SSSランク剣士の海外留学

くろげブタ

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19.退学

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憲伸を捕まえようと、警備隊の面々が迫る中。
憲伸は、貴族クラブの1人に銃を突きつける。

「うぬぬ。おのれ卑怯なり」
「なーにが事を構えるつもりはない。じゃい」
「人質を取るなんぞ、情状酌量の余地はねーぞ」

いったい何を怒るのか?

貴族の1人を人質にとったのは話し合いのため。

敵対するつもりであるならば、警備隊の5名程度。
ものの1分もあれば、全員を撃ち倒せる。

せっかく人が配慮してやっているというのに……
逆恨みもいいかげんにしてもらいたいものだ。

「えっと……ケンシン。それ駄目な気がするの……」

いったい何が駄目なのか?
俺の天才的作戦が功を奏して、現在、俺たちは距離を置いての睨み合い。
無事に武力衝突を避けたのだ。

超・天才剣士・改はトラブルをスマートに解決する。
何でもかんでも武力で解決するなど野人のやること。
後はじっくり。お互いが話し合うだけである。

「き、貴様あ。貴族の僕を人質に取るなんて。パ、僕のパパが許さないぞお」

お前。うるさい。
話し合いの邪魔だ。

ポカリ

「ぬあああ。人質に手をだすとは」
「もう我慢ならん。突撃の許可を」
「ばか。人質に。貴族様に万が一があってはならん」

警備隊の責任者はいったい誰だ?
少し貴族を小突いた程度で大騒ぎされては、話し合いもままならないではないか。

「これは、いったいどういう状況なのですか?」

一方的に俺をにらみつける警備隊。
その後方から、新たな人物が姿を現した。

「こ、これは。警備隊長」
「薄汚い留学生が2名。銃を発砲」
「その後、貴族を人質に立てこもっております」

警備隊長。
名前からして警備隊のお偉いさんのようである。

「貴方は…… 一昨日。グラウンドで貴族クラブと大暴れ。いえ。立ち合いをした人ですね」

救急車が来る大立ち回り。
警備隊が知っているのも当然だろう。

「あっ! あの男か」
「いわれてみれば、そうや」
「ココロさんにギャフンといわされて、国へ逃げ帰ったかと思ったが」
「まだ居たのか」

なにがギャフンか?
達人同士の立ち合い。勝敗は時の運もある。
たかが1回の敗北で逃げたのでは、勝負も何もない。

そもそもが、あの立ち合い。
ココロちゃんには銃があり、俺には銃がなかった。
それだけのことで、今、戦うなら別の結果となる。

「それで、また貴族クラブと揉めているのですか?」

そもそもが、突っかかってきたのは貴族クラブの方。
俺は被害者である。

「だからといって、構内での発砲。暴行。あげくの果てに、人質を取っての立てこもりですか……」

経緯を省略するんじゃない。
事象を並べるだけでは、まるで俺が犯罪者みたいではないか。

「犯罪者です。どのような理由があろうとも。貴方の行為は犯罪。貴方は退学です」

超・天才の俺が退学だと?
超・天才を失って損をするのは大学の方に思えるが……
警備隊長が言うのなら仕方がない。

「仮に犯罪だというのなら俺は退学で構わない。刑務所に行くのも良いだろう」

「ケ、ケンシン?」

「だが、俺の退学後。ゴミィはどうなる? ゴミィは普通の学生生活を送ることができるのか?」

そもそもが、俺が留学した最大の理由。
奈美のリンチ犯を退治する目的は達成したのだ。

ゴミィさえ無事に学生生活を送ることができるのなら、退学しようが何も問題はない。

「もちろんです」

嘘である。

「送れているのなら、俺がこうしてここにいない。実際、昨日のゴミィはどうだったのだ?」

辺りを見回す教室内。
再び講師も学生も。誰も俺の目を見る者はいない。

「貴族クラブは強大。その報復を恐れて、生徒どころか、講師ですら何も言えないのは見てのとおり。これで、どうして無事に学生生活を送れると言えるのか?」

俺の言葉に教室内を見回す警備隊長。
もちろん、目を合わせる者は皆無。
みな一様にうつむき、目をそらせる。

「……講師の方。この学部では、そのようなイジメ行為が行われているのですか?」

突然。話を振られた講師。

「う、嘘や。そんなわけあらへん。ワイには自宅のローンがあるんや。そないな事実がバレたら……せやから、その男の口から出まかせや!」

汗をふきふき焦ったように答える。

「そもそもが留学生なんぞに、ワイの講義の内容が分かるわけあらへんのや。お前は講義に来なくてよろしい。はい。これで解決や」

ただの厄介払い。
だが、確かに大学生としてまだ幼いゴミィ。

「ふむ。なるほど。講義に着いて来れないのなら──」

講師の言葉にあっさり納得しようとする隊長に、隣の警備隊員が口を挟む。

「待ってください。総統。あの娘……飛び級での留学。覚えがあります。ゴミィ・ジニアス。学年1位の成績保持者です」

ゴミィ……頭が良かったのか。
よくよく考えれば、バターナム国の補助を受けての留学。
バターナム国内トップクラスの頭脳を持って当然。
だからこそ、貴族クラブに目を付けられたのだろう。

「ふむ……ちょっと待て! そうなると講師の言うことは、おかしいのではないか?」

今さら何を言う。
そもそもが最初から理解不能な宇宙言語を話す講師。
頭がおかしいに決まっている。

「それは、ゴミィがいじめられている事実を隠そうとしている。厄介ばらいしたいということではないでしょうか? そもそも自宅のローンがどうとか言っていましたし」

警備隊長の頭はユルそうだが、側近のキレは良さそうである。

「つまり、講師の言うことは真っ赤な嘘で、俺も無実である。そういうことだ」

「そうなのか?!」

俺の核心を突く発言に。

「いえ。彼が犯罪者で退学なのは、隊長のおっしゃるとおり。間違いありません」

すかさず側近が声をかける。
全く頭がキレないではないか。
誰だ? 頭がキレルなどデマを振りまいたのは。

「あの……ケンシン。退学なの?」

「もちろんだ。構内での発砲。暴行。人質監禁。どれ1つとっても退学だ」

そうなのか。

「それなら……わたしも退学するの」

「ふむ……何故なのか? 君は被害者であって加害者ではない。退学の必要はないのだが?」

「ケンシンはわたしを守ろうとしただけ。わたしに責任があるの。それに──」

必死に弁解を続ける講師を、ゴミィは冷ややかに見やる。

「だいたい大学生にもなって、いじめとかさあ。そんなん自己責任やん? 講師のワイは講義だけやってりゃえーんよ。生徒のことなんざ知らんがな」

「もうこの大学で学ぶ必要はなくなったの」
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