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24.ガトリングガン

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初めて見る大型の銃。
男が手元のクランクを握り、回し出す。
その動きにあわせて、先端に据えられた3つの銃口が回転を始めだす。

ドガガガガガガガガガガガ

「ぎゃー」
「しんだー」
「むりやー」
「たすけてー」

3つの銃口から連続して撃ちだされる無数の銃弾。
場内の人々が次々に吹き飛び、破裂していく。

ガトリングガンと言ったか?

これは、もはや試合ではない。
その様は、まるで芝刈りの類。

いくら新武器お披露目の場とはいえ……

「ぎゃはー。よえー。こんなん予選らくしょうやーん」

野郎の態度は、試合に臨むべき姿勢にない。

「ひー」
「こ、こうさんやー」
「にげろー」

周囲の者はみな、一目散に降参。
武器を放り出して、出口へ走り出す

「ああん? 逃がすかよおおおお。しねやあああああ」

ドガガガガガガガガガガガ

銃口が唸りを上げ、逃げる者まとめてなぎ倒す。

「ぎゃー」
「あかーん」
「おかーちゃーん」

今は戦争ではない。試合なのだ。
その試合において、降参した者。
逃げる者をも、背後から撃ち殺すなど。

「おおーっと。これは。ガトー選手。すさまじい攻撃だあー。あ、私は大会の実況です」

「まあ当然ですけど一方的な試合になりましたね。ちなみに私は、英下衆チーム監督で解説を務めるクロマックです」

……畜生の行い。

試合は。立ち合いは、お互いの人生をかけた決闘の場。
その人生を。雑草か何かのごとく無造作に刈り取るなど。

「ガトー選手の持つ武器。とんでもなくすごいですねえ」

「ええ。あれは英下衆国が開発した新武器。ガトリングガンですよ」

地に伏せたまま。
俺は付近の肉片へと紛れ込む。

「ガトリングガン。いったいどんな武器なんでしょうか?」

「3つの銃身から間断なく銃弾を発砲する。英下衆技術を結晶した新型銃です。その連射速度は、なんと驚きの毎分120発ですからね」

野郎は逃げる者たちを追いかけるのに夢中。
地面に。死体に紛れ隠れる俺の存在に、全く気付いていない。

「へー。そもそも、その銃というのは何なんでしょうか?」

「ああ。失礼。そこから説明が必要でしたね。はっはっはっ」

闘技場内には、俺と同じように地に伏せる者も大勢いた。
だが、連中が地に伏せるのは、被害を免れるため。命からがら逃げるだけの行為。

「銃というのはですね。火薬の力を用いて銃弾を撃ちだす、遠距離武器ですよ」

「へー。それは、弓矢とは何が違うのでしょうか?」

俺が地に伏せるのは、野郎を倒すため。
ジリジリと。気取られぬよう、野郎との距離を詰めるため。

「ははっ。あんな原始的な武器とは、威力も精度も射程も。もう全く異なりますよ」

「おー。確かに、破壊力がすさまじいですよねえ」

野郎がガトリングガンを撃ち終える。
すでに場内に動く者は、誰もいなくなっていた。

「おっと。ここで闘技場内。ガトー選手のほかに立っている選手はおりません」

「ああ。もう終わってしまいましたか。はっはっ。これでは試射にもなりませんねえ」

辺りを見回すガトー。
自身の勝利を確信したか、両手を高々と天に掲げていた。

「ええ。来週からの本選。ガトリングガンの威力をもっと見れると思うと楽しみですね」

「いやー。本当。圧倒的ですわ。他国からの招待選手が可愛そうになります。勝ち目ないですよ」

ダン

場内に響く発砲音。
両手を掲げたまま。
ガトーの眉間に赤い斑点が刻まれる。

「おや? 今何か……ああ! ガトー選手が。ガトー選手が地面に倒れていきます」

「おいいい! なんや? どうなっとんや! なんでガトーが撃たれるんや!」

発砲。硝煙を発する拳銃をホルスターに収め、俺は立ち上がる。

野郎も近づく者を警戒していたろうが……銃があればこれ以上に近寄る必要はない。
野郎までの距離30メートル。
射程の短い拳銃であっても、俺の腕を合わせればすでに必中。必殺の距離である。

「えーと。あの選手は……あ、資料がありました。超・天才剣士・改選手。日本からの参加です」

「おいおいおいおい! なんで日本人が銃もっとんねん! 詐欺やないか! 返せ。ドロボー!」

泥棒など人聞きの悪い。
落とし主不在で俺のものとなっただけだ。

倒れ伏す野郎の元まで歩み寄る。
ガトリングガン。
すさまじい武器。
その殺傷能力は殺人的ですらある。

そして。今。

地面に落ちるガトリングガン。
その銃把を握り持ち上げる。

「おいおいおいおい! アイツ! ワイのガトリングガンを! やっぱドロボーやんけ!」

「えーと。なんでもあり。相手の武器を奪って利用しても良いと。そういうルールになりますので……」

その圧倒的破壊力は、俺の物となった。

超・天才剣士・改。
もはやこれ以上の進化は望むべくもないと思っていたが……なかなかどうして。
超・天才に休むことは許されない。常に進化を続けろと。そういうことのようだ。
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