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23.予選大会、ファスト・アタック
しおりを挟む予選参加者の全員が、円形の闘技場に集められる。
その広さは、おおよそ100メートル四方。
そこに予選参加者。1000名全員が勢ぞろいする。
「ケンシーン! ガンバレー!」
闘技場を取り巻く客席には、すでに大勢の観客が詰め寄せていた。
予選といえども、なかなかの賑わい。
これが最強武闘大会。
闘技場と客席の間は、透明なガラスで仕切られている。
おそらくは防弾ガラス。
今大会は銃のお披露目の場なのだ。
闘技場での発砲が客席に及ばないよう、その配慮というわけだ。
「それでは、予選のルールを説明します」
参加者全員が、静かに司会の言葉を待つ。
「予選は、ここに集まる全員でのバトルロイヤル」
「マジで?」
「嘘やん?」
「禁止事項はなし。勝ち残るためには、何をしても構いません。ここでは何を行おうとも、罪には問われません。もちろん殺人も」
「1000人はおるんやで?」
「無茶すぎるやろ」
「命が惜しいかた。降参するかたは、速やかに闘技場の出口から退場してください。最後に残った1名のみが、本選出場となります」
なんとまあ……
あくまで本番は本選。
予選など、適当に片付けようということか。
まあ、俺にとっても手間がはぶけて良い。
「それでは……予選。スタート! 始めてください!」
いきなりの開始。
とまどい騒めく他の参加者に構わず、俺は太刀を抜き放ち。
「超・天才流剣術。ファスト・アタック」
ズバーン
「ぎゃー」
すぐ背後に位置する男を叩き斬る。
背後から。死角から斬られたのでは、いかに超・天才剣士・改といえども、危機となる。
まずは、周辺の安全を確保。
しかる後に、闘技場の外周へと移動。死角をなくすのが上策。
俺の斬撃に触発されたか。
「しねやー」
「ぶっころすー」
「ひぎーおたすけ」
「まいったー」
闘技場全体で剣と剣。武器と武器が打ち鳴らされる、戦いが始まっていた。
ズバーン
「どや。俺っちの斬鉄刀。おまんらじゃ防御も無理やがな」
ほう?
防御しようと構える剣を叩き斬り、まとめて身体を両断する。
斬鉄刀。凄まじいまでの切れ味。振るう本人もなかなかの腕前。
だが──
ドスッ
「うぐほおー。は、背後からとか、卑怯やん……」
哀れ。
背後から近づいた男にナイフで刺され、野田は死んだ。
あのような大立ち回り。目立つこと請け合い。
勝ち残るのが1人となれば、囲んで潰されるのが落ちである。
もちろん。初太刀で戦いの口火を切った俺も目立っていた。
それでも。多少、目立ったところでまずは何より──
ズバーン
進路に立ちふさがる男を斬り倒し、俺は闘技場。
その外壁まで到達することに成功した。
クルリ。外壁を背に太刀を構える。
この位置。俺に死角はなくなった。
「やろう。まとめてやっちまえー」
「おーさ」
「しねー」
俺を危険人物と見た周辺の野郎ども。
5人が、かさになって襲い掛かるも──その動きは丸見えである。
「超・天才流剣術。スラッシュ・セイバー」
ドカーン
ぶつかる一瞬。
両手の刀で100回。斬りつける。
「ぎゃー」
5人ともが、端から細切れと化していた。
許せ。
大人数での乱戦。
いかに超・天才剣士・改であろうとも、油断しては、まぎれが起こりえる。
本来であれば手加減したいところを、俺は泣く泣く全力で切り殺していた。
「はひい……」
「あわわ……」
細切れとなる様を見て、取り囲む連中が腰を抜かす。
目立つ者は狙われる。
が、どうあがいても勝ち目のない相手であることを見せつければ──
一歩。また一歩。
俺を取り囲む輪が遠ざかる。
最強武闘大会。形はどうあれ、あくまで試合である。
優勝賞金は魅力的なれど、自身の命と引き換えるほどではない。
降参すれば。逃げれば良いだけだと、気づいたのならば──
「お助けやー」
「逃げろー」
背を向け、逃げ出す人波。
俺の周辺は空白地と化していた。
懐の布で刀を拭い、カチリ、鞘にしまう。
さて……これでしばらくは、体力を温存できるか。
ドガガガガガガガガ
突如。闘技場内に轟音が鳴り響く。
ドガガガガガガガガ
何ごとか?
どうやら俺の反対側。
闘技場の端で大きな音がしているようだ。
この音……銃か?
にしては、音が大きすぎる。
にしては、音が連続すぎる。
基本。銃は単発でしか発射できない。
弾を1発しか込められないのだから、当然だ。
だが……俺は自身の腰に差す拳銃に目を見やる。
武器は進化。改良されるもの。
複数発を装弾できるよう改良されたならば。
連続発砲することは可能である。
だとしても……
ドガガガガガガガガ
発する轟音は、連続発砲というレベルにない。
100発。200発。そのレベルでの連射である。
ドガガガガガガガガ
見つめる先。
人体が破裂し、肉が飛び散り、人波が地面に倒れ伏す。
?!
咄嗟に地に伏せる。
ドガガガガガガガガ
俺の頭上を、銃弾が無数になぎはらっていた。
やはり銃か!
しかし……この威力。この連射性。
とんでもない武器だ。
銃弾が飛来する先。
闘技場の反対側を見やると。
「うほー。こいつあスゲーぜ。このガトリングガンはよおおおおお」
初めて見る大型の銃を手に、男が吠えていた。
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