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第2章 冒険者編
108話 ヤケクソ
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「は、離せ貴様!」
ウエルグは呆気に取られていた状態から”はっ”と我に返ると大河の手を弾き後ずさった。
「さては貴様!あの爆発の首謀者だな!?」
「いえ、違いますけど」
それの近くにいたのは確かだけど
「ええい、黙れ黙れ!あんな代物を投下しておいて何をいうか白々しい!魔王軍の軍勢の中に人間が混じっている時点で先程爆発物なんぞを落しおった輩と繋がっているのは明白!危うく騙されるところだったわい」
別にそういうつもりで手を差し出したわけじゃないんだけど。というか魔王軍の中にって…ま、まさか
「おい、そこのあんた!よくわからないけどあんた人間《ヒューマン》だろう?そいつらは魔王軍の連中だ!危ないからさっさとこっちに来い!」
武装した冒険者らしき複数の人物たちが離れた場所でこちらを心配して叫んでいた。大河は周囲を確認するとそこには明らかに人間とは違う肌色や頭部に触覚を生やしたウエルグと同じ様な別の種族の者たちが爆発の影響で倒れていた。
これ…普通にヤバいのでは?
ようやくその思考にいき着くとすぐさま王女らの元へと駆け寄った。
「おい、起きろ!起きやがれ!起きてくださいましやがれ王女様方!」
「な、なんだ。まさか凌辱プレイ…か?もう少し…余韻に浸っていたいの、だがな。こんな動けぬ状況で仕掛けようとは、流石…我が…同…士」
「ええい!馬鹿なこと言ってる場合じゃないんだよ!」
大河は動けなくなった二人を肩に担ぎ、急いでその場を離れた。彼女らの重みと踏み出す足にかかる負担によって爆発によるダメージがこれでもかと全身にヒシヒシと伝わった。歩みを進める毎にくる激痛に若干涙目になりながら急いで人間の集まる方へと走った。
「はぁ、はぁ、はぁ。王女らとパラシュート無しダイビングと爆発の次は魔王軍の軍勢だと!ふざけんのも大概にしろ。こちとら只の成り立て冒険者だぞ!そんな危機を受け入れられるだけのステータスも経験値も獲得してねーんだよ‼」
愚痴りながらも必死で走り続け、大河は何とか街の冒険者の元まで倒れ込む形でたどり着いた。
「あんた達、大丈夫か?」
この地に伏せて息すんのがやっとの状態が大丈夫に見えますか?
そう言ってやりたかったがぐっと言葉を飲み込んだ。
「い、一応は」
「それはよかった、ありがとう。あんた達のお陰で助かったよ」
「助かった?」
「実はさっきまで魔王軍と交戦していたんだが多くの冒険者が不在のせいもあって戦力的に劣勢で、もう駄目かもしれないと思っていたところに敵の中心に突然爆発が起きて。もしかしてあれはあんた達の仕業なのか?」
「え?ま、まあそうですけど」
「やはりそうか!ありがとう!本当にありがとう!アレのお陰で敵戦力は分断・弱体化されてこちら側にいた爆発の被害に遭わなかった敵の魔王軍の奴らは撃退に成功。これで私達はまだ戦線を維持できるよ」
あいつらのくだらない特殊性癖がこんなところで役立つとは。人生とはどうなるかわからんなものだな…本当に
「しかし敵に予想外のダメージを負わせられて弱体化したとはいえ、それでも数と戦力の差は厳しい。どうする?」
一人の冒険者の現実的な言葉が他の冒険者にも突き刺さった。一時危機は止まったとはいえ所詮一時に過ぎず、態勢を整えられたら再び攻撃が来るのは明白。明るくなっていたその表情も曇り、それぞれ顔を俯きながら変え難い現状にどうすればいいのかと不安で頭を抱えていた。そんな時一人の男性が大河に問いかけた。
「なあ、もしかしてあんたら王国軍の人か?」
王国軍?もしかして救援かなんかと勘違いされてるのか?だとしたら申し訳ないけどここは…
「いや、俺たちはそんな大層なものでは…」
「いいえ、謙遜しなくていいわ。空中を飛ぶ力に、丁度私たち冒険者に当たらないように爆発の落下地点を狙い定め的確に着弾させる高等技術。紛れもなく王国兵士の特殊部隊の力よ!そうに違いないわ!」
「ち、違う!あれはそんな軍事的作戦なんて立派なものじゃなく…」
「やったー!これで私たち助かるわ!」
「王国軍が来てくれたとあれば百人力だぜ!」
「だから違あぁーーう⁉」
そんな地獄の中で救世主を見つけた目をこっちに向けないで!俺は本当に只の冒険者なんです!貴方たちが期待しているような特別な存在でもなんでもないんです!寧ろ助けを必要としているのはこっちの方なんだ!!
大河は必死に否定するものの、絶望の中に一縷の希望が舞い降りたと信じ込んでいる彼らの耳には大河の言葉は遠すぎて全く届かなかず、その熱気と士気は期待と共に上昇していった。
「さあみんな、魔王軍の奴らを押し返すぞ!」
「おおー!」
ああ、もうぉぉ!!何でこんな事に…完全に助けが来たと思い込んでるよ、この人達。ぜーーーーんぜん、そんな大層な理由で来たわけでも、そんな力があるわけでもないのに……ドォ~ウシヨウ?ボクモウワカンナイヤ
大河が途方に暮れて脳がショートしかけていると予想がいの人物の言葉が飛び出した。
「ふふふ、誇り高き冒険者たちよ。私たちが来たからにはもう大丈夫だ!私たちは王国より派遣された冒険者だ!君たちを救う為にはるばるやって来た!」
そこには爆発のダメージから復活したエルノアが仁王立ちで高らかに宣言している姿があった。しかしその口から出た大河にとって状況を悪化させる飛んでもない台詞は大河には到底聞き逃すことのできるものではなかった。
「ば、馬鹿あぁーー!!嘘を誇張すんな!これ以上状況をややこしくしてどうすんだよ!」
「それでも必要な事なんだ。少なくとも…この場において」
いつもの活発な声より数段トーンを下げた低い声色で今までにない真剣な表情で彼女は呟いた。
こいつ…
「………そんだけカッコつけたんだから何か秘策とか勝算でもあるんだよな?」
「無い」
「無いのかよ!それでよくああも言い切ったな⁉立派なのは口先だけですかこの野郎!!」
「同士…いや、タイガよ。例えそれが中身のないハッタリだろうと絶望から奮起させ為に根拠がなかろうと言い切らねばならない時がある。そしてそれが…今なんだ!」
マジで発言はご立派だな。発言だけは。だが…
「いや、ここは一旦引いて大勢を立て直した方が…」
「街まであまり距離がない。恐らくここが維持できる最終防衛地点。しかも街の方から援軍が来る気配が感じられない。つまり戦力の補強は期待できない。だからここで対抗するしかない。何より私たちが逃げる事は許されない」
「エルノアの言う通りです。例え勝ち目のない戦いであったとしても人々に希望を与え導かねばなりません。私たちは…王族なのですから」
そう言っている二人の足元は震えており、立っているのもやっとの様子だった。それが爆発のダメージによるものかそれともこれからの戦いに対する恐怖によるものかはわからなかったがそれでもそれを表情には出さず、普段から見られない凛とした表情で堂々と前を向いているその姿に大河は胸を打たれた。
いつもは奇怪な行動ばかりとって周囲を困らせてる癖にこんな時に限って…ああクッソ!
「分かったよ、やってやるよ!お前らの口車に騙されて乗せられてやるよ!」
この言葉は好きじゃないけれど…ここで小鹿みたいに震えながら頑張る少女二人を見捨てるようじゃ冒険者どころか男でもなくなっちまうからな
「!…よく言った、流石我が同士!それではさっそく希望の礎…いや、星となってもらおうか」
「はい?」
大河が意味がよくわからず混乱している間にエルノアは大きく深呼吸し冒険者に向かって叫んだ。
「よく聞け皆の衆!こ奴が我らのリーダーにして切り札だ!「えっ?」こ奴が敵軍の指揮官の首を必ず捕る「はぁ⁉」だからお前たちも諦めず我々の背中を押してほしい」
「ちょ、待っ…」
「「「おおー!」」」
エルノア鼓舞するその言葉に全く根拠のカケラが無いことなど知る由もない冒険者たちは彼女らを特別と信じて疑わず、必ず勝利できるものと思い込み盛り上がった。大河の声は先程よりも更にひと際大きな歓声によってかき消され、どんなに頑張っても彼の言葉届かず、エルノアらはそんな彼を見てニヤリと笑みを浮かべ、大河は頬を引きつらせた。
「おおおおおおお、おま、お前ーー!!なんて事を‼取り消せ!今すぐさっきの言葉を嘘でしたと撤回しろ!」
「くっくっくっ、こうなってしまってはもう取り返しがつくまい。まあ、冒険者をやっていればこういう事もあるものだ、うん」
「お・ま・え・の・せ・い・で・な!自然と巻き込まれてしまった的な他人ごとみたいに言ってんな!紛れも無くお前がハードルを跳ね上げた張本人だろうが!」
「難易度がほんの少し上がっただけですからそんなにはしゃがないでください」
「『敵と戦う』から『敵大将を討ち取る』だぞ⁉︎難易度的には普通《ノーマル》が超難しいに変更したようなもんだぞ。全然ちょっとじゃないぞ⁉︎ほんの少しとかいうのは討伐数の2、3体追加する程度のことを言うんだよ‼︎」
「この状況では仕方あるまい。それに仮にもあの英雄奇人ブライトに教えを施されたのだろう?」
「!!」
それを今持ち出すのかよ…ずり~な、たく
「お前らこの戦いが終わったら覚えてろよ⁉︎」
「信頼しているぞ、同士よ。我々も力の限りを尽くす」
「ええ、王族の誇りにかけて最後まで抗いましょう。さあ、骨は拾って差し上げます。いってらっしゃませ」
「ああ~もう!こうなったらやけだ!ヤケクソだ!今の俺に演じきれるとは到底思えんが力の限り演じきってやるよ!偽の英雄をを!」
こうして半ば強引に開き直り、泣く泣く大河もエルノアらと同じく前を向くのだった。
ウエルグは呆気に取られていた状態から”はっ”と我に返ると大河の手を弾き後ずさった。
「さては貴様!あの爆発の首謀者だな!?」
「いえ、違いますけど」
それの近くにいたのは確かだけど
「ええい、黙れ黙れ!あんな代物を投下しておいて何をいうか白々しい!魔王軍の軍勢の中に人間が混じっている時点で先程爆発物なんぞを落しおった輩と繋がっているのは明白!危うく騙されるところだったわい」
別にそういうつもりで手を差し出したわけじゃないんだけど。というか魔王軍の中にって…ま、まさか
「おい、そこのあんた!よくわからないけどあんた人間《ヒューマン》だろう?そいつらは魔王軍の連中だ!危ないからさっさとこっちに来い!」
武装した冒険者らしき複数の人物たちが離れた場所でこちらを心配して叫んでいた。大河は周囲を確認するとそこには明らかに人間とは違う肌色や頭部に触覚を生やしたウエルグと同じ様な別の種族の者たちが爆発の影響で倒れていた。
これ…普通にヤバいのでは?
ようやくその思考にいき着くとすぐさま王女らの元へと駆け寄った。
「おい、起きろ!起きやがれ!起きてくださいましやがれ王女様方!」
「な、なんだ。まさか凌辱プレイ…か?もう少し…余韻に浸っていたいの、だがな。こんな動けぬ状況で仕掛けようとは、流石…我が…同…士」
「ええい!馬鹿なこと言ってる場合じゃないんだよ!」
大河は動けなくなった二人を肩に担ぎ、急いでその場を離れた。彼女らの重みと踏み出す足にかかる負担によって爆発によるダメージがこれでもかと全身にヒシヒシと伝わった。歩みを進める毎にくる激痛に若干涙目になりながら急いで人間の集まる方へと走った。
「はぁ、はぁ、はぁ。王女らとパラシュート無しダイビングと爆発の次は魔王軍の軍勢だと!ふざけんのも大概にしろ。こちとら只の成り立て冒険者だぞ!そんな危機を受け入れられるだけのステータスも経験値も獲得してねーんだよ‼」
愚痴りながらも必死で走り続け、大河は何とか街の冒険者の元まで倒れ込む形でたどり着いた。
「あんた達、大丈夫か?」
この地に伏せて息すんのがやっとの状態が大丈夫に見えますか?
そう言ってやりたかったがぐっと言葉を飲み込んだ。
「い、一応は」
「それはよかった、ありがとう。あんた達のお陰で助かったよ」
「助かった?」
「実はさっきまで魔王軍と交戦していたんだが多くの冒険者が不在のせいもあって戦力的に劣勢で、もう駄目かもしれないと思っていたところに敵の中心に突然爆発が起きて。もしかしてあれはあんた達の仕業なのか?」
「え?ま、まあそうですけど」
「やはりそうか!ありがとう!本当にありがとう!アレのお陰で敵戦力は分断・弱体化されてこちら側にいた爆発の被害に遭わなかった敵の魔王軍の奴らは撃退に成功。これで私達はまだ戦線を維持できるよ」
あいつらのくだらない特殊性癖がこんなところで役立つとは。人生とはどうなるかわからんなものだな…本当に
「しかし敵に予想外のダメージを負わせられて弱体化したとはいえ、それでも数と戦力の差は厳しい。どうする?」
一人の冒険者の現実的な言葉が他の冒険者にも突き刺さった。一時危機は止まったとはいえ所詮一時に過ぎず、態勢を整えられたら再び攻撃が来るのは明白。明るくなっていたその表情も曇り、それぞれ顔を俯きながら変え難い現状にどうすればいいのかと不安で頭を抱えていた。そんな時一人の男性が大河に問いかけた。
「なあ、もしかしてあんたら王国軍の人か?」
王国軍?もしかして救援かなんかと勘違いされてるのか?だとしたら申し訳ないけどここは…
「いや、俺たちはそんな大層なものでは…」
「いいえ、謙遜しなくていいわ。空中を飛ぶ力に、丁度私たち冒険者に当たらないように爆発の落下地点を狙い定め的確に着弾させる高等技術。紛れもなく王国兵士の特殊部隊の力よ!そうに違いないわ!」
「ち、違う!あれはそんな軍事的作戦なんて立派なものじゃなく…」
「やったー!これで私たち助かるわ!」
「王国軍が来てくれたとあれば百人力だぜ!」
「だから違あぁーーう⁉」
そんな地獄の中で救世主を見つけた目をこっちに向けないで!俺は本当に只の冒険者なんです!貴方たちが期待しているような特別な存在でもなんでもないんです!寧ろ助けを必要としているのはこっちの方なんだ!!
大河は必死に否定するものの、絶望の中に一縷の希望が舞い降りたと信じ込んでいる彼らの耳には大河の言葉は遠すぎて全く届かなかず、その熱気と士気は期待と共に上昇していった。
「さあみんな、魔王軍の奴らを押し返すぞ!」
「おおー!」
ああ、もうぉぉ!!何でこんな事に…完全に助けが来たと思い込んでるよ、この人達。ぜーーーーんぜん、そんな大層な理由で来たわけでも、そんな力があるわけでもないのに……ドォ~ウシヨウ?ボクモウワカンナイヤ
大河が途方に暮れて脳がショートしかけていると予想がいの人物の言葉が飛び出した。
「ふふふ、誇り高き冒険者たちよ。私たちが来たからにはもう大丈夫だ!私たちは王国より派遣された冒険者だ!君たちを救う為にはるばるやって来た!」
そこには爆発のダメージから復活したエルノアが仁王立ちで高らかに宣言している姿があった。しかしその口から出た大河にとって状況を悪化させる飛んでもない台詞は大河には到底聞き逃すことのできるものではなかった。
「ば、馬鹿あぁーー!!嘘を誇張すんな!これ以上状況をややこしくしてどうすんだよ!」
「それでも必要な事なんだ。少なくとも…この場において」
いつもの活発な声より数段トーンを下げた低い声色で今までにない真剣な表情で彼女は呟いた。
こいつ…
「………そんだけカッコつけたんだから何か秘策とか勝算でもあるんだよな?」
「無い」
「無いのかよ!それでよくああも言い切ったな⁉立派なのは口先だけですかこの野郎!!」
「同士…いや、タイガよ。例えそれが中身のないハッタリだろうと絶望から奮起させ為に根拠がなかろうと言い切らねばならない時がある。そしてそれが…今なんだ!」
マジで発言はご立派だな。発言だけは。だが…
「いや、ここは一旦引いて大勢を立て直した方が…」
「街まであまり距離がない。恐らくここが維持できる最終防衛地点。しかも街の方から援軍が来る気配が感じられない。つまり戦力の補強は期待できない。だからここで対抗するしかない。何より私たちが逃げる事は許されない」
「エルノアの言う通りです。例え勝ち目のない戦いであったとしても人々に希望を与え導かねばなりません。私たちは…王族なのですから」
そう言っている二人の足元は震えており、立っているのもやっとの様子だった。それが爆発のダメージによるものかそれともこれからの戦いに対する恐怖によるものかはわからなかったがそれでもそれを表情には出さず、普段から見られない凛とした表情で堂々と前を向いているその姿に大河は胸を打たれた。
いつもは奇怪な行動ばかりとって周囲を困らせてる癖にこんな時に限って…ああクッソ!
「分かったよ、やってやるよ!お前らの口車に騙されて乗せられてやるよ!」
この言葉は好きじゃないけれど…ここで小鹿みたいに震えながら頑張る少女二人を見捨てるようじゃ冒険者どころか男でもなくなっちまうからな
「!…よく言った、流石我が同士!それではさっそく希望の礎…いや、星となってもらおうか」
「はい?」
大河が意味がよくわからず混乱している間にエルノアは大きく深呼吸し冒険者に向かって叫んだ。
「よく聞け皆の衆!こ奴が我らのリーダーにして切り札だ!「えっ?」こ奴が敵軍の指揮官の首を必ず捕る「はぁ⁉」だからお前たちも諦めず我々の背中を押してほしい」
「ちょ、待っ…」
「「「おおー!」」」
エルノア鼓舞するその言葉に全く根拠のカケラが無いことなど知る由もない冒険者たちは彼女らを特別と信じて疑わず、必ず勝利できるものと思い込み盛り上がった。大河の声は先程よりも更にひと際大きな歓声によってかき消され、どんなに頑張っても彼の言葉届かず、エルノアらはそんな彼を見てニヤリと笑みを浮かべ、大河は頬を引きつらせた。
「おおおおおおお、おま、お前ーー!!なんて事を‼取り消せ!今すぐさっきの言葉を嘘でしたと撤回しろ!」
「くっくっくっ、こうなってしまってはもう取り返しがつくまい。まあ、冒険者をやっていればこういう事もあるものだ、うん」
「お・ま・え・の・せ・い・で・な!自然と巻き込まれてしまった的な他人ごとみたいに言ってんな!紛れも無くお前がハードルを跳ね上げた張本人だろうが!」
「難易度がほんの少し上がっただけですからそんなにはしゃがないでください」
「『敵と戦う』から『敵大将を討ち取る』だぞ⁉︎難易度的には普通《ノーマル》が超難しいに変更したようなもんだぞ。全然ちょっとじゃないぞ⁉︎ほんの少しとかいうのは討伐数の2、3体追加する程度のことを言うんだよ‼︎」
「この状況では仕方あるまい。それに仮にもあの英雄奇人ブライトに教えを施されたのだろう?」
「!!」
それを今持ち出すのかよ…ずり~な、たく
「お前らこの戦いが終わったら覚えてろよ⁉︎」
「信頼しているぞ、同士よ。我々も力の限りを尽くす」
「ええ、王族の誇りにかけて最後まで抗いましょう。さあ、骨は拾って差し上げます。いってらっしゃませ」
「ああ~もう!こうなったらやけだ!ヤケクソだ!今の俺に演じきれるとは到底思えんが力の限り演じきってやるよ!偽の英雄をを!」
こうして半ば強引に開き直り、泣く泣く大河もエルノアらと同じく前を向くのだった。
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