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第1章 異世界転生編

48話 上司のお説教

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「さあ犯罪者よ!腑抜けた顔をしてないでちゃんとこちらに向き合いなさい。そして何で持ち合わせているのか知らないが役に立たない調理器具《フライパン》など捨てて手持ちの武器でさっさとかかって来るがいい」

「なあブルー、こんなハナカス相手にわざわざ待ってやる必要なんかねーって。俺らでとっとと断罪しちまおうぜ」

「それはいけませんよレッド。いくら相手が無法者とはいえろくに武器も構えていない相手にそれをやってしまったら私達も同じとは言いませんが似たようなものですよ。そんなのは紳士とは呼べません」

「くっ!だけどよ…」

「大丈夫です。あのような卑怯者に正義である我々が負けるわけがありません。まともに我々の圧勝に決まっています」

「それは…確かにハナカスなんかに負ける訳ないけどよ」

(正々堂々とか言ってときながら戦う時は2体1って矛盾してないですかね?)

「寧ろほぼ丸腰の彼を断罪した後で例え勝ち目がないのが分かっていても『俺は武器を所持していなかったから負けたのだ』とか『無防備な相手に武装した状態で戦いを挑んでくる方が卑怯だ』とかみたいな見苦しい言い訳で我々の美しい勝利に泥を塗られ、卑怯者扱いされる方がずっと嫌でしょう?」

「そうだな、こんなハナカスに後からケチを付けられる方が屈辱だもんな。ようしそうと分かれば…おい、ぼさぼさしてないでとっと武器を構えろ。まあどうせ貧弱な装備だろうけどよ」

「このフランパンが武器なんだけど?」

「何だと?ふざけてるのか貴様」

(俺としては大真面目なんだけど。そもそも他に武器になるもの自体持ち合わせてないし)

「どうやら理解の及ばないレベルの変人…いや失敬。犯罪者なる者は大抵変人だったな。悪いとは欠片も思っていないが私のモラルの為に謝罪しておこう。悪かった」

「謝るのか貶すのかどっちかにしてくれ。めんどくさい」

 大河が連戦に次ぐ連戦姉妹とトンガリコンビとの口論によって大河が疲弊しきりながらも相手をしているとまたしてもレッドとブルーの同僚と思われる兵士の恰好をした集団が2人の後を追ってきた感じでやって来た。
そしてその先頭の如何にもな雰囲気のを纏った中年男性らしき兵士が前に出てきた。

「全くお前ら、毎度毎度先行しすぎるなと言っているだろうが」

(またしてもお仲間の到着か。それは大量に…もうこれ以上変な奴の介入は勘弁だ。できることなら早々にお帰り願いたいものだ。本当にマジで)

「すいませんエルド隊長。もうしません」

「そう言ってその約束が守られた試しがないのだがレッド?お前もだぞブルー。クラリス様の事となると暴走してしまう癖をいい加減直してくれ」

「はっ!焦って陣形を乱し1人…いえ、2人先走ってしまい申し訳ありませんでした。今後のこのような事が起こらぬように善処する方向で検討していくつもりであります」

「どうして自分で問題点が分かっているのに一向に改善されないどころかその兆しすら見えてこないのかね」

(この人も苦労してんだな。そして会って早々にこんな問題児《レッドとブルー》と同種かもとか思ってごめんなさい)

 大河が心の中でエルドに向けて謝罪する中、エルドは呆れ気味に溜息を吐きながら、レッド方を指差した。

「それにハッキリ言ってしまえばとはいえ断言しているレッドと違って何で『善処します』と言い切らずにわざわざ検討する方向にもっていこうとするのかが私には理解できいのだが?」

「ちょっとエルド隊長、ほぼ形だけってどういうことですか!俺は真剣に改善しようと思ってますよ!」

 レッドが上司の発言に対して納得いかないといった感じで食ってかかるが、エルドの方もレッド発言が聞き捨てならないとようで顔をしかめた。

「ほほう。それは中々興味深い発言だな君が今まで1年間365日欠かさず1回以上行ってきた問題行動時において注意した直後、毎回毎回『もうしません』と宣言しているにも関わらず、それが一度として有言実行されてない事実を鑑みて、君の発言をその場凌ぎの形だけのものと捉えた私の判断は間違っていると思うかねレッド君?」

「いや~それはその…何と言いますでしょうか。実行はできていなくても間違いを正そうとする気持ちが大事といいましょうか。そう、宣言通り行えているとは言えないまでも、問題行動時の時間量は徐々に少なくなっている筈…だと思います」

(うわ~上司としてはさぞ嫌だろうなこんな部下。そして予想以上にしょうもないコイツ)

「つまり君は自粛できてはいないが騒動の時間は年々減少傾向にあり、完璧には遠いが言いつけを守るために着々と努力を積み重ねていると?」

「は、はい!その通りです僕なりに改善できるように努力しているつもりです」

 状況的に明らかに自分に不利な事を感じていたレッドはエルドの問いかけにすぐさま飛びついた。

「そうか、成る程。要するに君も自身の行動を振り返り努力はしているのだな。…だがそうなると非常に疑問に思いうことがあるのだが?」

「はい、何でしょうか?」

「仮に君の言うように?」

「えっ~とですね。それは恐らく隊長の記憶違いかと」

「つまり私が勘違いしていると?」

「いえ、ほらここのところ任務で疲れていたみたいですし、それが原因なんじゃないですかね」

「なるほど、確かに私は最近疲れがたまっているし一理あるかもしれない
な。まあ疲れている

「や、やっぱり。日頃から頑張りすぎているから記憶が曖昧なものになってしまってるんですよ。さあ、いつまでもこんな所に居ないでさっさと…」

「ところでレッド君。君は今現在君が毎日提出している反省書の枚数が何枚になっているのか当然分かっているのだよね?」

 予想外の話が持ち出された上に回答に困る質問だったのもあって、レッドは少しの間考える素ぶりを見せたあと返答した。

「ま、毎日一枚ずつだと…」

「それは入所当時の話だろう。私はここ最近の枚数を尋ねているんだがね?」

「か、変わらず

3。ここ最近だと5枚描くことも珍しくないはずだ。何故毎日記載して提出している反省書の枚数すら把握していないのかね?」

「い、いつも同じ枚数ではないから勘違いしちゃったみたいですね。ははははは」

「反省書が一枚で済んだ日など今年に入ってから一日足りとも存在していないのにどうやったら勘違い出来るの教えてほしいものだがね」

「ぼ、僕も疲れが溜まってしまってるんですかね?はははははははは」

 口調はやんわりとしているものの話が進む毎に強まり続ける上司の圧とジワジワ追い詰められている現状にレッドは何とか苦笑いをして誤魔化そうと必死だった。


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