精霊様と魔法使い~強奪チートで妖精キングダム~

くろげブタ

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20.知力100

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 アリサ将軍の活躍もあって、豚男。
 オークマンの退治に成功した。

「はわわ。マサキさん……血がたくさん! くすり! 薬を!」

 俺のお腹を見て悲鳴をあげるアリサ将軍。
 血まみれなのも当然。あれだけ豚男の槍で突かれたのだ。

「不要だ」

 俺の体力自動回復。スキル練度はC。
 欠損部位の修復は出来ないが、重症であっても時間と共に治療が可能。
 加えてスキル練度Fとはいえ、光合成もある。

 2つのスキルの効果が重複。
 いつしか腹部から流れる血は治まっていた。

「ほへ? お腹の血……止まりました?」

 とはいえ、完治にはまだ時間が必要。

 折よくオークマンの足元に生える草。これは薬草だ。
 フガフガ鼻を鳴らしていたのは、この薬草を探していたのか?

 ちょうど良い。
 パクリ薬草を食べる。

────────────────────────────────────
体力:171(271)+11
魔力:51 (51)
────────────────────────────────────

 お? 俺の体力が11回復。
 最大値が11上昇したぞ?

 今朝までは薬草1束で体力の最大値は、10上昇していた。
 それが今は11の上昇。

 これは……あれか。スキル草食。
 草を食べた際の消化速度・栄養摂取量が上昇する。という効果だ。

 熟練度Fの段階で1の上昇。
 おそらく熟練度が上がる毎に上昇量も増えるのだろう。

 たかが雑草。されど雑草。
 これは草の食べ甲斐があるというもの。
 これからの俺はベジタリアン。それで行こう。

「あの……これもお肉。食べるのです?」

 薬草を探す俺に声を掛けるアリサ将軍。

 よほど豚男が苦手なのだろう。
 オークマンの死体を包丁でツンツンしていた。

 ベジタリアンに対してお肉食べる? など……
 魔石さえ回収すれば、汚らしい肉など捨て置けば良い。

 ……いや。よくはない。

 俺と相対した豚男の槍捌き。
 あれは、まごうことなき熟練者の槍捌き。
 槍を武器とする俺にとっては、見習うべき動き。

 草など食っている場合ではない。
 豚男。オークマンの肉は、何としても完食する。

 そのための暴飲暴食。
 奴の肉を食らい、奴の槍捌きを俺のものとしてくれる!

 と思いはしたが、さすがにウサギマン。イノシシマンと2匹連続で食べた後。
 しかも、怪我が治りきっていない今。
 食べるのは薬草と雑草が優先されるとあっては、お腹に入らない。

「さすがに今は無理だ。持ち帰って夕ご飯に食べるとしよう」

「ええ? これ持ち帰るのです? お、美味しくないですよ? 止めましょうよ」

 豚に似てはいても、美味しくないのか。
 それは残念。

「開け。異次元の箱。エレメンタル・ボックス!」

 特に詠唱する必要はないが、俺は肩にかけるズタ袋の口を開き、魔法を詠唱する。
 そのままズタ袋の中へ。
 精霊ボックスの中へオークマンの死体を収納した。

「ええ? その袋。どうなってるのかな……不思議です」

「やれやれ。何も不思議な事などないというのに……」

 あまり追及されても面倒。
 俺は無難にアリサ将軍の追求を煙に巻いた。

 その後、俺たちは付近の薬草を集める事に専念する。
 アリサ将軍の奮闘もあり、合計10束の薬草を手に入れた。

「そろそろ夕刻だ。戻ろう」

 2人連れ添ってミーシャと別れた位置。
 イノシシマンの肉を食べた場所まで戻る。

 しかし……そこにミーシャの姿は見当たらなかった。

「もう。ミーシャ。まだモンスター追い回してるのかな?」

 ミーシャならありえる話。

 だが、奴は野生の獣。本能のままに駆けまわる野獣。
 お腹が空けば戻って来るのもまた、本能というもの。

 すでに日が暮れようという時刻になっても戻らないというのは、考えづらい。

「ミーシャを探そう。嫌な予感がする」

「ええ? そ、そんな……!」

 慌てて駆けだそうとするアリサ将軍を捕まえ押しとどめる。

「落ち着け。当てなく動いても時間を無駄にするだけだ」

 ミーシャの安否が気遣われる中。
 一刻も早く探しに動きたいのは俺も同じ。

 だからこそ捜索するにも、その指針が必要。
 東西南北。どの方角を捜索するべきなのか?

「そんなこと言っても、もう夜だよ! 急がないと」

 時刻は夕暮れ。
 近辺のモンスターが弱いとはいえ、夜ともなれば話は別。
 危険なモンスターで溢れかえるのだ。

「だからこその俺だ」

 俺は天才軍師。

 敵の行動を読み軍を展開。軍の指針を決めるのが軍師。
 痕跡から、思考から、地形から、様々な要因を分析。
 100万の兵を指揮し、100万の敵を打ち破る。

 そのための知力100。

 もちろん精霊アイで見ようが、異世界にそのような能力はない。
 あくまで俺の自称ではあるが、そんな事は関係ない。

 今。ミーシャの痕跡を辿り、捜索の指針を決めるのは俺なのだ。
 誤った結論を導こうものなら、哀れミーシャは星になるだろう。

 そうはさせない。
 生意気な小娘ではあるが、奴の戦闘力はシルフィア様の軍に必要な駒。
 俺の知力が100だろうが0だろうが。
 俺の頭をフル回転させるのが今なのだ。

 現在、俺たちがいるのは開けた平地。

 東にトータス村。
 村から東は魔族の領域。危険なモンスターが徘徊する魔境。
 いかにミーシャとて、東には向かわないだろう。

 北に山。
 俺とアリサ将軍が薬草を求めて探索した場所。
 北にミーシャはいない。

 西に街道。
 森を抜けて、隣の町まで続くという街道。

 その街道の道中。北に分け入った先が森の迷宮。
 妖精の泉のあった森。

 俺とシルフィア様が森を脱して、トータス村まで通った道。
 その道中。モンスターに出会うことはなかった。
 街道付近にモンスターは生息していないと思われる。
 モンスターを求めるミーシャが向かうとは思えない。

 つまり……ミーシャが向かったのは南。
 平原を進んだその先。東西に大きな川が流れる場所。 

「アリサ将軍は村へ。ミーシャが向かったのは南。川だ。兵隊に援軍を要請して欲しい」

「い、行ってきます」
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