最強勇者無双 ~異世界召喚された俺が勇者だ~

くろげブタ

文字の大きさ
上 下
77 / 96

77.合流

しおりを挟む

 100/11/1(火)14:00 王都郊外


 ヒカリちゃんに別れを告げた俺は、一路ファーの街を目指す。
 親衛隊長。俺のスマホを奪った相手。
 奴がファーの街にいるというなら好都合。

 他人の物を盗むのは犯罪だということを、俺が教えてやる。

 とは言ったものの、王都からファーの街まで馬車で1週間。
 レベル35である俺の走る速度は速い。
 オリンピックなら金メダル間違いなしのペースであるが、この速度で走り続けられるはずもない。

 辿り着いたとしても、フラフラのヘトヘトでは何の役にも立たない訳で。
 何か乗り物が欲しい。

 カタカタ

 並走して走るサマヨちゃんが俺の腕をつかむ。

「お?」

 と思う間もなく、俺の身体はサマヨちゃんの背中に引っ張り上げられていた。

 俺を背負って走るサマヨちゃん。
 その速度は、俺が走るより早い。
 しかも、アンデッドのサマヨちゃんは疲れを知らない。
 ゴツゴツした骨の背中は乗り心地が良いとは言えないが、楽なのに違いはない。

 が、問題がないでもない。
 全身が暗黒の塊であるサマヨちゃん。
 背中に触れる俺は、服越しとはいえ暗黒オーラの影響を受け続けるため、俺の戦闘能力は0に近くなる。

 騎乗戦闘はできなくなるが、まあ、移動するだけなら問題ないか。

 まず優先すべきは、カモナーとの合流。
 クランハウスは街から離れた郊外にある。
 親衛隊長が居座るのは街だろうから、しばらくは大丈夫のはず。

 牢を脱してここまで気を抜く暇もなかった。
 俺は揺られる振動にも構わず瞼を閉じた。





 バサバサッ

 大きな羽音に目を覚ます。
 ここは……瞼を閉じる前と変わらず、俺はサマヨちゃんの背中の上。
 だが、周囲の風景は大きく様変わりしており、朝の陽光が満ち溢れていた。

 一晩中寝ていたのか……
 かなり疲れていたようだが、眠りを妨げるこの羽音は?

 見上げる頭上から、羽ばたきを上げて1羽のグリフォンが降下する。

「グリさん!」

 もうファーの街に着いたのか?
 いや。違うな……ということは?

「ユウシャ様。無事?」

 グリさんの背中に座るのは、俺の秘書を務めるチェーンさん。

「どうしてここに?」

「カモナー様からの依頼。ユウシャ様を助けに行ってほしい。だって」

 やはりカモナーは今の状況に気づいていた。
 戦闘力のないカモナーが来ても、足を引っ張るだけ。
 そこでグリさんとチェーンさんを俺の助けに向かわせたのだろう。

「グルッ! グルッ!」

 地上に降り立つグリさん。
 早く乗れというのか、しきりに吠えるその背中へと騎乗する。

「ありがとう。クランの様子はどうなっている?」

 久しぶりのグリさんの背中。
 相変わらず柔らかい毛並みが心地よい。

「グルッ! グルッ!」
「アルッ! アルッ!」

 ふむ……さっぱりだ。
 というか、アルちゃんも一緒だったのか。
 騎乗する俺の膝へと潜り込むアルちゃん。

「きっと怪我してると思ったから。無傷なのには驚き。さすがユウシャ様」

 その点ばかりは、本当にヒカリちゃんに感謝だ。
 高圧的な女性ではあったが、聖女と呼ばれる重圧に耐えるなら、あの程度の根性がないと務まらないのだろう。

「クランに王国の親衛隊が来た。ユウシャ様は偽の御使いで死んだと。グリ様の威嚇もあって追い返したが、今は分からない」

 SSRモンスターのグリフォンがいたのでは、親衛隊といえどうかつには近づけない。
 だが、そのグリさんがいない今、どうなる?
 一番の戦力であるグリさんとチェーンさん。
 その二人を俺の助けに寄こしたなら、クランの戦力はガタ落ちだ。

 馬鹿なことを……とは俺が言うべき台詞ではない。
 確かに馬鹿な判断だとは思うが、ありがとう。と伝えるために。
 その期待に応えるために。

「頼む。グリさん。俺をクランへ!」

「グルルー!」

 勢いよく宙に飛び立つグリさん。
 そのたてがみを握りしめ、見つめる先は遠くファーの街。
 グリさんの速度なら1日とかからず到着するだろう。

 アルちゃんの葉っぱを撫でながら、俺ははやる気持ちを静める。
 今は気力体力を充足させる時。次に目覚める時こそが、俺の戦う時だから。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処理中です...