聞こうとできるその図々しさが凄いな」
「このご時世個人情報は無暗に晒すべきじゃないから言わなくても別にいいからね?」
ポケットに入っていた生徒手帳を部員らに見えるように開示した。
「これってうちの学校の生徒手帳じゃね?」
「何ぃー!という事はまさか君は中学生の制服でコスプレして学校の周辺を歩いていたうちの生徒だったのかぁ――!!」
「そんなわけないだろ、ちゃんとよく見てみろ。記載されてる入学の年度も期性もお前の一個下だろうが。それともお前は今まで年齢を偽っていた春から入学生なのか?」
「よかった~相棒が不審人物ではなくて」
「不審人物という意味ではお前が一番該当されそうだけどな」
「ふむふむ赤坂輝明(あかさかてるあき)か。いい名前じゃないか!えっと…なんかいい感じに感じる事が」
「語彙力小学生かよ」
「とにかく、これからよろしくな!」
こちらに親指を立てながら浮かべるその笑顔は見た目よりも幼く輝明にはとても輝いて見えた。
「確かに厳しいコースばっかだったから嫌でも練習になったよ」
「コースを散らしだしてからはまともにバット振れない人が多かったですからね~。収穫の意味でも良い一日でした。ね~先輩」
「うるせー!お前だってノーヒットだろうが!」
「そうだそうだ打ってない奴が偉そうに言ってんな」
「俺はずっとピッチャーとキャッチャーしてたんですが⁉︎そもそも打席にすら立っていないんですが⁉︎」
「気合いでなんとかなるだろうが」
「理不尽過ぎる…まあ、一番収穫は早くも相棒が見つかった事ですがね」
そう言うと自由は輝明の肩を掴んで自分の腰に引き寄せてた。
「つうか、改めて見てみると誘拐犯と拉致られた子の身長差すごいな。30㎝以上はありそうだ」
「ちょっと、ちょっと!もう過去の事なんですからそういう言い方はよしてくださいよ」
「過去って、つい数時間前の出来事なんだが?」
「俺らはもう打ち解け合って正真正銘のバッテリーになんったんですからチャチャ入れないでください」
「………」
(あれは打ち解け合えた、のだろうか?…僕にはまだわからないけど)
「今のこの子の無言には無口とは関係のない要素がふんだんに盛り込まれていたように感じるんだが?」
「へ~だったら聞かせてもらいたいんだけどその相棒君の名は何というだろうか?色々衝撃的すぎて聞きそびれてたんだが?」
一人の部員が尋ねた途端にさっきまでほがらかに笑っていた自由の表情が一瞬で凍り付いた。それを見た部員達はそれぞれニヤリと笑った。
「まさか知らないってことはないよな~前沢く~ん」
「先輩流石にそれは失礼ですよ~。なにせ『相棒』なんて豪語してたぐらいなんですよ?知らないわけがないじゃないですか」
「そうだな俺が悪かった。だから教えてくれないかな前沢くん。君が『相棒』とまで謳うその素敵な恋女房のお名前を。ファーストネームだけでも構わないんだけどな~」
尋ねる先輩の頬が吊り上るのに比例して自由の顔はどんどん青ざめて行き、遂に寮へと帰る道中に発狂した。
「何故だぁ――!少年の、相棒の名前が出てこなぁ――い!!」
(…まず名乗っていないのですが)
由自が地面にへばり付いて頭を抱えていると一人の部員が質問を投げかける。
「そもそもちゃんと自己紹介したのかよ?」
「ハッ!そうか、そうだよ。そもそも自己紹介してなかったんだよ。な~んだ、たかがそんな事じゃないですか。焦らせないでくださいよ先輩!」
自由はすぐさま起き上がり軽く先輩部員の背中を叩いた。しかし彼のセーブしきれていないそれは一般的な高校生に普通に突っ張りされているのと変わりない威力があり、叩かれた先輩部員はその個所を押さえて自由を睨む。
「てんめ、いつか絶対ぶっ飛ばす!」
「やめとけ、やめとけ。体格的に逆にお前がぶっ飛ばさるぞ」
「『たかがそんな事』って、初対面だと真っ先に行いそうな事なんだ?ここまで連れまわしておきながら遠回しにしてるとか…まさかとは思うが名乗ってもいないとは言わないよな?」
「………前沢自由(まえさわじゆう)!ピカピカの高校生!はい、これで名乗りましたからね!!」
「お前なぁ…」
(前沢自由…)
「さあ、今度は少年が名乗る番だ!」
「この流れで相手の名前を聞こうとできるその図々しさが凄いな」
「このご時世個人情報は無暗に晒すべきじゃないから言わなくても別にいいからね?」
ポケットに入っていた生徒手帳を部員らに見えるように開示した。
「これってうちの学校の生徒手帳じゃね?」
「何ぃー!という事はまさか君は中学生の制服でコスプレして学校の周辺を歩いていたうちの生徒だったのかぁ――!!」
「そんなわけないだろ、ちゃんとよく見てみろ。記載されてる入学の年度も期性もお前の一個下だろうが。それともお前は今まで年齢を偽っていた春から入学生なのか?」
「よかった~相棒が不審人物ではなくて」
「不審人物という意味ではお前が一番該当されそうだけどな」
「ふむふむ赤坂輝明(あかさかてるあき)か。いい名前じゃないか!えっと…なんかいい感じに感じる事が」
「語彙力小学生かよ」
「とにかく、これからよろしくな!」
こちらに親指を立てながら浮かべるその笑顔は見た目よりも幼く輝明にはとても輝いて見えた。
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