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第4章 生きることは、守られること
第7話 三田村に気をつけろ
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【真之助視点】
私たちを乗せた白のセダンは田んぼの中を真っすぐ伸びる農道をゆく。
農道といっても砂利を敷いた悪路ではなく、きちんと舗装された道であるから、車は滑らかにスピードに乗る。
「この道は以前担当した走り屋の子が教えてくれた裏道でね。渋滞を上手く避けられるから、駅まで難なく行けるんだよ」
運転席でハンドルを握る藤木さんが破顔した。
この車は藤木さんの私用車だから警察無線や赤色灯は設置されていない。
代わりにちょっと前に中高生の間で流行ったクマのキャラクターがルームミラーからぶら下がっている。藤木さんがお世話した子からプレゼントされたものだろうと推測できた。
三十代の男性には不似合いなマスコットだけれど、そのアンバランスな感じが却って車内を居心地よく演出している。
「情報網が広いんですね。友人Aとは今日みたいに時々会ってるんですか?」
助手席の真が上機嫌に訊ねた。
「そうだよ」と藤木さんはまた破顔する。
「補導したから終わり、じゃあ、何だか寂しいだろ。俺は自分が担当した子はああやって時々様子を窺っては生活状況を確認しているんだよ。そうすれば、彼らが今置かれている環境や状況が把握できるだろ? 多感な時期だ、周囲が小さな変化を感じ取ってあげれば、彼らはきっと立ち直れる。昔、先輩がそう教えてくれたんだ。もちろん、芦屋君を信じているけれど、彼は人一倍繊細だから心配さ」
ふと藤木さんの車を見送ってくれた友人A君を思い出す。
「桜並木警察署に戻るついでだから駅まででよかったら送るよ」と藤木さんが私たちを誘ってくれたときのことだ。
友人A君は随分と羨ましげな様子で、車に乗り込む真を眺めていた。自分もドライブに連れて行って欲しいとまでは口にしなかったけれど、藤木さんとまだまだ喋り足りなかったようだった。
まるで、遠くに離れて住む兄弟を慕うかのように別れを惜しんでいた。
「ところで、藤木さんは安藤さんのことが好きなんですよね?」
真の不躾な問いに藤木さんの顔が真っ赤に染まった。もし、何か飲み物を飲んでいたとしたら、思い切り噴き出していたかもしれない。不覚にもといった感じの面食らい方だ。
「どうしてそれを」
「この間、三田村さんに買収されていたじゃないですか。安藤さんとの合コンを約束するから、オレのことを見逃すようにって。安藤さんのどの辺りが好きなんですか?」
「……彼女、笑顔が素敵なんだ」
「笑顔、ですか?」
真が半信半疑の声を出した。科学者が「宇宙人は存在するのか」と都市伝説の真偽を訊ねるかのような懐疑的な顔が藤木さんに向けられる。
「安藤さんは今年の三月まで別の署にいてね。去年、ちょっとした所用があって、その署を訪ねたときに応対してくれたのが彼女だったんだよ。一見、とっつにきにくいけれど、話しているうちにだんだんと彼女の人柄がわかってきてさ。ふとした瞬間にこぼれた笑みが素敵だったんだ」
「想像つきませんけど、ギャップにやられたわけですか」
「そうだね」
生者がギャップに弱いのはよく聞く話だ。
不良少年が捨て猫に優しくしている姿を見て、「あの人は本当は優しい人なんだ」と心をときめかせる人がいれば、一方で、普段「良い人」と定評のある人がたまたま虫の居所が悪く、ほんの少し素っ気ない態度を取っただけで、「あの人は本当は意地悪な人なんだ」と判断する人もいる。
ギャップは良くも悪くも、人柄の善し悪しを左右する重要なスパイスになる。
「オレ、藤木さんのこと、応援してますよ」
「大人をからかうんじゃないよ」
藤木さんは真の頭を軽く小突いた。
農道から県道に入り、桜並木市の中心街に近づにつれ、街の灯りも賑わい出してきた。いくつか信号を越えた先の緩やかな下り坂の途中だった。
「女の子が泣いている」
私は後部座席で思わず声を発した。
十歳にも満たない小さな女の子がしゃがみ込んで顔を覆っていたのだ。ひとりで泣いているようだが、親とはぐれたわけではなさそうだ。
「どこ?」
真が私の視線を追いかけ、後方に顔を向けた。
「そこ、立て看板のある電柱のところ」
「見間違いだろ、誰もいないぞ」
「そりゃそうだよ、彼女は死者だもん」
「死者?」
真はそこまで応えてから、私と口を利いてしまったことに後悔したのか、一度硬直してから、「突然、喋り出してどうしたの?」と訝しげに訊ねる藤木さんに、今にも泣き出しそうな笑顔を返した。
「女の子が見えた気がしたんですけど、オレが疲れているんですよね、目の錯覚です」
バックミラーを通して藤木さんは確認する。すると、意外な言葉が返ってきた。
「この辺りはね、幽霊坂。そう呼ばれているんだよ」
「幽霊坂?」
真の横顔が瞬く間に恐怖で歪んだ。しまりの悪い戸口のように口が半開きになっている。
正面を見据えたまま、藤木さんは続けた。
「よく警ら中のパトカーが着物姿の女の子の幽霊を目撃するって話だよ。俺は女の子には気付かなかったから、もしかすると崎山君は見たのかもしれないね」
「やめてくださいよ」
「なんてね、迷信だよ。桜並木市は城下町だからね、面白がってそんな噂が流れているんだろう」
「ですよね」
真は私の単なる冗談だと受け取ったようで、「嘘つき野郎」と声は出さずに唇だけを動かした。
「チェッ」
私は振り返って、もう一度窓の外を見やった。
夕闇が少しずつ降り積もる街に、着物姿の小さな女の子がひとり取り残されていた。
子供らしい丸い顔立ちに行儀よく並んだ二つのつぶらな瞳が私に助けを求めていた。彼女が泣き声を上げる度に周囲の外灯は明滅し、物寂しさが際立つ。
いつからあの子はひとりぼっちで泣いているのだろうか。
後ろ髪を引かれる思いに捉われたけれど、私には関係のないことだと思い直し、顔を前に戻した。
白のセダンは駅裏の送迎者用スペースに停車した。三田村さんが桜並木駅前で待っていると考えた真が、駅裏で降ろしてくれるように頼んだからだ。藤木さんは不思議がる様子もなく、ひとつ返事で車を回してくれた。
「崎山君」
車を降りようとした真が左足を地面に乗せたとき、藤木さんが追いすがるように呼び止めた。助手席側に体を傾け、首を伸ばすようにしている。
「三田村に気をつけた方がいい」
「どういう意味ですか?」
眉根を寄せた真の問いで、藤木さんは目が覚めたかのようにハッとしてから、頭を左右に振って自分の発言を打ち消した。
「何でもないんだ。今のは忘れてくれ」
「あの――」
「それじゃあ、もうひとり会わなきゃいけない子がいるから。またね」
真は釈然としない様子で小さくなってゆくテールランプを見送った。
藤木さんの引き締まった声は冗談と呼ぶには簡単に片付けられないほど、得体の知れない奇妙な響きを持っていた。
「藤木さんまで三田村さんがBLだって言うんじゃないだろうな」
今朝の一件を思い出した真が要りもしない心配を口にしたとき、後方から近づいてくる複数の笑い声が私の焦燥感を呼び覚ました。
桜並木高校の制服を着崩した集団、上野君のグループだ。
上野君たちは歩道いっぱいに広がりながら、ずるずると靴を引きずるようにして歩いている。その中に見慣れぬ私服姿の青年がひとり混じっていた。
針のように細い眉と蛇のように小さな目。彫りの深い上野君とは対照的なさっぱりとした面立ちだ。
新しくグループに入った仲間だろうかとも思ったけれど、上野君が敬語で応じていることから、どうやらそうではないらしい。
年は十代後半から二十代前半くらいといったところか。金髪と黒髪が入り混じった短髪はヒョウの毛並みのようだった。青年は上野君の肩にぐるりと腕を回している。
「後ろに上野君がいる」
「な、何だって」
「落ち着いて。振り返らずに逃げるよ」
「わかった」
しかし、そうは問屋が卸さなかった。真が地面を蹴るよりも早く、上野君の声が真の襟首を強引に捕まえたのだ。
「崎山、今日という今日は逃がさねえぞ!」
上野君への恐怖心から真の緊張の糸がピンっと張りつめたのが伝わってきた。
前回、絡まれたときは友人A君の手助けで危機を免れたが、ここは駅裏ということもあり、人通りは限りなく少なく、頼れる人物は見当たらない。
それに上野君の隣にいる青年が手強いであろうことは彼が発する独特の空気から察することができた。
上野君たちと比べ、圧倒的に体格がよく、格闘技経験者と言ってもいいほど、筋肉が引き締まっている。そればかりか、私たちにとって不運なことに青年は元凶の憑依を受けていた。
私が霊力を使って上野君たちに直接手を下せれば、簡単に真を守ることができるだろう。
しかし、他人のお付き人に向かって霊力を使うことは危害を加えることであり、原則として禁止されている。
背に腹は代えられないとは言え、すでに私は真を守るために平沢君を巻き込んで霊力を使ってしまっているから、何度も掟を破れば、寿々子さんと同じ顛末を辿ってしまうだろう。それだけは避けなければならなかった。
ここは真が自力で切り抜けるしかないのだ。
「走るんだ。真の逃げ足は誰にも負けない!」
私は叱咤激励のつもりで今にも消えてしまいそうな小さな背中を叩いた。
私たちを乗せた白のセダンは田んぼの中を真っすぐ伸びる農道をゆく。
農道といっても砂利を敷いた悪路ではなく、きちんと舗装された道であるから、車は滑らかにスピードに乗る。
「この道は以前担当した走り屋の子が教えてくれた裏道でね。渋滞を上手く避けられるから、駅まで難なく行けるんだよ」
運転席でハンドルを握る藤木さんが破顔した。
この車は藤木さんの私用車だから警察無線や赤色灯は設置されていない。
代わりにちょっと前に中高生の間で流行ったクマのキャラクターがルームミラーからぶら下がっている。藤木さんがお世話した子からプレゼントされたものだろうと推測できた。
三十代の男性には不似合いなマスコットだけれど、そのアンバランスな感じが却って車内を居心地よく演出している。
「情報網が広いんですね。友人Aとは今日みたいに時々会ってるんですか?」
助手席の真が上機嫌に訊ねた。
「そうだよ」と藤木さんはまた破顔する。
「補導したから終わり、じゃあ、何だか寂しいだろ。俺は自分が担当した子はああやって時々様子を窺っては生活状況を確認しているんだよ。そうすれば、彼らが今置かれている環境や状況が把握できるだろ? 多感な時期だ、周囲が小さな変化を感じ取ってあげれば、彼らはきっと立ち直れる。昔、先輩がそう教えてくれたんだ。もちろん、芦屋君を信じているけれど、彼は人一倍繊細だから心配さ」
ふと藤木さんの車を見送ってくれた友人A君を思い出す。
「桜並木警察署に戻るついでだから駅まででよかったら送るよ」と藤木さんが私たちを誘ってくれたときのことだ。
友人A君は随分と羨ましげな様子で、車に乗り込む真を眺めていた。自分もドライブに連れて行って欲しいとまでは口にしなかったけれど、藤木さんとまだまだ喋り足りなかったようだった。
まるで、遠くに離れて住む兄弟を慕うかのように別れを惜しんでいた。
「ところで、藤木さんは安藤さんのことが好きなんですよね?」
真の不躾な問いに藤木さんの顔が真っ赤に染まった。もし、何か飲み物を飲んでいたとしたら、思い切り噴き出していたかもしれない。不覚にもといった感じの面食らい方だ。
「どうしてそれを」
「この間、三田村さんに買収されていたじゃないですか。安藤さんとの合コンを約束するから、オレのことを見逃すようにって。安藤さんのどの辺りが好きなんですか?」
「……彼女、笑顔が素敵なんだ」
「笑顔、ですか?」
真が半信半疑の声を出した。科学者が「宇宙人は存在するのか」と都市伝説の真偽を訊ねるかのような懐疑的な顔が藤木さんに向けられる。
「安藤さんは今年の三月まで別の署にいてね。去年、ちょっとした所用があって、その署を訪ねたときに応対してくれたのが彼女だったんだよ。一見、とっつにきにくいけれど、話しているうちにだんだんと彼女の人柄がわかってきてさ。ふとした瞬間にこぼれた笑みが素敵だったんだ」
「想像つきませんけど、ギャップにやられたわけですか」
「そうだね」
生者がギャップに弱いのはよく聞く話だ。
不良少年が捨て猫に優しくしている姿を見て、「あの人は本当は優しい人なんだ」と心をときめかせる人がいれば、一方で、普段「良い人」と定評のある人がたまたま虫の居所が悪く、ほんの少し素っ気ない態度を取っただけで、「あの人は本当は意地悪な人なんだ」と判断する人もいる。
ギャップは良くも悪くも、人柄の善し悪しを左右する重要なスパイスになる。
「オレ、藤木さんのこと、応援してますよ」
「大人をからかうんじゃないよ」
藤木さんは真の頭を軽く小突いた。
農道から県道に入り、桜並木市の中心街に近づにつれ、街の灯りも賑わい出してきた。いくつか信号を越えた先の緩やかな下り坂の途中だった。
「女の子が泣いている」
私は後部座席で思わず声を発した。
十歳にも満たない小さな女の子がしゃがみ込んで顔を覆っていたのだ。ひとりで泣いているようだが、親とはぐれたわけではなさそうだ。
「どこ?」
真が私の視線を追いかけ、後方に顔を向けた。
「そこ、立て看板のある電柱のところ」
「見間違いだろ、誰もいないぞ」
「そりゃそうだよ、彼女は死者だもん」
「死者?」
真はそこまで応えてから、私と口を利いてしまったことに後悔したのか、一度硬直してから、「突然、喋り出してどうしたの?」と訝しげに訊ねる藤木さんに、今にも泣き出しそうな笑顔を返した。
「女の子が見えた気がしたんですけど、オレが疲れているんですよね、目の錯覚です」
バックミラーを通して藤木さんは確認する。すると、意外な言葉が返ってきた。
「この辺りはね、幽霊坂。そう呼ばれているんだよ」
「幽霊坂?」
真の横顔が瞬く間に恐怖で歪んだ。しまりの悪い戸口のように口が半開きになっている。
正面を見据えたまま、藤木さんは続けた。
「よく警ら中のパトカーが着物姿の女の子の幽霊を目撃するって話だよ。俺は女の子には気付かなかったから、もしかすると崎山君は見たのかもしれないね」
「やめてくださいよ」
「なんてね、迷信だよ。桜並木市は城下町だからね、面白がってそんな噂が流れているんだろう」
「ですよね」
真は私の単なる冗談だと受け取ったようで、「嘘つき野郎」と声は出さずに唇だけを動かした。
「チェッ」
私は振り返って、もう一度窓の外を見やった。
夕闇が少しずつ降り積もる街に、着物姿の小さな女の子がひとり取り残されていた。
子供らしい丸い顔立ちに行儀よく並んだ二つのつぶらな瞳が私に助けを求めていた。彼女が泣き声を上げる度に周囲の外灯は明滅し、物寂しさが際立つ。
いつからあの子はひとりぼっちで泣いているのだろうか。
後ろ髪を引かれる思いに捉われたけれど、私には関係のないことだと思い直し、顔を前に戻した。
白のセダンは駅裏の送迎者用スペースに停車した。三田村さんが桜並木駅前で待っていると考えた真が、駅裏で降ろしてくれるように頼んだからだ。藤木さんは不思議がる様子もなく、ひとつ返事で車を回してくれた。
「崎山君」
車を降りようとした真が左足を地面に乗せたとき、藤木さんが追いすがるように呼び止めた。助手席側に体を傾け、首を伸ばすようにしている。
「三田村に気をつけた方がいい」
「どういう意味ですか?」
眉根を寄せた真の問いで、藤木さんは目が覚めたかのようにハッとしてから、頭を左右に振って自分の発言を打ち消した。
「何でもないんだ。今のは忘れてくれ」
「あの――」
「それじゃあ、もうひとり会わなきゃいけない子がいるから。またね」
真は釈然としない様子で小さくなってゆくテールランプを見送った。
藤木さんの引き締まった声は冗談と呼ぶには簡単に片付けられないほど、得体の知れない奇妙な響きを持っていた。
「藤木さんまで三田村さんがBLだって言うんじゃないだろうな」
今朝の一件を思い出した真が要りもしない心配を口にしたとき、後方から近づいてくる複数の笑い声が私の焦燥感を呼び覚ました。
桜並木高校の制服を着崩した集団、上野君のグループだ。
上野君たちは歩道いっぱいに広がりながら、ずるずると靴を引きずるようにして歩いている。その中に見慣れぬ私服姿の青年がひとり混じっていた。
針のように細い眉と蛇のように小さな目。彫りの深い上野君とは対照的なさっぱりとした面立ちだ。
新しくグループに入った仲間だろうかとも思ったけれど、上野君が敬語で応じていることから、どうやらそうではないらしい。
年は十代後半から二十代前半くらいといったところか。金髪と黒髪が入り混じった短髪はヒョウの毛並みのようだった。青年は上野君の肩にぐるりと腕を回している。
「後ろに上野君がいる」
「な、何だって」
「落ち着いて。振り返らずに逃げるよ」
「わかった」
しかし、そうは問屋が卸さなかった。真が地面を蹴るよりも早く、上野君の声が真の襟首を強引に捕まえたのだ。
「崎山、今日という今日は逃がさねえぞ!」
上野君への恐怖心から真の緊張の糸がピンっと張りつめたのが伝わってきた。
前回、絡まれたときは友人A君の手助けで危機を免れたが、ここは駅裏ということもあり、人通りは限りなく少なく、頼れる人物は見当たらない。
それに上野君の隣にいる青年が手強いであろうことは彼が発する独特の空気から察することができた。
上野君たちと比べ、圧倒的に体格がよく、格闘技経験者と言ってもいいほど、筋肉が引き締まっている。そればかりか、私たちにとって不運なことに青年は元凶の憑依を受けていた。
私が霊力を使って上野君たちに直接手を下せれば、簡単に真を守ることができるだろう。
しかし、他人のお付き人に向かって霊力を使うことは危害を加えることであり、原則として禁止されている。
背に腹は代えられないとは言え、すでに私は真を守るために平沢君を巻き込んで霊力を使ってしまっているから、何度も掟を破れば、寿々子さんと同じ顛末を辿ってしまうだろう。それだけは避けなければならなかった。
ここは真が自力で切り抜けるしかないのだ。
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私は叱咤激励のつもりで今にも消えてしまいそうな小さな背中を叩いた。
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